ふしぎロマンス20~小さな魂~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「奏多を返してもらうのだ」
凛とした声が真上から聞こえる。
「井宿……翼宿っ……無事だったのね!」
「すまなかったのだ。透にかけられた術、解けたと思っていたのだ」
「待っとれ!今、透も連れ出すさかい」
まだ彼らは術にかかってると思ってるんだ!
翼宿が駆け出す。
「ダメ!翼宿!」
「奏多、大丈夫なのだ」
「違うのよ!透くんは術にかかってない!」
「だっ!?」
井宿が驚いた時には、翼宿が透の前に走り込んでいた。心宿はその様子を笑ってみている。
「透、お前しっかり……」
「バカだな、翼宿は」
「なん……」
「戻ってくるなんて、バカだよ」
翼宿が何かに気づいた瞬間、翼宿のまわりにものすごい風が巻きついた。
「なんや!?」
「翼宿!!!」
みるみる翼宿の体が切り刻まれる。
赤い線が幾重にも浮き出て、それが風によって血しぶきとなる。
「く……っそたれがあ!!ナメんなや!!」
「致し方ないのだ!」
翼宿が鉄扇を振り上げると同時に、私を一度下ろした井宿が念を込め、衝撃波として透に放った。
それにちょうど翼宿の炎も加わり、透へとぶつかる。
……はずだった。
「透様、お怪我はありませんか」
「心宿……」
透の前に心宿が立ちはだかる。一瞬にして、井宿と翼宿の攻撃を散りばめた。
「チッ……」
「……力の差がありすぎるのだ……」
本当に一瞬だった。
2人の力が、たった手をかざしただけでいとも簡単に打ち払われた。
見れば井宿に焦りからか、汗が首筋を伝っている。
「奏多……わかっただろう」
静かな声なのに、その声に大きく肩が跳ねた。
「と、おる……くん」
「君たちが相手にしようとしている男は尋常ではない強さを持っているんだ」
「お前……何言うとんのや」
「言ったよね。奏多を護りに来たって」
「……本当に、術にはかかっていない……のだ」
透を見据えた井宿が呟く。その言葉に翼宿がド肝を抜かれた。
「なんやて!?」
「正確に言えば、この寺院についてからは演技だった。……正直、君たちがいると邪魔だ」
「透くん!」
「奏多がここにいて、君たちのそばにいて傷つくのは目に見えている。もうそばには置いておけないよ。……いや、元の世界に帰るべきだ」
そう言った瞬間、2人の顔色も変わった。
翼宿は透から放れ、私の元に。井宿も私の前に立つ。
「……だから君たちじゃ、俺と心宿の相手にはならない」
「そんなん、やってみんとわからんで!!」
「そう?今ここで、また“力”を使ってやろうか……」
それが何を意味するのか。
2人はビクッと体を震わせた。
痛かったんだ。彼らが動揺するほど、つらかったんだ。
「透くん……!」
「奏多。考えてみて。君は今どこにいる?ここは寺院だ。そして、君はここにいる。誰とだ?」
誰とって……。
「じゃあ、質問を変えるよ。今、“美朱は誰といる”?」
「それは……鬼宿と柳宿、軫宿に……ち、りこ……」
……ま、待って……。
「そう。わかった?」
透はまるで謎解きのように一つ一つわからせるように言った。
「本来なら、美朱は誰と会うだろう。ここに心宿はいるけれど、心宿だけだった?心宿がここにいるからって安心しきってない?」
「そ、れは……」
「違うよね」
「み、箕宿(ミボシ)と会っていると言う……の?」
誰か、嘘だと言って。
「さあ、どうかな。未来は変わってしまった。でも……それは俺達がそばにいるから変わる。今、美朱には俺も奏多もそばにいない。防ぎようがない」
防ぎようがない?
何から……何を?そんなの……一つしかない!
「気づいたようだね。でももう遅いよ。ここには結界を張って身を守れる井宿がいる。箕宿に体を乗っ取られてその身に封じ込めようとしても、炎で燃やしてくれる人もここにいる」
「っ………!」
あ……ああ……本当にもう、やめて……。
「それなら……あとはもう、どうするかな」
透くんが、こんなことを言うなんて………。
「ホンマこいつ……なに言うて……」
「ま、まさか……誰かが……」
あまりの衝撃に口元を手で隠した。その手がカタカタと震える。止まらない。
「もう、絶対に間に合わない。奏多……君が壊れてしまう」
そんなこと……ないっ!
「井宿!翼宿!!」
「「!!!」」
「私を……連れて行って!!張宿を護りたい!!」
渾身の叫びだった。彼らも素早く動いて、翼宿が私を担ぐ。井宿が先導して、私たちは……急いで美朱の元へと向かった。