ふしぎロマンス20~小さな魂~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「もう……ええ!!やめえや!!」
翼宿がハリセンで作り上げた石を叩き壊す。
すぐに私の肩を掴むと、翼宿に振り向かされた。
「誰だって、怖うなって出来んことだってある!!オレかて……怖うなったことある!!張宿は死んだんや!もう、眠らせてやろうや!」
翼宿が肩を震わせ、泣いている。
井宿だって、涙が頬を伝った跡が見える。
私はこんな顔にさせたかったの?
彼らの悲しむ姿を、見たかったの?
違うわ。
……そんなわけない!!
「わ、私が来た意味は何なの……」
「奏多……」
「何のために、みんなの元へきたの?」
ザワザワと体の中で何かが騒ぐ。どこからともなく呼びかける声が聞こえてきた。
「誰……?」
「奏多?おい!どないしたんや!」
「今……確かに……」
ーー我を求めよ……
ーー我の力を受けたかわいい我が分身よ……
ーー我はいつもそなたの傍に……
ーーいつでも、唱えるといい
ーー“開破(カイハ)”と。
「聞こえた……これがあなたの声?唱えたら何をしてくれるの?」
「お、おい!……井宿!こいつ、なんか変やで!」
「奏多!しっかりするのだ!張宿はもう……」
いいえ。
大丈夫よ。
不思議と、自信が生まれた。
張宿の傍に膝をつくと、そっとその頬に手を添えた。
「張宿……ずっと一緒にいよう」
ツ……と流れた涙が、張宿の頬にポタッと落ちた。
「……開破」
覚えたての言葉を小さくつぶやくと、その小さな唇に口づけた。
今……ふわっと“彼”が私の中に入る感覚がした。
「…………張宿」
唇を離すと同時に、それは私の足元で光った。
「赤い、光やて……?」
「まさか……そんなこと、有り得ないのだ……」
「だが……見ろ!確かに字が……!」
軫宿の声を受け、左の足の甲に目を落とす。
「あ……張宿っ……!」
そこには確かに赤く“張”と輝いて浮き出ていた。
私はその小さな体を抱きしめた。もう、動かない体を。
「張宿……あなたは、私の中にいるのね……?そうなのよね?」
返事はない。
それでも確かに先ほど、感じた。優しい、張宿の気配を。
黄龍の力を解放して張宿を受け入れたというかとか。少なくとも張宿の存在は消えていない。
でも、やっぱり涙が止まらないわ。
願えるのなら……あなたに生きていて欲しかった……。