ふしぎロマンス17~惑わされないで~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「とりあえず服、着替える?あんたのその格好……悲惨ね」
「え?でも私……何も……」
「あたしの替えならあるわよ」
「えっ!?あるの!?」
「柳宿様をナメんじゃないわよ。常に2、3枚あるわよ」
「柳宿~~!」
か、神様に見える……!
一体どうしたらいいのかと思っていたのよ!
「あのくっそ重い荷物はお前のやったんか、柳宿……」
「そーよ。ほら、これでいいんじゃない?翼宿のなんて着てたら匂いうつるわよ」
「なっ、なんやて!?」
「……え、これ……」
「洗っとる!オレかて洗っとるで……!…………たまにやけど」
………聞こえたから。そっと羽織を脱いだ。
うん、しょーがないわよね。汗くらい、ね……。
「はあ……しょーがないなあ」
返す時に、服に唇をつけた。クラっと一瞬視界がぐらついた。
「お、おい……!力つこうたらバテる言うたんはお前やぞ!」
「……いーの、いーの。これでまた暫くは着れるね」
「うっそ。下ろし立ての服みたいじゃない」
あはは。
すごいでしょ?これがあるから私だって旅ができるんだから。
……はあ。体がぽかぽかする……。
「……まずい。熱が上がっているぞ。早く移動した方がいい」
「奏多、早く着替えなさい!」
「うん……」
とは言え、体が思うように動かずふらふらする。
見かねた柳宿が服を着せてくれる。
「帯、締めなきゃね……ま、減るもんじゃないし、いいわよね」
なんのこと?と思っていると身をかがめて腰に腕を回し入れてきた。
柳宿の頭がぐっと近づく。
でもその時、ふと止まった。
「これ……てか、あんた頬も……」
その時だった。遠くで「ワオーン!」と遠吠えが聞こえた。
「なんや!?」
「この、声……狼!?」
え?狼?まさか……。
「あそこにいるのだ!」
「あいつ……尾宿!!また奏多を攫いに来たわけ!?」
「させへんで!」
ザッと私の周りをみんなが取り囲む。
悠長にもなんだか巫女になった気分だ、と思う自分がいた。
「ま、待って……」
「安心せい!今度こそ息の根止めたる!」
「や、やめて!!翼宿!尾宿がここまで連れてきてくれたのよ……!?」
「……それは本当なのだ?」
「本当よ。尾宿はすごくいい狼なの」
砂に膝をついて尾宿に手を差し伸べた。
そろり、そろりと歩いてくる。まだ、みんなの警戒は解かれていない。きっと尾宿だって同じ気持ちだ。
「尾宿、大丈夫だから、こっちにおいで」
指先に、鼻が触れた。そしてもう一歩近づいてくるのを待って、その首を抱きしめた。
「どうしたの?行ったんじゃなかったの?あなたはもう、自由なのよ」
尾宿の顔を見ると、今度は袖を噛んで引っ張ってくる。
「こいつ!やっぱり……!」
「柳宿!待って、これは……どこかに案内したいんじゃないかしら」
連れていきたいところがあるならすぐに攫ってでも行けるはず。
でもそうしないのは、ここにいる全員を連れていきたい……とか?
「尾宿、どこかに案内しようとしてる?」
「クゥン……」
「みんな……ついていこう?」
「ほ、ホンマかいな……信じられへん」
「そうよ……」
もう、なんでわかってくれないの。尾宿はもう、いい子なのよ。
「……尾宿がいなかったら……心宿に何されてたかわからない、と言っても?」
「なっ……!」
「尾宿が逃がしてくれたの。もちろん、心宿のところへ連れていったのは尾宿だけど、彼はただ、そうしたら主が喜ぶと思ったから」
「主ですって……?」
「酷い扱いを受けてた。仲間だとは思ってなくて、神座宝を手に入れたら切り捨てようとしてて……だから……」
「だから助けた、のだ?」
「そうよ」
「……危険なことなのだ」
そんなのわかってる。でも、やらずにはいられなかった。
「……納得したわ。だからそれ、ついてるってわけね。頬まで……殴られでもしたの?」
柳宿……気づいたのか。
周りを見れば井宿も顔を伏せている。聞きたいことあるって言ってたっけ。
「それやて?」
「胸糞悪いったらないわ……何これ、あんた……また付けられてる」
柳宿の指が私の襟の合わせ目をわずかに開く。
「おまっ……それ……!」
それ、とはやはりあの時心宿がつけた跡なんだろう。
「ちょっと逃げ出せなくて」
はは、とかわいた笑いを浮かべれば、ふわ……と両頬を手で挟まれた。
目の前に真剣な……柳宿の顔がある。
「笑うんじゃない」
「え……」
「これ、つけられたかったの?」
そんなことを言われれば、カッと顔が熱くなる。
「そんなわけないじゃない!」
「だったら笑うんじゃないの。怖い思い、したんだから。頬だってこんな……腫れてるじゃない」
はあ、ホントにもう……。柳宿には敵わない。
「ごめん、柳宿」
「護ってあげられなかったわね、奏多」
ううん。そんなことない。
今、こうして……あなたが心配してくれているのだから。
頬に触れる手に、そっと自分の手を重ねた。