ふしぎロマンス18~定まらない感情~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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どこかで薄々、気づいていた。
でもそんなのは有り得ないと、違うと、その気持ちに蓋をした。
私が誰で、どこから来て、そして何をすべきかをわかってるから。
それ以外のことは、あるわけない。あるべきじゃない。
だからきっと……この不可思議な想いも、ただの気のせい。きっと、そう。
「へえ、美朱が料理ねェ」
「そのようだ。薬を煎じた時に手伝うと言っていたぞ」
「ちゃんと食べれるもの、作れるのかしら」
「どうだろうな。匂いはよさそうだったが」
刻々と過ぎていく。このまま、ここで何もせずただ過ごしてもいいのだろうか。
窓に近寄って外を見る。ここから、塔が見える。
「…………」
部屋を出たくても、井宿が目ざとく見ている。
これでは抜け出すことすらできない。
私はあなた達を守りたいだけなのに、井宿がそれを許してくれない。
「あんたたち、食事の用意が出来たよ」
部屋に、とても綺麗なウェーブのかかった髪の熟年女性が入ってくる。その後ろには鬼宿の師匠でもある男の人。
この人たちは“白虎七星士”。
案の定、自分たちが“白虎七星士”と名乗ると、翼宿が大きく驚いた。
「おっさんとおばはん、“白虎七星士”なんか!?」
「なんだ、悪ィかよ。現役だったのはもう90年も昔だがな」
90年って、本当に七星士は長命。
そうよ。普通にしていたらその命長いんだから。
20そこらで失っていいものではない。
「俺は奎宿(トカキ)、こいつは昴宿(スバル)だ」
食事の間に入ると、美朱がちょうど料理を運んできた。昴宿が美朱に向かって言う。
「あんた達の求めている神座宝は婁宿(タタラ)が持ってるよ」
「ホ、ホントですか!?」
そうか。婁宿だ。
そこで……青龍七星士の箕宿(ミボシ)が現れて……。
ガタッ
「どうしたの?奏多」
「……あ、ううん……なんでも、ない……」
なんでもないわけがない。
このままでは……このまま何もしなければ……。
「奏多さん?」
「張宿……」
立ち上がった私を見上げる張宿。まだまだこれからが楽しみな少年。
……死なせられない。死なせるわけにはいかない。
「ほらほら、あんたも座って食べな」
「昴宿さん……」
「おっ?なんや珍しー料理あるやん」
「あ、それ、あたしが作ったんだ」
「へー、これが異世界の食べ物なのね」
「初めて見るのだ」
う…うわあ……。唐突に目の前に試練がきた。
わかってたはずだ。彼女の料理の腕前を。
みんながそれぞれ一口ずつ箸をつける。
そして、一斉に固まった。箸を落とした人もいる。
申し訳ないけど……ゆ、勇気が湧いてこない。
この状況を見たあとで、料理に手をつける勇気は生まれてこない。
でも!食べて、フォローを入れなくては!
「あむっ」
……ああ~……本当になんでこんな味に……。
「……みんな、すっごくまずいってカオしてる……」
誰もが本音を言えずに口ごもる。でも、彼だけは違った。
「ちょっと美朱~!!あたしになんてもの食べさせるわけェ!?」
「柳宿!お前っちゅーやつは!いくらまずいからってなあ!」
「はあ!?あたしは別にまずいなんて言ってないわよ!」
柳宿がものすごくしかめっ面で話す。
ハラハラした。それでも、柳宿がただの悪意だけでそう言ってるとは思えなかった。
美朱もおっかしいなぁ、とさして気にも止めない。そんな中、空気を変えた一言が発せられようとした。
「ほんと、何だこれ。食いもんかよ。これならブタのエサの方……」
「ぁあ?鬼宿、何言ってンのよ」
それは柳宿の声とは思えない低い声だった。
「誰も言えないみたいだから言ったけれど、あんたが言ったらダメでしょ。どの口が言った?あ?これか?この口か?」
「いっ……いでえ!!!」
「ぬ、柳宿……っ」
柳宿は鬼宿の口……いや、顎を掴む。
その力があまりにもすごかったんだろう。鬼宿が悶絶している。
柳宿、もしかして憎まれ役になろうとしてる?私がなろうと思っていたのに。
美朱を傷つけないようにしている。そんな柳宿の優しさが今はものすごく嬉しかった。