ふしぎロマンス16~力を使う理由~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「あっ……あぁ……ッ」
決して見たくなかった光景が……今、目の前に起きていた。
先についた翼宿が参戦したのがわかる。彼も血だらけになっていたから。
そして今……
まさに野獣化した尾宿が……
柳宿の胸を貫いていた。
「柳宿ーーーっ!!!」
井宿から飛び降りると転びそうになりながらも駆け寄った。柳宿が尾宿の首を持ち、ぐるんと回転させ後ろに回り込む。
そして尾宿の……ボキッという鈍い音が聞こえた。
「はあっ……はあっ……っ」
柳宿が……後ろに倒れ込んだ。
「柳宿っ!」
倒れた柳宿の脇に膝をつく。手が、震える。
「……はあ……ドジっ……ちゃったわねェ……あたしとしたことが……」
「柳宿ッ……いいの。大丈夫っ……すぐに……」
すぐに、治してあげるから………。
「っ……………」
助けることが出来ないのではとずっと不安だった。
何をしても、変わらない。変えられないのではないか、と。
でも……変えられた。
変えられるんだ。
「ふ……ぅっ……ぬり、こっ……」
口づけの合間に嗚咽が漏れる。治さなきゃいけないのに涙が止まらない。それでも再生の力は伝わったようで、みるみる柳宿の顔色も良くなる。
「んー……」
「ぬりっ……こ……」
次第に柳宿からも応えられる。
角度が変わり、されるがままに口づけされた。
治って。治って……と思うばかりで必死だった。
「おー……まー……えはー……何しよんのじゃ!!」
「……へ?」
「………チッ」
私たちのところに影ができた。そしてすぐに引き離される感覚。目を開けると翼宿が仁王立ちで立って、その手の先に柳宿の首根っこを掴む姿が見えた。
「おんどりゃあ……とっくに治っとるやないか!!!」
「あら、バレた?」
「当たり前や!!ここぞとばかりに長うしくさりおって!!」
呆気に取られた。ペタン、とその場にお尻をつけた。
目の前で柳宿が……笑っている。
柳宿が……生きてるっ
「う……うう…………わあーーーんっ!」
「「「!!!」」」
「わあああん!!!!」
「ど、どないしたんや!?」
年甲斐もなく号泣してしまった。
もう、何もかもぐちゃぐちゃだ。こんな思い、初めてだ。
「柳宿が……生きてるっ……!」
信じられない。でも、でも確かに目の前にいる。
いるんだっ!
「柳宿っ……柳宿!」
「え?ちょ、ちょっと……!」
よろよろと立ち上がって、柳宿に抱きついた。
心臓の速い音が聞こえる。生きてる。
本当に……生きてる!!
「奏多……あんた、どうしちゃったのよ……」
「うっ……っく……ぬりこっ……」
ぐしぐしその体に顔をすりつければ、柳宿は優しく背中を撫でてくれた。
「奏多は……きっと柳宿がこうなることを知っていたのだ……」
「え……そうなの?」
柳宿が私に問いかけていると思った。だから……顔をあげずに小さく頷いた。
「だから……ずっと不安だったの?もしかして死ぬ予定だった?」
死ぬ、と聞いてビクリと肩が震えた。嫌な単語が聞こえてしがみつきながらまた、頷いた。
「……あたしが死ぬって知ってて……助けようとしてくれていたってこと?」
………うん。そう。そうだよ。
ずっと……助けたかった。
「初めて会った時、“死なないで”って言ったのは、このことなのね?」
うん。
うん!うん!!
「…………」
「……柳宿?」
急にだんまりになった柳宿を見上げる。
優しい目を、向けられていた。
「……かわいい」
「………へ?」
え……なに?
「あんた、かわいいわ」
「か、……かわいい?……どこが………」
「全部。……最初からずっと、あんたに守られていたのね」
「柳宿……」
柳宿の手が、そっと私の頬に触れた。
「まさかあんたに救われるなんて。これからは、あたしがあんたを護るわ」
「え……?」
「奏多に救われた命、今からあんたに捧げる」
「なに、言って……柳宿は美朱ちゃんを護らなきゃ」
「もちろん美朱も護るわ。でも、あの子には鬼宿がいる。だからあんたは、あたしが護る」
頬に触れていた手が、するりと頬を撫でる。
「護らせて、奏多」
今まで見たことのない艶やかな表情だった。
美しくて、綺麗で儚くて……そんな柳宿に暫く魅入ってしまった。
「……なあ、オレらもおるんて、忘れとんのとちゃうかー?」
「………邪魔するんじゃないわよ」
「いや!いや、するで!!オレら居心地悪いねん!」
……そうだった。
危うく2人の世界なるものに入るところだった。
そろ……と柳宿から離れる。
私ってば……なんという恥さらしを……!
柳宿が生きてるから、とあんなに号泣するなんて……っ
顔が熱くてたまらない。
恥ずかしい。だけど……嫌じゃない。
今も翼宿と話す柳宿を見る。
ああ……笑ってる。やっぱり、その姿を見れたことは、嬉しかった。