ふしぎロマンス20~小さな魂~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「奏多!何か自分の体に異変はないか?」
張宿の亡骸を抱えた軫宿が聞いてくる。
私も自分の体を動かしたり、服の下を覗き込んだりしたものの、特に伝えるものはなかった。
「大丈夫よ」
「字……字はまだあるのだ!?」
井宿が足元にしゃがみ込む。その少しばかり冷たい手先が、私の裾を僅かにめくった。
「……消えているのだ」
「なあ!字ィ出せるか!?」
翼宿が自分の腕を見せ、念じるように目を瞑るとスゥ、と“翼”の文字が浮かび上がった。
「……どうやったらいいのか、わからないわ」
「せやから、こうしてやなあ!」
何度見せられても、仕組みがわからない。何をしても足の甲に再び文字が浮かび上がることはなかった。
でも……。
「張宿は、ここにいるよ」
自分の胸に手を持っていく。確かに感じる。これだけはわかる。
「そうか。奏多がそう言うのなら、張宿はいるのだろう」
軫宿が優しく微笑む。
「うん……」
その体が動いてくれないことは寂しい。
それは誰しも思うわけで、翼宿と井宿も、張宿の体を愛しそうに撫でた。
「お前は……むっちゃ強い男やな。……こんなええ男……見たことないで……」
翼宿の声が、響いた時だった。外からの青い光に、目がくらむ。
「なんや、この光は!?」
「青龍……」
「……召喚されたのか!」
止められなかった。わかっていたことなのに、防げなかった!!
「こうなったら一刻も早く紅南国に戻るのだ!美朱たちと合流するのだ!」
「美朱達はあそこから屋上へと向かったぞ」
「そんならオレらも行くで!軫宿、張宿を頼めるか?」
「ああ。任せておけ」
「ほんならオレはお前や!」
「えっ……?」
すぐ様、翼宿に担がれる。そのまま一気に階段を登り始めた。
「た、翼宿っ。いくらなんでも無茶よ!」
「アホ言うなや!お前が自力で走るより早いで!」
……本当に一言多い。実際、本当に早いから言い返せなかった。
担がれ走っているその時だった。
外からの光が消えたかと思うと、いきなり地面が揺れだした。
「こんな時に地震かいな!?」
「違うわ、翼宿!青龍が唯と交わったの!その衝撃の余波よ!」
これもわかっていたことなのに、また後手に回ってしまった。もうこの状態では先回りして動くことすら難しい。
「あ!いたぞ!翼宿たちだ!!」
前方から階段を下りてくる鬼宿と美朱、柳宿が目に入る。その後ろには奎宿(トカキ)達もいるようだ。
「張宿……!?」
「美朱ちゃん、悲しむのはあとなのだ!」
「ああ、それに……悲しいこと全てではないぞ」
「軫宿……あんた、何言って……」
柳宿が軫宿の目線を追って、私と目が合う。
「奏多!あんたは無事だったのね!?」
「柳宿……」
彼は助けられた。それなのに、張宿は……。
ごめんね、張宿。
そっと胸に手を当てそう念じた。
「早くこの中に入るのだ!紅南国に通じているのだ!」
井宿が自分の袈裟に錫杖を突き立てる。
美朱たちが昴宿に挨拶をする中、私は翼宿とその中に入った。