ふしぎロマンス2~夢と出会い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「井宿!井宿!!」
バタバタと家の中に入っていった。
井宿はお昼を準備しているのか吸い物を作っていた。
「どうしたのだ?そんなに慌てて……」
「来て!ちょっ……見て!」
「だっ?あっ、なんなのだー?」
猫のごとく首根っこを掴んで引っ張る。
あ、軽いと思ったら……三等身になっている……。
この姿にも最初は驚いた。
なんせ本当に……縮んでいるのだから。
かわいいからすぐに受け入れてしまった。
見てもらいたいところまで来たはいいものの、今もなお三等身の井宿を抱きしめる。
ほんとうにマスコットのよう……。
すり……と頭に頬を寄せる。
堪らない、この抱き心地。
「だっ!?また君は……!何するのだ!」
「縮むのが悪いのよ。あー、かわいい~」
「やめるのだー!」
ボワン……!と一瞬、風が起こると目の前にははるかに私より背の高い井宿。
しかも今は眉がかなり寄っている。不機嫌極まりない顔だ。
「ちぇ……ちっちゃい方が可愛いのに」
「……ハァ……オイラを何だと……」
「マスコット」
「だから何なのだ!それは!!」
「教えなーい」
言ったらまた絶対怒る。
「それはそうと、これ見て!」
「だ?」
「これこれ!木が治ったの!」
「は……?」
唖然としている井宿を木の前まで連れていく。
「私、ここで弓の練習してたの」
「知ってるのだ」
「ずっとこの木に目掛けて矢を放ってたのよ!」
「……確かに。だがその割には何も痕がないのだ」
「そうでしょう!?さっきまであったのよ!昨日のも、その前のもたくさん!」
「…………」
井宿は考え込んで、チラ、と私を見た。
「何をしたのだ?」
「わ、私はただ木にごめんねって言っただけよ?」
「木に?」
こうやって……と、先ほどしたように手を添え額をつける。
ただ、今度は何も変わらない。
「念を送ったのだ?送れるのだ?」
「え?送れるわけないよ」
「でも念じたのだろう?」
「どうなのかな……治してあげられないかな、とは思ったけれど」
「それなのだ」
「え?」
井宿はおもむろに折れた矢を持ってきた。
「これにも同じことを思ってみるのだ」
「えっ……まさか」
「やってみるのだ」
こういう時の井宿は有無を言わせてくれない。
井宿から矢を受け取ると、手のひらに置いて額をつける。
たくさん私の練習に付き合ってくれた矢。
新品だった頃の矢を思い浮かべると感謝の気持ちが強くなった。
閉じていた目を開ける。
「うそ……」
「矢が戻ったのだ」
「戻った?」
「これは治癒?いや……どちらかと言えば元に戻っている……“再生”か?」
再生……?
「奏多、太一君の所に行きたいのだが……」
「あ、うん。いいよ?」
「明日には戻るのだ。戸締り、ちゃんとするのだ」
「わかってるわよ!」
言うなり、井宿が呪文を唱えると視界から消えた。
ほんと、あの瞬間移動は便利だ。
再生の力。
なんだかやけに心臓がうるさい。
自分に芽生えた力に興奮しているのだろうか。
改めて手を見る。
何も変わったところはないけれど、その手をぎゅっと握りしめた。
何が治せるのだろう。
元に戻せないものもあるのだろうか。
一旦気になると、とことん調べたくなる。
手当り次第に壊れていたものを手に取ってみる。
割れた皿、傷んだ野菜、破けた衣服。
記憶にある限りの新しい姿を思い浮かべるとすべて元に戻った。
探しては治しを繰り返す。家中のものが綺麗になった。
だけど、その時には既に長い時間、“再生”していた。
ふら……と眩暈がした。