ふしぎロマンス17~惑わされないで~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「どうして……みんな私が見えないの!?」
今、井宿の目の前に立っているのに、その目は私に焦点が合わない。腕を掴んで揺さぶる。
「井宿!しっかりして!!」
「…………」
……幻覚に惑わされているから……?触っても気づかないなんて。そんなに氏宿(トモ)の力は強いの!?
「もう我慢ならない!あたし、迎えに行くわ!」
「迎えに、て……どこにおるんもわからんのに、か?」
「あんたねぇ……!奏多を護るって決めたの!決めたそばから……!」
柳宿が歯を食い縛る。
……ああ、ごめんね。私、相当心配かけさせてしまったのね。
「柳宿、ここにいるよ。もう、ここにいるよ……!」
「オレかてなあ……!……あ、酒のおかわり?そんな悪いなあ。いただきますわ!」
翼宿には……酒に負けた気がする。
でも今、誰に話しかけたのか。誰もそこにはいないのに、それも幻術。
あたりを見回しても、もちろん皆と私以外誰もいない。ここまで乗ってきたのだろう、馬は……離れたところでこの暑さにバテ始めている。
翼宿だって自然となのか、すでに上半身は何も纏っていない。
水も食料も何もない。日もまた昇り始めた。
こんな所で……幻覚に囚われていたら……この人達は間違いなく衰弱死する。
「っ……!」
死んじゃう。こんなの続けていたら、死んでしまう!!
「翼宿!しっかりしてよ!お酒なんてないから!!」
「かーっ、うまいわー!」
「飲んでない!今、飲んでないのよ!?」
「柳宿、これうまいで。井宿にも食わせたった方がええんとちゃうか?」
「………そうね。井宿、奏多が連れ去られてからというもの、ずっとあの調子だもの……」
柳宿が何かを持つ仕草をする。その柳宿の額にも汗が浮かんでいる。
暑いんだ。暑いのに、その暑さも感じていないんだ。
「井宿、これ食べなさいな」
「……………」
「井宿!何も食べないつもり!?」
「………いらないのだ」
「あんたねェ……!」
柳宿はガッと井宿の肩に手を置く。
力の加減がされていなかったのだろう。その痛みに顔を歪めた。その時だった。
「……ッ……奏多!!」
「え……っ」
今、確かに目が、合った……。
井宿は躊躇いもなく立ち上がる。
見えてる?そう思った時にはすでにあたりをキョロキョロし始めた。
……まだ、今も目の前にいるというのに。
「ちょっと……あんた本当に大丈夫?頭おかしくなったんじゃないの……?」
「今……確かに奏多が……どこに行ったのだ?どこに……っ」
見えた。
今、絶対に見えてた。
「そうか!痛み!痛みなんだわ!!」
幻覚は痛みを与えて目が覚めるのかもしれない。
井宿は今、柳宿の怪力を受けて痛がった。一瞬だけど、目が覚めたんだ。
だとしたら、どうやって痛みを与えたらいいのだろう。
周りには何も無い。それに、何かあったとしても傷つけるなんて嫌だ。
怪我をしないけれど、痛いもの。何がある?
……って、砂しかない。
でも砂って……まとまったら重い、よね?
砂に手を置いてみる。
黄龍。こんな時はもちろん……力を貸してくれるわよね……?
キィィン……となった気がした。
そしてザァザァと砂が集まり出す。
手を高く掲げると共に、砂が一つの塊になった。
「やれば何でも出来るー!」
これならいいかも!
翼宿に近寄り、頭上で一塊になった砂を……落とした。
「ぶっ!!」
わお。
結構な衝撃。
「ぶはっ……げえっ……なんや!口ん中に……砂ぁ!?なんでや!ぶえっ……おえー……」
……うん。ごめん、翼宿。
そんな中、目が合うと翼宿は固まった。
「翼宿、目が覚めた?」
「…………」
「あれ?まだ覚めない?目が合ってるのに……」
おかしい。
視線は合ってるのに、翼宿が口を開かない。
「ちょっと、たす……」
その瞬間、砂の上に落ちていた自分の服を拾い上げると、私にバフッと被せた。
「えっ、なに……?」
「いきなり現れたと思うたら、なんちゅー格好してんねん……」
服をまさぐって顔を出せば、目の前で目をガッツリ逸らしている翼宿。
……これが幻であって欲しい………。
心宿によって、その後の尾宿との移動によって、みんなを起こすために奮闘した行動が服を乱れに乱していた。
「う、わっ……恥ずかしい!ちょ、ちょっとこれ、借りとくわよ!!寒かったし!でも今は暑いけど!」
「おーおー、そうしとれ」
言うなり、今の現状を見た翼宿は驚愕した。
まだ井宿は私を探して周り、それを柳宿が止めに入っている。
「なんや、これ……」
「幻覚、よ……」
「幻覚やて……?今までの、全部か?」
「うん……」
「アホな……」
足取りが……弱い。少なからず翼宿も衰弱していた。