ふしぎロマンス19~見えない未来~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「……………あーもう!そんな顔してる奏多なんて、見たくなかったわ!」
「ぬ、柳宿……?」
「透!あんたもねえ、あたしが大事な話をしてるって時になんで来るのよ!それに……あんな口づけ見せられて……っ、なんだって言うのよ!」
確かに……いたたまれない。小っ恥ずかしくなってきた。
「……そう。とんでもない時に逃げ込んできたみたいだね」
「わかってくれたようね」
「奏多の顔を見たらね。……柳宿も奏多が好きになったんだね」
「そうよ!」
柳宿がハッキリと言う。そんな恥ずかしげもなく言ってしまえるのは、どうしてなの。
もう、私の方がドキドキしっぱなしなのに。
「……でも悪いね。譲れないよ。俺は10年ずっと想い続けてるんだ。まだ10代の君たちに負けるわけにはいかないな」
………耳が、おかしくなったかと思った。いま、私……自分のいいように解釈してる?
「10……年、ですって……?」
「そう。俺たちが柳宿の年の時から、俺は奏多が好きだった。君はその頃、いくつかな?」
「っ………」
柳宿が、歯を食いしばった。誰も身動きを取らない。私ですら、声を出せない。
だって……そんなことが……。
「……こんな形で言うつもりじゃなかったんだけどな。いや、そもそも伝えられないと思ってた」
透が私の前に来る。
「この世界に来た時はもう、君に会えないかと思って絶望した。でも……こうしてまた会えて、君から黄龍の力とはいえキスしてもらえるのなら、この世界も悪くない」
「と、透くん……」
「幻滅した?俺だって下心くらいあるよ」
今日は……なんの日?エイプリルフール?誕生日?クリスマス?
どうして、柳宿といい彼といい、私の心臓をおかしくする事ばかり言うの。
「オイ、こら柳宿ォ!お前、言われっぱなしでええんか!!」
「…………そんなこと……言ったって……」
柳宿が苦虫を噛み潰したかのように、眉を寄せている。
どうしたらいいのかしら。
ちょっとあまりにもこんな夢みたいな状況、今までに経験がなくて困る。
「でも、まだ柳宿はいい方かな。俺が奏多に迫って焦るのは、柳宿だけじゃないんじゃない?」
「透くん、何言って……」
「1人は自覚なし、1人は押し殺してるし、1人は……どうかな、身を引いてるかな。彼だけだ。張宿、君だけだ。奏多を純粋に慕っているのは……」
「……透くん、何のことを……」
何を言ってるの?
私の知らないことを、彼は知ってるの?
透はその場にいる七星を一瞥(イチベツ)すると、私にすっと近づいた。僅かに詰め寄られた間合いが、今は少し緊張する。
「君はわかってると思ったのに、どうしてこの世界の人間に心を許したりしたんだ……美朱ちゃんと鬼宿のようにはならないんだよ」
「……心配されるようなことにはなってないわ」
「本当に?」
「ええ」
彼の言いたいことがわかる。
そして……思い当たることも……ある。
でも、違う。……違うわ。
「それなら良かった。君はこの世界に馴染みすぎていて、正直、怖い」
「…………」
「だから……一緒に元の世界に帰ろう」
「え………?」
いま、なんていったの…………?
「元の世界やて!?」
「帰る方法あるの!?」
「ないとは思わない。美朱ちゃんは帰れているんだ。それにこれからだって……」
そうだ。この先、みんなは美朱の世界でも戦う。
「俺たちだけが帰れないとは思わない。だから奏多、俺と帰ろう」
透が私の手を握ろうと手を差し出す。咄嗟に、その手からさっと逃げてしまった。
「奏多……」
「ま、待って……。帰れない。みんな、これから戦うのよ……。私だけ帰るなんて出来るわけが……!」
透の表情がみるみる曇っていく。とても、辛そうだ。
「俺も……。……でも、俺が話してしまった。全部……話したと言ったよね?」
「……それ…は……」
「心宿は知ってしまった。これからの青龍のこと、朱雀のこと、自分の行く末もだ!俺が……!話したから!!それがどういうことか、わかるかい!?」
私の両腕をガシッと掴んできた。もう、逃げることは出来なくて……そのまま、透は膝から崩れ落ちた。
全部、心宿が知ってしまった。
それならこれから……どうなるのだろう。
「……もう、わからない。もう、君たちのことも助けてあげられない……青龍の巫女が……青龍を召喚してしまう……」
こんな憔悴しきった透は見たことがなかった。その場にいる皆も声を挟むことが出来ず、その場に立ち尽くしていた。