ふしぎロマンス16~力を使う理由~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「奏多さん、大丈夫ですか?」
「うん。でも……冷えるね。斗宿ここに……」
「火の気はない。我々は寒さを感じない」
「だよね……」
すんなり話をしているが、彼らは残留思念だ。もうすでに200年前にお亡くなりになっている方達だ。
「翼宿さんがいたら良かったですね」
「ほんと。翼宿が恋しいわ」
「すみません。僕は何も力がなくて……」
「まさか!張宿が今いてくれるだけでどれだけ救われてるか」
この寒々しいところに残るなんて、さすがに私1人じゃ思いもしない。いくら……ここにこの人たちがいようとも!!
「……なんだ」
「イエ。何でもないです」
「人のことじろじろ見てんじゃねーぞ」
「見てないです」
なんで幽霊な方々がこんなにもはっきり見えるかなぁ。このままこういう方たちが見えたりとかしないわよねぇ。
……こわい。
「張宿。もうちょっとくっついていい?」
「あ、はい。どうぞ」
……はあ~。癒される。
しれっとその小さな体を抱き包む。緊張しているのか少し固まっていたけれど、頭をなでなでしているとそれもすぐになくなり、身をあずけてくれた。
「すごく、あったかいです」
「私も。張宿、いつも頑張ってるね。少しくらい、甘えてもいいんだよ?」
「奏多さん……」
スゥ、と張宿の足の甲の文字が消えていた。
なでなで。
なでなで。
「スゥ………スゥ…………」
あら。寝ちゃった?
「まだ子供だな」
「……ええ。まだ13歳なの」
「室宿(ハツイ)と変わんねえな」
室宿と言われて記憶を呼び戻す。先程見た記憶の中で、小さな丸っと可愛らしい男の子がいたのを思い出す。玄武七星。針を操る子だ。
「あなた達も……ずいぶん若いのに命を落としたのね」
「………まあな」
「後悔はしていない。俺達は使命を全うした」
「そうね。それはすごいことだわ」
この人達の最後。そして巫女の最後。思い出しただけでも……ぐっと来る。
「……私ね……救いたい人がいるのよ」
「………へえ」
「私は巫女じゃない。でも……私も異世界から来たの」
「異世界……」
「私の世界では、朱雀の巫女に起こることがわかるの。だから……助けたいの」
「今の言い分だと、朱雀七星も俺たちと同じく命を落とす。そういう事か」
斗宿は察しが良かった。
「巫女を護って死を迎えるのなら本望だろう」
「嫌よ。救える命は救いたいの」
「お前のようなやつが救えるのか?」
「わからない。でも……殺されると思っていた人たちは今、生きてるわ」
鬼宿の家族。彼らは今、私の知らない未来を生きている。
「七星士だからって、命を落として欲しくない。朱雀七星に限ったことじゃないのよ」
「…………」
「たぶんそれが、あなた達だったとしても私は必死に救ってた」
あなた達の最後を知った時、すごく悲しかった。虚宿が刺される理由も、斗宿が背中に弓を受けるのも、信じ難かった。
「多喜子さんの病も……」
「「!」」
簡単には言えない。それでも、再生の力を持って現れていたら、救えたんじゃないかと思う。
この人たちの前では言えないけれど……。
「……お前、名は何と言ったか」
「奏多よ」
「では奏多。そこに眠る小さき七星士を起こして行くがいい」
「え?」
「先ほど出ていったキツネ……遅すぎる」
「井宿?でもまだそんなには経ってないわ」
「いや、確かに遅えな。あいつくらいのやつなら、もう巫女連れてきてもいいくらいだ」
「井宿は術はここでは使えないって……」
なんだろう、とても嫌な気分になってきた。
「それでも七星なら人並外れた身体能力を備えている。起こして早く行け」
その言い方がまるで早く行かなければ手遅れになるような言い方をしていた。
「ッ……ち、りこ……張宿、起きて……」
「んん……ぁ、僕、寝てました!?」
「それはいいのよ。張宿、井宿がまだ戻らないの」
張宿の足を見ると、字が浮かび上がっている。案の定すぐに状況を把握すると、私の手をとって出口に走った。
「急ぎましょう!」
「うん!!」
「……行ったな」
「そうだな」
「なあ、斗宿。あいつがいたらさ……」
「ああ」
「俺達の未来も違ったのかな」
「……さあ。どうだろうな」
「欲しかったな、俺達にも」
「……そうだな」
「なんで200年前に来てくれなかったんだよ……」
私たちが去ったあと、そんな会話がなされていたなんて……知る由もなかった。