ふしぎロマンス15~護れるのなら~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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襲いかかった龍は瞬く間に井宿が術を使い、飛び散らせる。
「奏多、危険なのだ。オイラだけでは護りきれない。一旦出るのだ」
「それはダメ!この先に神座宝があるの!玄武の巫女が身につけていた……首飾りが」
……すんなりと口に出すことが出来た。首飾りなんてワードは頭痛を引き起こすかと思ったのに。
「貴様……何者だ」
「本当に、見せてない?」
「なんでこいつ、色々知ってんだ……」
2人の疑惑の視線が痛い。私だって知りたい。
なぜ、彼らの過去を見たのだろう。
でも、これでわかった。玄武の巫女のこと。
そして、玄武七星士のこと。
「斗宿。あなたは“瞳水(トウスイ)”。瞳に文字があって、水を操る」
「!」
「虚宿。あなたは“氷弓(ヒョウキュウ)”。弓の名手で氷を操る」
「なんっ……で……」
「その斗宿の眼帯の下の力……“視鏡監(シキョウカン)”であなた達の過去を見せてくれたのだと思ったけれど……違うのね」
ペラペラと知りもしないであろうことを言い始めた私に、虚宿や斗宿はもちろん井宿も驚きの表情を見せた。
ただ張宿だけは、目の前で起こっていることを理解しようと、じっと見つめている。
「不思議だろうけれど、私にもわからないの。ただ、あなた達の記憶が見えたわ」
「……お前は、何者だ」
「斗宿はそればかりなのね」
「答えろ!」
「そんな事言われても……」
なんとも説明しづらい。
「彼女は“黄龍の依り代”と呼ばれているのだ」
「井宿……」
「オイラは朱雀七星“井宿”なのだ」
「あ、僕は“張宿”です」
「朱雀七星……」
「信じるな斗宿!朱雀の巫女だっていねえ!!」
「それは……!」
「だが虚宿。黄龍とは……俺達の知る“黄竜・騰蛇(トウダ)”だろうか」
「あいつが関わってるって言うのかよ」
胡散臭そうに見られる。
いや、そう見られたところで私だってよくわからない。
「朱雀の巫女はどうした。なぜお前達は一緒にいない」
「巫女はまだここを知らないの。でも教えてあげられない。導くことすら出来ない。頭が痛くなって、妨害される」
隠してもいいことはないと思った。この人たちに嘘は通用しない。
「どうしても神座宝が欲しいんです。朱雀の巫女に、今すぐにでも渡したいっ」
そうすればきっと、柳宿は助かる。明日じゃ、遅い。今、諦めるわけにはいかない!
暫く沈黙が流れた。じっと2人を見つめる。
お願い。心を開いて。
「……仕方ない」
「虚宿!それじゃあ……!」
「神座宝を渡せる価値があるのかどうか、試し……」
あ、それダメなやつだ。
「脱ぐのは無理だから」
「だっ!?何を言ってるのだ、君は!?」
事態を見守っていた井宿が驚きの声を出した。
「俺はまだ最後まで言ってねえぞ」
「だってそれ巫女の仕事だから。氷漬けなんて嫌。というか無理だから」
「そこまでわかっていながら……拒否するのか」
「当たり前でしょ!脱げるわけないじゃない!こんな……こんなとこで……凍死するわ!!」
「それで死ぬならそれだけの女と言うまでだ」
「くっ……むかつくわね」
「奏多!そんな言葉に惑わされてはダメなのだ!危険なのだ!」
そんなことはわかりきってる。
何が悲しくってこんなところで試されなきゃいけないんだ。しかも裸同然での氷漬け。考えただけでも震えてくる。
それに……こんな若い子達の前で脱げる肌はもう、とっくの昔にどこかへ行ってしまったわ……!!
「力を示さねば……渡すことは出来ない。お前ができないというなら、巫女を連れてくることだ」
「大体、巫女にしかやれねえ。あいつの大事なもんだ。俺達だって……200年護り抜いてきたものなんだ」
それは……わかる。
さきほど見た記憶であなた達がどれだけ玄武の巫女を慕っていたのか。
「井宿さん。美朱さんを連れてこれますか?」
「張宿……?」
「奏多さんと僕がいたのでは足を引っ張ります。井宿さんだけで動けば、すぐに美朱さんを連れてこれます」
「それはそうなのだが……しかし、君たちだけでここに置いていくわけにはいかないのだ。もし、倶東国から刺客でも入ってきたら……」
「倶東国だって?」
井宿の発した言葉に、虚宿がピクッと反応した。
「あいつらには渡さん」
「だよな。ここに入ってきた瞬間、滅殺だな」
「井宿さん、ここが一番安全なようです」
「……そのようなのだ」
井宿は一度私を見ると、そのまま出口へと走り出した。残された張宿が私の近くへ寄る。
「僕じゃ頼りないかも知れませんが、井宿さんが戻るまであなたを護ります」
「張宿……」
頼りないなんてとんでもない。私は自分よりも低い位置にある頭に触れた。ふわふわで柔らかな髪だ。
「ありがと、張宿」
今までにないくらい、ほっとした。
でもこれが、間違いだった。