ふしぎロマンス15~護れるのなら~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「落ち着いたのだ?」
「………はい、取り乱してごめん……。張宿もごめんね?」
「いいえ。驚かれるのも無理はないと思います」
……こんな小さな子すら落ち着いて微笑んでいるというのに……っ!私ったら……私ったら、なんて大人気ない!!
ずっと我慢してきたことを吐き出してしまった。
ずっと怖かった。山に入れば虫。いや、虫くらい平気。アレさえいなければ。
でも、人は簡単に命を奪い奪われ、食事をとることが出来ずに飢えることもある。
どれだけこの世界にいても、慣れることなどなかった。
それを無理に平気だと、思い込ませてきた。プレッシャーに負けそうになる気持ちにも蓋をした。
それでもこの地に足を踏み入れて、知らず知らず限界を迎えようとしていたのかもしれない。
「先に進んでみるのだ」
井宿が先に一歩踏み出した時だった。前方から、無数に何かが飛んでくる。シャン、と井宿の錫杖が鳴った。
「これは……氷でてきた矢なのだ」
はじき飛ばしたものを目を細めて見る。
暗い。暗すぎて見えづらいけれど、確かに矢が地面に突き刺さっている。
「神座宝を狙ってきたのが運の尽きだな」
「愚か者共が……ここから先へは一歩も通さん!!」
冷気が、一気に流れ込んできた。
「何者なのだ!」
「キツネと子供……あとは女じゃねえか。変わった奴らが奪いに来たもんだな」
「誰が来ようと神座宝は渡さん」
ポゥ……と光がどこからか生まれる。目の前に佇む人影が徐々に鮮明に見えてきた。
「俺達は玄武の巫女の神座宝を守護する者!俺の名は“虚宿”!」
「俺の名は“斗宿”……」
とみて……
ひきつ………。
「まさか……“北方玄武七星宿”なのだ!?」
井宿がハッとすると同時に虚宿が矢を放つ。先程のように錫杖を使い、はじき飛ばした。
「神座宝を玄武七星士が守る……?まさか、200年前のことなのだ……」
「井宿……彼らは……ッ」
また、頭が痛くなったのかと思った。でもこれは、違う。
「うっ!……な、なに……?」
「奏多!?」
頭の中に……何かが押し寄せてくる。
ザ、ザザザ……とノイズがかかる中に、何かが……“視え”始めた。
ーー今から私は、玄武を召喚します
ーー私の最後の願いを叶えさせて!!
ーー大丈夫だ、多喜子。最後まで護ってやるからな……
ーーひき……見ぇ……ね、ど……こ……
ーー俺はここだ!!しっかりしろ!!
ーー“降り立ち給え”ーーーー!!!
ーーチャムカ。よく頑張ったな。
ーー……大丈夫だ。俺も……一緒だ…………
「あ……ああっ……」
これは……玄武の巫女と彼らの最後……。知らなかった。彼らはこんな切ない最後を……っ。
ガクッと膝を地につけた。慌てた井宿と張宿が私を包み込む。
「一体、どうしたのだ!」
「奏多さん!大丈夫ですか!」
心臓がバクバク音を成す。顔を上げて、前に佇む彼らを見つめた。
「玄武……召喚……た、きこ……」
「「!!!」」
また、ノイズが目の前に現れる。息苦しくて仕方がない。
「ふっ……うぅっ……また、なのっ!?」
「奏多!!しっかりするのだ!!」
ーー……多喜子は、とても満足……しています……
ーーこんな……素晴らしい人生を与えてくださって……
ーー俺は……愛し続ける
ーーこの腕から離さない……!
ーーリムド……
ーー私は永遠に、あなたの腕の中よ……
ーー……多喜子の歌声は優しいな……
ーーとても……安心する
涙が頬を伝う。もう、苦しいッ。胸が痛い。
痛くてたまらない……っ
「ふっ……う……ッ……ッく」
「奏多……」
悲しみの記憶と、安らぎの記憶が押し寄せる。苦しいのに、切ない。
どうしていいのか、わからないっ。
「なぜ……この者は泣いている」
「なんなんだよ、こいつら……それにさっき……」
「あぁ。巫女の名、だった。久しぶりに……聞いた」
「……そうだな」
虚宿と斗宿も固唾を呑んでただ視線を向けた。走馬灯のように記憶が流れ込んできたが、ようやく治まった。
「……これが、あなた達の最後……」
「奏多。君は一体何を見たのだ」
ぐい、と涙をぬぐって立ち上がる。井宿と張宿が体を支えてくれた。
「あなたが……見せたの?斗宿」
「……なんのことだ」
私に呼ばれた斗宿が怪訝な顔を向ける。
「あなたのその右目で、見せたんじゃないの?」
その瞬間、襲いかかってくる龍。水が氷となって出来た龍だった。