ふしぎロマンス18~定まらない感情~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「さあ、出来たぞ」
「わー………ありがとー………」
やっばい、これ。
思わず棒読みで返してしまうくらいやばいわ、この目の前に出てきた薬。
「うげぇ……お前、こんなん飲むんか?」
「奏多、悪いことは言わないわ!治癒力受けなさいよ!」
起きてきた翼宿や柳宿、張宿も顔を歪ませる代物だ。
そうは言われても軫宿の力をホイホイ自分が使えるわけがない。
恐る恐るお碗を手に取る。液体が揺れると、どぎついニオイが鼻をかすめた。
「くぅ……」
躊躇ってしまう。
こんなおどろおどろしい色の薬は漫画の世界、テレビの世界だけだと思っていた。
それが今、目の前に……。しかもそれを今から……飲まなくてはいけないなんて。
「やめといた方がええて。飲まれへんって」
「そーよ。これ、ホントに効くの?お腹壊したりしないでしょーねェ」
「……俺の調合した薬を信じない、か。先に飲んでみるか?」
「え!?いえいえいえ、いいわよ!あたし、元気だもの!オホホホホ!」
「せ、せやで!ええかぁ?軫宿、怒らすんやないで……!!こっちにとばっちり来るやないか!」
「そーね!大人しく見守ってましょ!」
……このぉ、他人事だと思って……。
「治癒力を使うなと言うなら、これを飲むしかないぞ」
「わ、わかってるんだけど……ちょ、ちょっと思い切りがつかなくって」
「そうか。それも飲めないなら、あとは井宿に頼むしかないな」
「!」
な、なんと……。軫宿がそんなことを言うなんて……。
「翼宿。井宿を呼んできてくれ。“気”をもらいたいようだ」
「の、飲みます飲みます飲みます!!」
ぐいーっと飲んだ。
「おわっ!飲んだで!!」
「あんた、それで飲んだら井宿の立場ないわね」
「……うう。井宿に嫌われたくないもの」
「え……?」
「よく飲んだな。これは褒美だ」
「んっ!?」
軫宿が素早く口の中に何か押し込む。口の中にじわ~っと、伝わってくる甘い味覚。
「甘い……これ……飴っ!?」
「ああ。薬を煎じると美朱に言ったら、これをくれた。甘いか?」
「うんっ……もう、ほんと感動する美味しさだわ」
「異世界の食べ物、そんな美味しいの?いいわねぇ~」
「せやな。軫宿、もうないんか?」
「奏多の分だけだな」
あぁ、さすが美朱ちゃん。
リュックにパンパンになるほど詰め込んであるのを見て、呆れてごめんなさい。
大事ね。現代の食べ物って。
「やっと飲んだのだ?」
「!!!」
心臓が、ドッキーン!ってなった!え、なに?なんでここにいるの……井宿!
「お前、いつから戻っとったんや?」
「飲む飲まないで悪あがきをしている時からなのだ」
……もう、ほとんどじゃん。しかもまた、刺のある言い方。ほんと嫌われてるわね、私って。
井宿はもっとこう……可愛いと思ってたのに。
いや、最初は可愛かった。ちっちゃくなったときとか、それはもう……。
あぁ、最近それを見てないんだ。だから可愛げがないんだ!
「あら、あたしは気づいてたわよー?」
「嘘言うなや」
「ホントよ!軫宿だって気づいてたから、あそこで井宿の名前、言ったんでしょ?」
「そうだな。あと少し渋っていたら、本当に変わってもらおうかと思っていた」
「そうなってたら、薬くらいあたしが口移しで飲ませてたわよー」
「柳宿……お前、よう言うようになったな」
「だって目の前で他の男に持っていかれるよりはねぇ」
「柳宿は直球派だな」
「せやけど、当の本人はぜーんぜん、聞いてないみたいやで?」
「えっ!?ちょっと奏多!聞いてなさいよ!」
本当に、上の空だった。
そうか。こうもタイミング悪く、井宿は見ていたのか。私が井宿の名を出されて、すぐに飲み干したことを。
「井宿、あの……今のはね……」
「安心していいのだ。本気でやろうとは思ってなかったのだ」
………ね。そうだよね……。
「うん。井宿なら、そうだと思ってた……」
嫌ね。どうして今、少し残念に思ったのかしら。
本当に、なんで……。