ふしぎロマンス2~夢と出会い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「今日はオイラだけで行ってくるのだ」
夢のこともあるからなのか、その日井宿は反論させないかのように強く言った。
夢の中での出来事を話していないから疲れていると受け取ったらしい。
連日、連れ回しているから疲れがたまってきているのかも、と。
そんなことはこれっぽっちもないのに、井宿は私にお金をもたせると部屋を出ていった。
「………ひま、だなぁ」
しばらく横になったり、外を眺めたりとしていたものの、すぐに時間を持て余した。
井宿はきっと、夕方にならないと帰ってこない。
どうしたものか。
外……行ってみる?
少しくらいなら大丈夫だろうか。
髪を高い位置で結い上げる。
部屋を出ると、ちょうど宿の人とすれ違った為、軽く会釈をした。
外に出ると、太陽の眩しさに目を細めた。
今日もよく晴れている。
通りを歩く。
宿のまわりもこの2日歩いたことで、なんとなく地理がわかってきた。
このあたりはいろいろなものを物販しているところだ。
市場、というほどでもないけれど。
あ、美味しそうな果物が売ってる。
井宿は果物好きだろうか。
買って帰ったら……喜ぶかな?
いや、ダメだ。
休まず出かけたことがバレる。
店先でグッと我慢していると、人がある一箇所に集まり出した。
「おい、巫女の持ってたやつだってよ」
「本当かよー」
道行く男の人の会話に自然に耳がいった。
巫女が持っていたもの……?
人垣に歩みを進めると、塀に登った人に目が行く。
「あ、あれって……」
目を離すことができない。
どう見てもあれは……鬼宿じゃないか。
リアル鬼宿!
遠目に見てもわかる整った顔に目を離せない。
そういえば、こういう顔……嫌いじゃないっけ。
ドンッ……!!
「……っ」
「あ、ごめんなさいっ」
鬼宿の姿に意識を取られ、横にいた人から押される。
きっと、この人も押されたのだろう。
白い布を頭から被さり、鬼宿を見ている……女の子。
この子……まさか……
ずっと夢の中で泣かせてしまった……女の子だ。
「み、美朱ちゃん!?」
「え……?」
あ、やばっ……名前、呼んじゃった。
バチリ、と目が合う。
私とほとんど背が同じなのだろう。
目がまともに合った。
「案外あてずっぽ作って売るためにでまかせ言ってる“サギ”じゃねェか?」
突然、沸き起こる「そーだ、そーだ!」の声に女の子はバッと布を剥ぎ取り、大きな声を出した。
「鬼宿はそんなことする人じゃないわ!!」
ここにいる全員があっけに取られてシーンとした。
み、美朱ちゃんに会ってしまった……。
井宿は“まだ時期じゃない”と言っていたのに。
私は七星士でもないけれど、井宿のそばにいる手前、今はこの場から離れようと試みた。
だけど……。
本物の朱雀の巫女がいると知った町民に群がられる。
離れようとしても、グイグイ様々なところから押される。
ちょ、苦しいっ……
息も絶え絶え、ようやく人混みから抜け出せた。
「この娘をオレに売れ!!」
……はい?
目の前には……ものすごくどこかで見たことのあるような……おじさん。それから……
捕らえられている美朱。
もちろん鬼宿もいる。
なんでよりにも寄ってこの場所に出てしまったのか……
どうしたものかと立ちすくんでいると、それはもうこの世のものとは思えない強い力で引っ張られた。
「痛っ……!?」
「静かになさい!」
誰だ!と、言おうとすれば、ピシャリと逆に制される。
喉からでかかった声が、ぐっと止まった。
思考回路も止まった。
「柳宿……!?」
「!?……あんた……」
またやってしまった……。
顔も名前もわかるから、見ると驚いて名前を呼んでしまう癖があるらしい。
「ちょっと、なんでアタシの名前、知ってんのよ」
「…………」
「言わないってワケ?」
まずい、まずい。
柳宿はまずい。
とっても綺麗に着飾っているのに、凄まれると怖い。
冷や汗を浮かべ、どうやってこの場を切り抜けたものか、と懸命に頭をひねれば、空気を変えたのは紛れもない美朱の声だった。
「た……鬼宿の……ぶぁかーーーっ!」
美朱の一撃だけでも凄かったけれど、鬼宿があのおじさんを蹴り飛ばした。
「す、すご……」
初めて目の当たりにする乱闘。
そうだ。鬼宿をはじめ、七星士はすごいんだった。