ふしぎロマンス16~力を使う理由~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「どうして……どうして柳宿がいなくなったのに誰も気が付かなかったの!?」
それは朝、鬼宿が慌てて私たちの部屋に入ってきたことで発覚した。
「……柳宿が、いない……?」
「オレと飲んでてさ、夜中に部屋を出ていったのは気づいたんだ。でも用を足しにでも行ったのかと……」
鬼宿はそのまま眠ってしまったらしい。
「どうしてみんな気がつかなかったの!?みんな、同じ部屋だったのでしょう!?」
「……術にかけられていたのだ」
その声は鬼宿や透、軫宿の後ろから聞こえてきた。彼らが横にズレると、後ろに井宿が立っていた。
「井宿……あなたまで、気づかないなんて……」
「まだあちらには術師がいるのだ」
「奏多……彼だ」
「透くん……」
“術師”と聞いて、目と目を合わせる。
わかっている。青龍七星士が1人、氏宿(トモ)……。
彼が……幻覚を見せていた?彼がもう、動いているというの?
「おい!こっち、見てみいや!」
この場に一人いなかった翼宿が外から声をかけてくる。その声に全員が外に出てみれば、雪一面の中に……獣のような足跡が踏み残されている。
「尾宿の足跡なのだ……」
「や、やだよ!柳宿……連れ去られちゃったの!?」
「美朱っ……。大丈夫……大丈夫だ!」
鬼宿が美朱をぎゅっと抱きしめる。
この、状況は一体、なに……?何が起こっているの?
よろ……と足元がふらついた。立っていられない。
そう思った時には、トン……と背中がぶつかる。
「……柳宿は、大丈夫や」
「翼宿……」
両の二の腕をぐっと掴んで支えてくれた。なんとか足に力を入れて、自力で立つ。
「柳宿を……探さなくちゃ……」
「せやけど、どこを……」
翼宿の言う通りだ。一体どこを探せば……。
「奏多。俺が見つけるよ」
「………え?」
透が名乗り出る。わけがわからず見ていると、彼の周りに風が集まり出した。ふわっと、彼が浮上する。
「上から探してみる。井宿も柳宿の気を探って」
「わかったのだ」
そう言うとぐんぐん上に上がっていった。どんどん彼の姿が小さくなる。この待っている時間が、やけに長く感じた。
「見つけた!」
「見つけたのだ!」
2人が声を発したのはほぼ同時だった。
「ホンマか!?そんなら……」
翼宿が駆け出そうとする。その時、ふと思った。
なんて嫌なきもちになるくらいの曇り空なのだろう。それは誰もが思ったようで、空を見上げた。その時だった。
「っ……!透!そこにいては危ないのだ!!」
井宿が上を見上げて叫ぶ。透が気づいた時には……遅かった。
ドォォォォォォン!!
けたたましい音と共に、激しい光。
目がくらんで、再び開けた時には地面に倒れ込んだ人の姿が……。
「透くんッ!!!」
「来るなっ!」
「ッ……!」
駆け寄ろうとした。それを、彼はうずくまりながら叫んで止める。
「……房宿の……雷だ……まだ放電してる。近づいちゃ、ダメだよ……」
電流で痛いはずなのに、彼の声は優しかった。私に言い聞かせるようだ。
「井宿。柳宿の場所は……わかるね……?」
「だ」
苦痛に歪めながら井宿に問いかける。
「奏多を、連れていって。柳宿が今、戦っている……早く……」
「お前は……!どうするんや!」
「透、俺が治……」
「いらないよ……平気だ。軫宿の力も必要になる。すぐに治まるから、行って」
「透くん……!」
ビリビリと音をさせながら、透が私たちを見る。
なぜだろう。もう……会えなくなるような気がする。
「透くん!!」
「行くんだ!奏多!!」
井宿が体を抱え込む。自ずと首にしがみつくように抱きついた。
後ろが見える。
「あ……」
小さくなった透に近づく2人の姿。
房宿と……心宿だ。透が連れていかれる。
それをただ、じっと見ていることしか出来なくて、ぎゅっと抱きつく腕に力を込めた。
……グルルル……
おぞましい唸り声が聞こえ始めてきた。
今の、声は……。
「井宿……!」
早く!と言うまでもなく、井宿の走る速度が上がる。
「翼宿!先に行くのだ!君の脚は速い!」
「わぁっとる!!」
誰よりも早く翼宿が前を走り始めた。
ただただ願う。間に合ってくれ……と。