ふしぎロマンス18~定まらない感情~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「痛み分けで、ええんとちゃう?」
「翼宿……」
「こういうんは、“お互い様”言うんや。オレはダチにいつまでも謝れるんがいっちゃん嫌いや」
翼宿が柳宿の肩に手を置く。
翼宿……。
めちゃくちゃ良いこと言うじゃない。
じぃん、と胸を打たれた。
柳宿も笑ってるし、翼宿も八重歯を覗かせて笑っているからわからなかったけれど……彼らは何か話していた。
「……ちょ、ちょっと肩……痛いんだけどォ?」
「あ?気のせいやろ。……せやから、はよ離れんかい」
ぐぐぐ……とものすごい力で柳宿の肩に手を置いていることも私には知るよしもなかった。
「その亢宿だが……酷い怪我だ」
軫宿の声にハッとして彼らを見る。
角宿が亢宿の体を抱き起こしている。亢宿の手には小さな瓶……。それは確か、記憶を失うもの……!
「ダメ!!」
「あっ!奏多!」
ダメよ!
それは……それはっ……!
「亢宿ーーー!!」
今、出せるだけの大きな声を出した。口に含もうとする角宿が手を止めこちらを見る。
「お前……!」
「奏多さん……?」
亢宿が驚きの表情をこちらに向ける。
「亢宿、放れて!角宿はやめなさい!」
「……こいつ……」
「奏多さん!こうした方がいいんだ!角宿の七星士としての記憶さえなくなれば……」
「違う!角宿は……あなたに飲ませるつもりなのよっ……!」
その瞬間、邪魔されないように角宿が素早く口に含む。亢宿は抵抗する間もなく、角宿から口を塞がれた。
「亢宿!飲まないで!!」
でも、叫んだ言葉は虚しく消えていった。コクン、と亢宿の喉が動いてしまった。
「す、ぼし……どうして……」
「ごめん……兄キ……オレ、唯様が好きなんだ……!」
「角宿……」
そのまま、亢宿は眠りについた。
「あ……あなた……」
「亢宿!!奏多さん!!」
ガバッと起き上がった美朱を抱き込む。
「美朱ちゃん、大丈夫?」
「う、うん……でも亢宿が……」
「ええ……記憶をなくしてしまうわ」
角宿は抱きかかえていた亢宿を横に寝かせると立ち上がり、じりじりとこちらに近づいてくる。
「……亢宿の記憶をなくすなんて、あなた一人が辛いだけじゃない……!」
「うるさい!お前に何がわかる!こいつさえいなかったら……唯様が傷つかれることは無かったんだ」
「なに……?」
角宿が美朱を凝視してる。
この子……。
「角宿、あなた……なに考えて……」
「……唯様は朱雀の巫女のせいで男達にひどい目にあわされたらしいな」
「え……」
「だったら朱雀の巫女も同じ目に遭うべきだ……そうだろう?」
やっぱり……!
頭に血が上って、思考回路がおかしくなってる……!
「角宿……あんた、それ本気で言ってるの……?」
「当たり前だ!朱雀の巫女も、オレがメチャクチャにしてや……」
思わず……手が出ていた。
パァン!と乾いた音が響く。
「……な……なにすんだ!!」
「子供が滅多なこと口にするんじゃないわよ!」
「なっ……!」
「どういう事いってるかわかってる!?あんた、今の言葉、唯と亢宿の前で言える!?」
「……!」
「好きな女の子を護りたいなら、卑劣で卑怯なことしてないで真正面から挑んで護りなさいよ!それが男ってもんだわ!!」
どうだ!
少し大人気ないかもしれないけれど、角宿にはわかってほしかった。
美朱を傷つけても、唯は喜ばない。もちろん、亢宿もだ。
「よう言ったで!奏多」
「さすが、奏多だわ~。惚れ直しちゃったわよ」
颯爽と登場してくる翼宿と柳宿に乾いた笑いを浮かべた。
出てくるの遅くない?
「みんな!」
「おー、美朱!待たせたなあ!」
「あのね!鬼宿が……!」
「たまちゃんなら、ほら……そこに突っ立ってるわよ~?」
「え!?」
美朱に釣られて同じように見れば、確かに崖の所からこちらを見る鬼宿。
「鬼宿……!」
「……何やってるの?そこで……」
「あ、いやー……なんか声かけづらくってよ。お前……いい啖呵、切るなあ」
……ああ、そうだ。
ホントにどうして私はこうなんだろう。
美朱は私が出ていかなくても、こうして鬼宿が……そして翼宿だって助けに入るんじゃなかったか。
だったらもう、美朱たちは大丈夫。
今、助けが本当に必要なのは……彼だ。