ふしぎロマンス18~定まらない感情~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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結局、軫宿たちがいる部屋に押し込まれた。
「……まだ寝てるわよ」
「もう起きてると思ったのだが……」
「じゃあ、やっぱり星宿に会いに……」
「今のうちにしっかり治しておくのだ」
「だって、軫宿の力は大事にしないと……!」
「君の体調を戻すくらい、軫宿の力なら平気なのだ」
「ダメ!!」
「…………」
ここは奎宿(トカキ)と昴宿(スバル)の家。
これから、きっと何か起きる。……何が起きる?
いけない。
ここでのんびりしてちゃダメだ。
「待つのだ。今どこに行こうとしてるのだ……?」
「………え?えーと……」
そうだった。まだ、井宿がここにいた。
井宿は勘が……鋭いからなあ。
「えーと、だから……」
目が泳ぐ。
うん、トイレって言おう。それならついてこないはず。
「か……」
「厠とか言ったら余計に怪しいのだ」
「え?……まっさかぁ~……」
……うぅ。誰か助けて……。
井宿には勝てません。絶対、心読まれてる……。
「……井宿!見逃して!!」
「だっ!?」
強行突破することに決めた!井宿もまさか横をすり抜けていくとは思わなかったんだろう。
ふふふ。
私もやれば出来る……。
「むっ!」
「…………えッ!?」
急に足がツンッと固まった。足が固まったようにその場に立ち止まる。
そうなればどうなるのか。簡単である。そのまま、廊下に倒れ込んだ。
ビタンッ
「いったぁ~……」
ついた手が……ビリビリと痛い。
「な……にするのよ……井宿!!こんな……術、使う!?」
「オイラから逃げようとしたからなのだ」
「だ、だからって……これ、痛い……」
「だったら大人しく部屋に戻るのだ」
「ひ、ひどい……」
平行線だ。睨んだところで井宿は少しも動じない。
「何をしてるんだ?」
一際低く、渋い声が聞こえてきた。
「軫宿、起きたのだ?いいところに来たのだ」
「うん?」
「奏多の具合を見てやって欲しいのだ」
「ああ。俺もそうしようと思って出てきた所だ。なんだか治すところ増えてないか?」
「さすが軫宿なのだ」
ちょうどいいことに、井宿が軫宿に体を向けて話し始めた。
こちらには背が向けられている。
今のうちだ。後ろに目なんてあるわけない。
そろ……そろ……と、後ろに下がる。
「……!」
あ、やば。井宿が振り返った。
「君という人は……!」
パシッと手首を掴まれる。
は、はやっ……!
何故わかるのよーっ!!
「ちょっと散歩に行くだけだって!!」
「それなら治してもらってから行くのだ!」
「軫宿の力は大事にしたいの!!」
「……だったら……!!」
ぐいっと腕を引かれた。
一瞬で井宿の体が近づく。……いや、私が近づいた。
腰に井宿の腕が回り込む。更に力を込められた。
「オイラがまた、君に“気”を送って回復力を高めるしかないのだ」
「…………ッ」
「それでもいいなら、まだ暴れるといいのだ」
至近距離で呟かれた声。
それはいつもとは違う、低めな声で。
その言葉が意味することも分かって、かぁッと顔が熱くなる。
ダメよ、奏多……。
こんなの……違う。ただ井宿はこう言えば引き下がると思ってるだけ。
「……嫌なくせに……」
「だ?」
俯いてボソッと呟いた。
聞こえなかったのだろう。井宿は身を少し屈めてきた。
「珍しいな。井宿がそこまで感情を出すのも」
「……………」
あ、井宿が固まった。ひょこっと井宿の体から顔を出すと、ちょうど後ろにやんわりと笑ってこちらを見ている軫宿が見える。
「軫宿~……もう、井宿どうにかして」
「それだけ心配なんだろう」
「心配されるような年でもないんだけど……」
「今でこうなら、君の子供の頃は……それはもう、親御さんは大変だったと思うのだ」
「い、今、イヤミ言われた!?私、結構マジメな子だったんだけど!」
「それならどこでどう間違って、こうも手に負えない性格になったのだ?」
「もう!なによ、ほんとに!!」
軫宿に助けを求めれば、ははは、と笑うばかりで、助けにはならない。
「奏多、治癒力を使うなと言うなら使わない」
「軫宿まで何を言い出すのだ……」
「いや、井宿。そうじゃない。力を使わないとなると、俺の調合した薬を飲んでもらうことになるな、と思ってな」
「ああ、それがあったのだ。では軫宿。あとは頼んだのだ」
「わかった。必ず飲ませよう」
「……え?」
……これはもしかして相当な試練が待っていそうな気がする。