ふしぎロマンス16~力を使う理由~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「それじゃあ、神座宝はその黒山に行けばあるのね。玄武七星士が守ってるって?」
「そうなのだ」
「青龍のやつらが知る前に早く行った方がいいんじゃねェか?」
「アホ。もう日が暮れよる。今からよう知らんと山に入るんは命知らずがやることや。お前らには無理や」
「明日まで待つしかないってことね」
明日……。結局、明日になっちゃう。
これは未来は変わってるの?柳宿1人で行かせなくて済むし、あの洞窟の入口の岩はもうない。
これなら柳宿は助けられる?
でも……尾宿(アシタレ)はまだ襲ってくるはず。
それなら一体誰が標的に……。
「ッ…………」
怖い。
透くんの言う通り、変えてしまうことで知らない未来になりつつある。何が起こるのかわからない。
全員を今、揃えてしまって良かったの……?
「奏多、顔が真っ青だ」
「……透くん、大丈夫………」
「ちょっ……ホントに青白いわよ!?」
「お、おい軫宿。治したってくれ……って、さっき井宿に使ってもうたかぁ……!」
「すまん……」
「お前の能力、厄介なやっちゃなぁ!」
あ……ダメだ。すごく気持ちが悪い……。
「奏多、休もう」
ぐっと肩を引き寄せられた。透との距離が急に縮まって面くらう。
「奏多は先に部屋に連れていくよ。いいね?」
「あ、あたしも一緒に……!」
美朱が駆け寄ろうとすると、その体を鬼宿が引き寄せた。
「やめとけって。今はほら、なっ?」
鬼宿が変に気を使ってきた。
正直なところ、彼が死ぬかと思った時は本当に怖かった。
失えない。ただ1人の、同じ世界から来た人。
私がずっと……密かに想っていた人。
10年会っていなくても、心のどこかにいつもいて、今でも話せるだけで心が躍る。
「ほら、横になって」
「う、ん……」
唯一、彼の前では気を張らなくていい。
年も同じだし、彼もこの世界のことを知っている。唯一、この先のことを相談できる。
「奏多……今日は、本当にごめん」
「透くんが謝ることなんて……」
「いや、完全に油断してた。尾宿があんなに機敏に動くとは思ってなかったんだ」
「……そう……だったんだ」
紙面上と、現実の違い。私も何度も驚かされたことだ。
「倶東国にいる時も、青龍七星士には全員には会えてなかったんだ」
「そうなの?」
「うん。会いたかったんだけどね。知っておくに越したことはないと思ったし、唯に関しては説得も試みるんだけど……簡単にはいかない」
「出来たらこんなことにはならない、よね」
「ああ。一瞬で朱雀呼び出して終わる」
「そうなったらどれだけいいかしら……」
でも、そんなことには決してならない。この世界はそれだけ……歪んでる。
「明日は……油断しない。尾宿は俺が倒す……」
「と…おるくん……倒すって……」
「力を使って、尾宿の脳を破壊するんだ。それなら神座宝を奪われることもない」
「でもそれって……透くんが……!」
目と目が合っていたその瞳を、透はそらした。
「俺ね……ここに来た時に人を殺めているんだ……」
「っ……!」
そうだ………。
唯を襲った男達。その男達に初めて力を使ったのだろう。
暴走したと言ってもいいくらい、大きな力を受けて……確か動かなくなっていた。
「恐ろしい力だと思う。でも……この力が俺に来てよかった」
「………なんで……」
「奏多にこんな思いはさせたくないからね」
「透くんっ……!」
彼の優しさが痛い。こんなに優しい人が、どれだけ辛い思いをすればいいのだろう。
体を起こして、その彼の袖を引っ張った。
されるがままに身をかがめた彼の体に腕を回して抱きしめた。
「奏多?どうしたの?怖い?」
言葉を発することが出来なくて、ぶんぶんと首を横に降った。
明日のことは怖い。でも抱きしめたのは……彼が壊れてしまうんじゃないかと、思ったから。
「奏多は……やさしいね」
ぽんぽんと私の頭に触れると、透は部屋から出ていった。
触れられた髪を自分でも触る。
きっと上手くいくわ。みんないるんだもの。
みんなで立ち向かっていけば、きっと……。
でもそれは、翌朝になって絶望へと変わる。
朝、起きたら……柳宿がいなかった。