ふしぎロマンス16~力を使う理由~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……やっとついた………」
馬のない雪山道は、ハンパなく体力を奪っていった。
何度、転んだことか。そして、あまりにも転びすぎてとうとう柳宿に手を繋がれて歩くことになってしまった。
私を護ると言った柳宿は言葉通り、転びそうになる私を引き上げて助けてくれた。
あまりの力に腕がもぎれるかと思ったけれど……。
それでも山頂につく頃には、私をすくい上げることもお手の物になっていた。
恥ずかしいことばかりやってしまっている。
「ちょっとこの岩すっごいわねー。よく退かせたじゃない」
死闘をしてきたとは思えない柳宿のケロッとした声。
ああ……本当に夢のようだ。
「柳宿、それ井宿が砕いたんだよ。ホントはもう半分の大きさがあったの」
「まー!すっごい!やるじゃない、井宿」
「………オイラは………」
井宿にいつもの覇気がない、と思った。
普段も物静かではあるけれど、今日……いや、昨日から変だ。
「すごかったですよ、井宿さんと奏多さん。あれは唇を通してお2人の気持ちが高まったから力が増幅したのではないかと、思います」
「「「………………」」」
いやいや、待とう!!
張宿クン……いきなり何を言うのかな!?
笑っていた顔がひきつる。
「“唇を通して”やて……?」
「“2人の気持ちが高まった”……ですって?」
「って、どういうことや!!」
…………終わった。
翼宿と柳宿がものすごい勢いで井宿に問いただしている。
また、翼宿は井宿の胸倉を掴む勢いだ。
「えっ……僕、言っちゃダメでしたか?とても美しかったんですが」
「……張宿、お前が思い悩むことは無い。あいつらが余裕のないだけだ」
「は、はあ……なんだかこれはよくわからないです……」
「わからなくていいさ」
………軫宿、諭すのはいいけど、止めてよ。
「ま、まさか井宿と奏多さん……濃厚キッスしたの!?」
「み、美朱ちゃん!?また何を言い出すかな!?」
「なあなあ、“濃厚きっす”って何だ?」
「鬼宿!聞かなくていい!!」
「あのね、………ごにょごにょ」
……………再び、終わった。
美朱が鬼宿に説明しているのを翼宿と柳宿が聞き耳を立てている。
もう、怖くて井宿を見ることが出来ない。
嫌われてしまっているのに……傷をえぐるようなことになってしまった。
「……うるさいのだ」
ほら……気温が……一気に下がった。
この世界に来て暫く井宿のお世話を受けていた私は気づいたことがある。
それは井宿は怒らせると怖いということ。
この山の岩を壊した経緯を掻い摘んで話す間も井宿の周辺には近寄り難い空気が纏っていた。
「な、なんやねん。“気”を与えただけかいな……」
「そーよ!それならそーと早く言いなさいよ。奏多も大変だったわねぇ」
「鬼宿……は、早く中に入ろ?」
「……そーだな!そうしようぜ!」
「………待つのだ」
「「「「!!!」」」」
あまりの恐ろしさに、そそくさと話を切り上げようとしていたのに、井宿はそれをピシャリと遮った。
誰もが皆、固まる。
「なぜ……オイラだけ責められるのだ。翼宿も柳宿も鬼宿も奏多から“気”を受けたのだ」
……いや、待って。それもどうなのよ。
私が貞操なしと思われない?それ……。
「オレはちゃうで!こいつがしてきたんや!」
「オレだって気づいたらされてたんだぜ……!み、美朱……だから、その……なっ?」
「別にー……もう済んだ話だし……あたしじゃ助けられなかったし」
「あ゙……いや、美朱!待てって……!絶対怒ってるだろ!」
みんな、好き勝手言ってくれる……。私がどんな思いでしたと思ってるのか。
「鬼宿はちゃうやろ!お前、奏多に何したと……」
「翼宿ぃい!!!」
「どぁああ!!」
翼宿が口を滑らせた瞬間、柳宿は翼宿を殴り飛ばした。耳に届いた鬼宿と美朱が怪訝そうに見てくる。
まったく、危ないったらない。
「言っておきますけどね!あなた達が怪我するのが悪いんだから!!わかってんの!?」
「お、おう……すまんかった……」
「わかったんならいい!!もう怪我しないで!!美朱ちゃん、張宿、行こっ」
むんず、と美朱と張宿の手をとって扉の前に。
よし。このまま手を繋いで入ろう。
「……とかなんとか言って、ただ怖いだけなのだ。1人で入るのが……」
「な、なんのことよ!そんなんじゃないわ……!」
「もう二度目なのに、まだ慣れないとは……やれやれなのだ」
その何でも見透かしているところ、ほんっと腹立つ。
でもようやく、美朱をここに連れてこられた。それも柳宿も一緒に。
きっと、うまくいくわ。