ふしぎロマンス17~惑わされないで~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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相変わらず中に入ると勝手に扉が閉まった。
「きゃあ!」
「どうした、美朱!」
「わかんない!何かにつまずいて」
「よっしゃ!今、火ィつけたるさかい!」
想像していた通りに起きているけれどそれはいけない!!
再び目にするなんて無理無理無理!!!
「翼宿!待っ……」
ボッ!
……遅かった………。
「きゃああっ!!骨骨骨っ!!」
「見たらわかるわい!」
美朱ちゃんの叫ぶ気持ちもよくわかる!
やっぱり見れません。こんな明るく照らされたところなんて、リアルな骸骨なんて見れません。
「………はあ………奏多、こちらに来るのだ」
「え……?」
「ここなら少ないのだ」
………少ない、か。ないわけじゃないのね。
「危ねぇっ!!」
「鬼宿!?」
声のした方を見ると、鬼宿が氷の矢を美朱から庇っていた。
………なんで仕掛けてきてんのよ。
「井宿、行こう。美朱を巫女だと教えないと」
「……もう怖くないのだ?」
「そんなこと言ってられないわ。それに……恐れる必要はないと教えてくれたのは井宿じゃない」
「………君は強いのだ…………」
……強いわけがない。ただの一般人に過ぎないのだから。でも、怖がってたら本当に怖いことが起こる。
私は……そちらの方が怖い。
美朱の元へ近づくと、奥からぬっと彼らが現れるのと同時だった。
「……なんだ、お前らか」
「連れてきたわ。朱雀の巫女、美朱よ」
そっと彼女の肩を抱いて、虚宿(トミテ)と斗宿(ヒキツ)の前に促した。
「こいつらが……玄武七星士、言うんか……?」
「そうなのだ。彼らが霊魂となり、ここで200年もの長い間、護り続けてきたのだ」
誰もが彼らの巫女に対する忠誠心に言葉を無くした。
確かにここを護り続けた彼らは、執念とも言える。
「ならば巫女。神座宝を渡せる価値があるかどうか……試させてもらおう」
斗宿が静かに言う。
………ごめんね。私は出来なかったけれど、美朱ちゃんなら出来るわ。だって、巫女だもの。若いもの。
「……わかった……やります!」
「いい心掛けだな。着ているものを脱げ!」
「え゙……」
はい、来た。ほらね……。
「君が言ってたのはこの事だったのだ……?」
「まぁ、ね……」
井宿が呆気に取られて呟いた。目の前では鬼宿と翼宿の抗議の声が響いている。
「ええい!やってやろーじゃん!!」
美朱がバサバサっと制服を脱ぎ始める。この度胸はすごいと思う。ここはとても、寒い空間だ。
真冬に下着で外に出ろ、なんて……絶対出来ない。心臓がぎゅんっ!て縮こまっちゃうわ。
「よし。そのまま動くな!」
虚宿が手をかざす。ここにいるだけでも冷気が漂ってくる。
「ちょ、ちょっと!美朱の足元から氷が……!」
「あいつら、美朱を凍らせる気ィか!?」
氷が足首、膝……と上に上がっていく。
どれだけ寒いことだろう。どれだけ痛いことだろう。
助けたい。変わってあげた方が良かったのかもしれない。
でも……これは巫女の力を示さなくてはいけないところ。
大丈夫。美朱ちゃんなら大丈夫。
柳宿の腕輪だって、あるんだから……。
……………。
うん?
腕輪だって……
うで、わ………持ってる?
「持ってないじゃん!!!」
「えっ?なに、いきなり大きな声出して……」
「柳宿!腕輪……!!」
「なに?これがどうかしたの?」
………めちゃくちゃ腕についてるーー!!
しまった……。すっかり失念していた。本来は柳宿の形見として美朱が持つことを、
柳宿が生存している今、美朱が腕輪を持つことがなくなってしまったんだ……!
まずい!早くどうにかしなくては……!
しかも虚宿が目を伏せ、何か言葉を呟いているのが見える。
あれはきっと……ここに壁を作ろうとしてるんだ!
「待って!虚宿!!」
「…………」
ピク、と動きが止まった。美朱を襲う氷も進行を止める。
「邪魔をする気か?」
横で見据えていた斗宿が睨んでくる。
「しない。でも……巫女に渡したいものがある。持っていて欲しいものがあるの」
「…………」
無言は肯定と受け取ろう。柳宿に駆け寄ると、そっと腕を取った。
「なに……」
「ごめん、これ……貸して」
「これって腕輪?美朱が持ってたって使えないわよ」
「それでも……お願い」
わけがわからないと思っても、柳宿は腕輪を外してくれた。その腕輪を持って、美朱に近づく。
まだ、美朱の腕は氷の中に入っていなかった。
「これ……これを美朱に持たせたいんです」
「なぜそれを許さねばならない?」
「……許してくれたら……私がここに来て見た、あなたたちの巫女、“多喜子”の最後を教えてあげるわ」
「「!」」
「知らないわよね。あなた達は多喜子よりも先にその責務を全うしてしまったのだから……」
明らかに、反応が見えた。
「見えた?本当に……?」
「ええ。教えてあげるからこれを美朱に渡させて」
これは一種の賭けだった。