ふしぎロマンス20~小さな魂~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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目を開けると久しぶりに見る紅い色彩に、ほっと胸をなでおろした。ああ、帰ってこられた。
「ホンマ、すごいやっちゃな。……井宿?おい、井宿!?」
翼宿がぐったりとお尻をつけて座り込んで項垂れている井宿に駆け寄った。
「どないしたんや!?」
「井宿?大丈夫?」
「……平気なのだ。さすがに少し、疲れただけなのだ……」
「お前……」
その光景を、何故か落ち着いてみていた。
ああ、もう……しょうがない人。
「無理もないわ。これだけの人数を一度に連れて帰ったんだもの」
「……別に暫く休めばすぐによくなるのだ」
嫌よ。
「待てないわ。それで……手遅れになったらどうするの……」
「何を言ってるのだ。これくらい大丈……」
「言うことを聞いて!お願いだから」
「奏多……」
もう、あってはいけない。あなたたちを失えない。
「私を嫌いでもいい。でも……私の力は受け入れるべきだわ」
「…………」
「落ち着けや、大丈夫やって!」
「あなたもよ!翼宿!!」
「へっ?お、オレぇ?」
「あなたも……体中、切り傷だらけ……」
私の服に血がつくほど……あなたはさっき、彼から攻撃を受けた。
「みんな、傷つきすぎっ!」
ちょっと紙で手を切っただけでも痛いのに、どうしてあなた達は……!
「問答無用だから。拒否権なしよ」
素早く井宿に近づくと、その唇に口付けた。
本当に体力が残っていなかったのだろう。井宿は抵抗することなく、じっとしていた。
「……元気、出た?」
「………充分すぎるのだ………」
「そ?なら良かったわ」
くるっと体を振り返らせると、翼宿を見た。
「オ、オレはええで!?ホンマに平気や!!」
「男なら……女に恥かかせるんじゃないわよ」
「っ………だからってなあ……!お前、ヤケになってんで!!」
逃げ腰になる翼宿を捕まえて、背伸びをして口づけた。
こんなことであなた達が回復するならいくらでもするわ。もう、なりふり構っていられない。
「はい、おしまい」
「お前は~っ!!」
「よくやった、と褒めて欲しいわ」
「そんなん言えるか!ホイホイしくさりおって!お前はホンマに女か!?恥じらいっちゅーもん、ないんか!」
「翼宿こそ、純情すぎ!山賊のくせに!」
「な、なんやてーーー!?」
翼宿がぎゃあぎゃあ言い始めた時だった。その向こうで、苦笑いを浮かべた星宿が立っている。
「………奏多。無事に帰ったようだな。いささか、いつ声をかけたものかと思ったぞ」
「ほーんと、見せつけてくれますわ」
「柳宿。そなた、髪を切ったのだな」
「そうなんですの!もう後宮には入れませんわね。残念ですわ」
「ははっ、まだ私の妃になりたいか?」
「可能でしたら!」
「………不可能だ。そもそももうそのつもりもないのではないか?」
「まあ、星宿様ったら」
この光景……ずっと夢見ていたかも……。
柳宿がここにいたら、と思っていた。もう一度、柳宿と星宿を会わせたかった。
よかった。柳宿は……生きててくれた。
「皆、よく戻ってきてくれた」
星宿の凛とした声が心地いい。
戻ってきた。紅南国に。
長かった神座宝探しが終わった。
でも結局、どちらも手に入れられなくて……。青龍は召喚されてしまうし、これからのことを相談したくてももう、出来ない。
あの人は……。
「奏多。まずはそなたも休むといい」
「え?」
「美朱も疲れていたのか、こちらに戻った時には眠りについていた。今は鬼宿がついているよ」
そう言えば、もう2人の姿がない。
「そなたも休むといい。話は明日にでも聞くとしよう」
「あ、す……?」
明日でいいの?
………いいえ。それじゃ、また遅いわ。
「星宿!話しなら今から……」
「話はオイラがするのだ」
「……井宿」
振り返れば、井宿が姿勢よく立っている。
「井宿。体調はよいのか?」
「はい、陛下。今しがた……完全に治してもらいましたのだ」
「ん?……あ、ああ。そうだったな」
井宿は私に見向きもしなかった。代わりに星宿と目が合う。
……別にやりたくてやったわけじゃないもの。もう、あなた達を失いたくないだけだもの。
それには疲労や怪我なんてあってはいけないこと。だから……しただけだもの。
……我ながら、何だか情けないわ。