ふしぎロマンス20~小さな魂~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「おい!追ってけえへんぞ!?どないなっとんのや!」
「わからないのだ。だが……」
井宿の言葉が途切れる。
翼宿に担がれながら私はその肩を濡らしていた。
「……急いだ方が良さそうなのだ」
「そうやな」
2人とも聞いてこない。不安はあるというだろうに。そして、信じられない思いもあるだろうに。
お願い。お願いよ。
間に合って!!
でも……その願いは、届かなかった。
「「!!!」」
走っていた2人が、ふいに何かに反応して足を止め、顔を見合わせた。
「なに……?どう、したの……?」
なんだか、聞くのが怖い。
「………翼宿……奏多とここにいるのだ……オイラが、見てくる」
「…………せやな」
2人だけが、何かを悟った物言い。
少しだけ声が緊張していて沈んでいる。
ああ、そうか。
あなたたちにはわかるのね……?同じ朱雀の七星士のことが。
そうなんでしょう……?
「……私も連れて行って………」
「ダメなのだ」
「ああ。今のお前は……行かせられへん」
2人の表情が……痛々しい。
嫌よ。それならなおさら……行かなきゃいけない!
「っ……いいから!連れていきなさい!!」
いいえ。
自分で行く!
力任せにもがくと、翼宿の腕から飛び降りた。
「おい!」
「……何を見ても、落ち着くと約束できるのだ!?」
「………そんなことにはさせないわ」
「奏多!今、確かに嫌な気がしたのだ……!」
「っ……!」
だ、から……行かなきゃいけない。
嫌な気がしたというのなら……。
「お願いよ……いかなきゃ……」
井宿と翼宿が顔を見合わせた。そして、翼宿がまた、私を抱えあげた。
「……行くで」
その声が、とても重々しくて。
ああ……本当にもう、この先に行くことがどんなことが待っているのか。心まで、重くなった。
どうか、夢でありますように。
でも………夢は夢の通りにしかならない。
「………ち、りこ……」
壊れすぎてがれきと化した部屋の中に、ポツンと横たわる小さな体があった。
その横に膝をつき、静かに涙を流す人。普段はとても大きな人なのに、今はとても小さく見えた。
「……たった今、だ……。よく、がんばったぞ」
軫宿の涙に震える声が、胸をぐっとさせる。
「張宿……お前……」
「………張宿……」
翼宿と井宿がそばに駆け寄る。その後ろから、そろり……と近寄った。
横たわる小さな体。その腕からは血が流れ、そして心臓には……箕宿の武器とも思える先の尖ったものを自らの手で刺している姿。
本の通りになってしまった……。
私が……いるというのに。私が……!今までそばにいたのに!!
「張宿!!」
逝かせはしない!!あなたの魂がまだここにあるのなら、必ず呼び戻す!!
「奏多……?」
「な、にを……何をするつもりなのだ!?」
バッと床に手をつく。スーッと上に持ち上げると、そこから鋭く尖った石が生まれた。
「一度は上手くいった!張宿だって、救ってみせるわ!」
「や……やめるのだ!!」
井宿が血相を変えて腕に掴みかかる。その手を勢いよく跳ね除けた。
「邪魔しないで!!」
これを、心臓に刺せば……血を吐けばきっと……!!黄龍の力によって……!!
……でも、二度目ということが手を振りあげることが出来ない。
この尖ったものが胸に刺さったあの感触。今でも……覚えている。あの時は……玉蘭を助けた時は必死で、痛みなんてあとからついてきた。
でも今は……あの痛みが、どうして今、思い出されるのっ……!
「は、やくするのよ……怖くなんて、ない……」
怖くない。怖いことなんてあるもんか。
張宿がいなくなる方が怖いことじゃないのか!!
「ど、して……手が動かないのよっ!!」
胸の前にもう、あてがっているのに胸に刺すことが出来ない。
こんな、はずじゃ……どうして……っ!