ふしぎロマンス17~惑わされないで~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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美朱が出てくると、その胸元にはキラキラと輝き、美しく装飾された首飾りが光っていた。
でもこの玄武の神座宝だけでは朱雀を呼び出すことは出来ない。
そのことを聞いた鬼宿は魂が抜けてしまったように放心していた。
「神座宝をありがとう」
私は斗宿に近寄った。
「それでは……話を聞かせてくださいますか」
「斗宿……もちろんよ。でも話すより“見せる”方がきちんと伝わると思うの」
「………それは……」
「ええ。あなたのその視鏡監(シキョウカン)で私が見たものを見るといいわ。過去には違いないでしょ?」
斗宿の七星の能力。
目に宿った文字が浮かび上がれば、その目を見たものの記憶を見ることが出来る。
「自分から見られたいって志願するやつ……初めて見たな」
「……ですが、奏多。あなたの過去も見ることになります」
「え……そうなの?でもまあ……そんなに面白いものでもないからどうぞ」
「わかりました」
特別見られて困るような過去は持ち合わせていない。
だから見られても問題ないと、思った。
でも斗宿の視鏡監は、見られた者に少なからずショックを与えるものだと後で身にしみてわかる。
「お、おい……なんやようわからんけど、大丈夫なんやろな!?」
「そーよ!奏多に何かしたら許さないわよ!」
「心配ならそばについているとよろしいかと。触れることはしません。ただし、あなた方は俺の目を絶対に見ないでいただきたい」
そう言うと斗宿は自身の眼帯を外した。私はその瞳を見た。
その瞬間、脳内にものすごいスピードでこれまでに経験したことが映像として流れ始める。
「ぁ……っ」
こんな感覚だったのか。自分のしてきたことが、走馬灯のように流れる。
そうだ……私は……
ツゥーーと頬を涙が伝う。
私はある時期……酷い嫌がらせを受けていた。
その中での数少ない友人とのかけがえのない時間。その時に読んで感じた感情を、虚宿や斗宿は読み取る。
ふっと映像が止まった。
一気に襲う脱力感にその場で崩れようとすると、柳宿が体を支えてくれた。
前を見れば、虚宿と斗宿も涙を流していた。
「多喜子……女宿(ウルキ)……」
「……幸せそうだな」
「ああ。やっと、俺達もそっちに行ける」
2人の表情はとても穏やかだった。
よかった。これで彼らも安心だろう。
「奏多。見せてくれたこと、感謝します」
「斗宿……」
優しい目をして微笑まれた。
「お前さ……もう1人じゃねえな」
「虚宿……」
「お前の周りの女ども、怖すぎじゃねえ?」
「そうね……お互い若かったから」
へへ、と笑うと虚宿は「大丈夫そうだな」と笑った。
ええ。もう平気よ。私だって子供じゃないのだから。
「西廊国へはこの北甲国を南に抜けた先、砂漠を通れば近道です」
「あなた達は?」
「朱雀の巫女。俺達はもう役目を果たし終わりました」
「ここの扉を閉じて天へ帰ります」
天へ。
きっと彼らは先に待っている多喜子と女宿、そして他の七星士と会うのだろうか。
転生をしてなければきっと、会えるだろう。
「長かったな……この200年……」
「……ああ」
彼らが神座宝を守り続けた空間に入る。
これで、お別れ。
「ゆっくり、休んで。虚宿、斗宿」
バターン……と重そうな音を立てて扉がしまった。暗闇があたりを包み込む。
「……ううっ、一気に寒くなったわね」
「よっしゃ!すぐに火ィつけるさかい」
「あんたもわかってきたわねぇ」
「……誰のせいや、誰の」
ボッと火が灯せば、柳宿が私と美朱をズイッと翼宿に近づける。
「ほら、あんた達そばにいなさい」
「わあ!あったかい~。ねっ、奏多さん」
「ええ、ほんとに。北甲国ではありがたいわ」
「やっとオレのありがた味がわかったか」
「でも紅南国じゃ暑いから今限定だけどねー」
「なんやと!美朱ー!!」
とても心が浮かれていた。来た道を戻る足取りも軽い。扉が見えて来るのも早い。
私は柳宿が生きていること、神座宝を無事に手に入れたことで安心しきって、肝心なことを忘れていた。
鬼宿が扉を押し、開く。一気に外からの光が入り込んで、目がくらんだ。
ビュッ……
風を切る音が聞こえた。そしてすぐに体に降りかかる衝撃。それから……頬に感じる獣の毛。
「……え?」
目が外の明るさに追いついて体を起こせば、目の前に白……いや、銀にも見える毛並みがある。
「狼……!?」
「神座宝が……」
「おい!奏多が!どういうこっちゃ……!」
私は狼の背に乗せられていた。ハッとして降りようとすれば、狼がバッと動く。
「っ……!」
振り落とされる!そう思って背中にしがみついた。それはあまりにも一瞬の出来事。
大の大人が、まさか担がれるとは思ってもみなかった。