ふしぎロマンス19~見えない未来~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「透くんっ……」
「奏多、あんたはこっちに来てなさい」
柳宿が透から引き離す。
でも、待って。すごく辛そうなのよ……っ。
「いいから。ちょっと離れてなさい」
「柳宿……」
「おい。術て……何がかかっとんのや?」
翼宿の問い掛けに、視線は井宿に集まった。
その視線を受けた井宿は透を見据えて探り始める。
「何があったのだ?」
「……この先のことを……心宿に……話した」
「君は奏多と違って話せるのだ?」
「……話せ、ない……でも、」
「無理やり……言わされたのだ?」
やっぱり……。私たちは話そうとしただけで頭が痛くなる。それはもう我慢できる痛みを遥かに超える痛み。
それじゃあ、透くんは……。
あの激痛の中で、喋り続けさせられたということ!?
「……っ!」
「あっ!奏多!」
止める柳宿を振り切って、私は透に抱きついた。
「……奏多………」
「透くんっ……」
どれだけ痛かっただろう。どれだけ、辛かっただろうっ。
彼のされたことを思えば、その時の痛みを思えば、止めどもなく涙が落ちる。
「っ……ふ……ぅっ」
「……奏多……ごめん……」
彼は力なく、天を仰いで抱きしめられていた。
許せなかった。彼を傷つけるなんて。
心宿はそうまでして、己の欲のままに生きようというの?そんな人、だったの?
「奏多……だめだ。離れるんだ」
「どうして……っ?」
「さっきから……心宿の声が聞こえる。ずっと……頭に響いてくるんだ……」
「なんて言ってるの……?」
「…………」
「透くん!!」
彼は言葉を渋った。
でも、大きな声で名前を呼ぶと、彼は重々しく口を開いた。
「……奏多を手に入れろ、連れてこい……」
「なんやて!?」
「ほら、言わんこっちゃない!奏多、こっちに来なさい!」
「柳宿……っ」
また柳宿に抱き込められて、引き離される。
「……ふむ……」
「井宿、何の術かわかるか?」
「これはきっと、“洗脳”されたのだ」
「洗脳ですって?」
「何度も同じことを言われ続け、精神を攻撃してくるのだ。でも、まだ軽度……君がしっかり意識すれば破れるのだ」
「俺の、意識……?」
「そうなのだ。オイラの知る限り、君はそんなに弱くない」
井宿が透の前に膝をついて、印を結ぶ時の指の形を作る。ちょうど、人差し指と中指だけを立てた状態だ。
その2本の指を透の眉間にトン、と触れた。
「君は、奏多を連れていくためにここに来たのだ?」
「……そ、れは……」
「聞こえてくる心宿の声に耳を貸さずに答えるのだ!」
「ッ……」
透の顔が苦痛に歪められる。ブルブルと体も震えているようだ。
「透、どうなのだ?君は奏多を連れ去りに来たのだ?心宿に引き渡すために来たのだ?」
「……ち、がう」
「もっと大きな声で言うのだ!」
「……違う!」
「もっと!」
「違う!!」
「もっとなのだ!!」
「違う、違う!!違う!!!俺は奏多を護りに来たっ!!」
彼の叫びが、悲痛な声が私の息を止めた。
こんな彼らを見たことがない。胸が苦しかった。
「……よく、言えたのだ」
「っ……はあっ、はあっ、はあ………」
息を上げていた透が、次第に落ち着いてきた。
頬を伝う汗が、彼の体力を少なからず消耗させていたのがわかる。
「もう大丈夫なのだ。声ももう聞こえないはずなのだ」
「井宿、お前……こんなんまで出来るんかいな」
「オイラは何も……彼の意思が心宿の力を押さえ込んだのだ」
「……井宿っ、ありがとう!透くんを助けてくれて、ありがとう!」
「いや……」
私が声をかけると、井宿はふいっと顔を逸らした。
「ちょっと!これでもう奏多に強引に迫らないでしょうねェ」
透に牽制するかのように柳宿が詰め寄って行く。
「……そう、だね。俺はさっき……」
透が、じ……と私を見てきた。
その瞬間、先程されたキスを思い出す。
「奏多……驚かせたね」
「……う、ううん」
ドキドキした。
まさか彼とここに来てこんなことをする関係になるなんて思ってもなかったから。
顔、熱い。
心臓、うるさい。