ふしぎロマンス15~護れるのなら~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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“気”を与えなくてはいけないというのに、私は井宿から受ける側になっていた。
唇が重なったかと思ったら、間髪をいれずに口内に舌が入ってくる。
「んんっ……!」
なぜ?どうして? “気”は与えてあげられてるの?
まさか。
だってこれは……普通のキスじゃないの。
これじゃあいけない!
私があなたにあげないといけないの!
「ちちり……!待っ……」
呼吸の合間に舌を絡め取られる。押され気味になるところを、懸命に耐えた。
ふわっ、とあの船の中でされた時のような気持ちよさが体を駆け巡る。
「んっ……ぁ……」
鼻にかかった声が嫌でもキスの合間に出てしまう。
何度も何度も角度を変えて唇が合わされば、次第に互いの舌が絡まり合った。
まただ。また頭がぼーっとする。
何も考えられず、ただただ受けて応えてを繰り返した。
カクンッと膝から崩れ落ちる。井宿が体を支えてくれたから、辛うじてその場に座り込むことはなかった。
自然に離れる唇。井宿も僅かに甘い吐息を吐いた。
今まで温かくて熱くも感じていたのに、一気に離れた外気によって濡れた唇がさらに寒く感じた。
「……大丈夫なのだ?」
「……………」
言えない。
力を与えずに感じてしまっていたなんて……言えない!
井宿は私を立ち上がらせると、背を向けた。
「……オイラが……煩悩に負けた……?なぜ……」
「井宿……私いま、あげられてない」
「いや……力が……溢れ出てくるのだ」
「え……?」
「君の力は……本当に恐ろしいのだ」
「はぃ?なに、どういうこと?」
「今なら何でもできそうな気がするのだ。張宿と下がっているのだ」
「……………」
……張宿のこと、忘れてたぁ!!!
「あ、あはは。張宿……」
見れば顔を真っ赤にさせて視線をそらし気味で立っている。
申し訳ない……ほんと……。
「はっ!」
それは一瞬の出来事だった。井宿が気合を入れた、そう思った時には……岩が、扉の前を塞いでいる部分が粉砕していた。
………うそぉ………。
「す、すごいです!井宿さん!!」
「いや、オイラだけの力ではないのだ。奏多の力なのだ」
「え……違うよ。私は何も……」
だって……ただ感じていただけ……って、ちがーう!!
「た、ただ夢中で……よく覚えてなくて」
「オイラも………いや、何でもないのだ」
何かを言いかけた所で、井宿は話を変えた。
「扉を開けられそうなのだ」
「あ……」
「入ってみるのだ?ここに用があったのだろう?」
井宿が扉を少し押す。それはキィ……と抵抗もなく開いた。
これでいい。これで先に神座宝を譲り受けさえすれば、きっと……。
「井宿、張宿。気をつけて。入ったら扉が……」
バタンっ……
「閉まるの」
「そういう事はもう少し早く言うのだ」
「暗いですね」
「だってお約束じゃない。張宿、怖い?大丈夫?」
「大丈夫です。すぐに目は慣れてきましたので」
「そう……?怖いなら手でも握ろうか?」
「?大丈夫ですよ。ありがとうございます」
………意外と根性あるよね、張宿って。
そう。平気なのね。そっかぁ。平気だなんてすごいなぁ。
「なんなのだ、さっきから。怖いのだ?」
「は!?そんなわけないじゃないー!張宿だって平気なのに、こうなることわかってるのに!?だいじょーぶよ!そんなところにお骨が落ちてたってぇぇ……」
「骨?」
「ゴロゴロ転がってても平気よ~……」
ダメだ。完全に声が震えてる。
「奏多さん、大丈夫ですか?」
「だ、だだだだいじょーぶ!」
「……あ、そのまま行っては足元に」
コツン。
「ご!!ごめんなさい!ごめんなさい!!お骨蹴ってごめんなさいー!!」
「落ち着くのだ!」
「あのね、ホントは無理なの!こう、ホラーとかゾンビとか、遊園地のお化け屋敷とかにも絶対近寄らなかったの!!」
「言っている意味が全然わからないのだ……!」
あ、ダメだ。ここ震えが止まらない。
暗闇の中に無数にある骸骨にゾワゾワ感が止まらない。
「こういうのほんと経験ないから……!」
「奏多!ここにいる者たちも元は人間なのだ!!」
井宿の一際大きな声と、両肩をガッと掴まれたことで引き戻される。
「はっ……はあっ……」
パニックになりかけた。そう思った。
「ここにいる者も、本当はここで眠りたくはないはずなのだ」
「あ………」
「恐れる必要はないのだ。オイラも張宿も一緒にそばにいるのだ」
恐れる必要は、ない。井宿も張宿もいる。心の中で言葉を反復していた。
ふしぎ。もう、震えが止まった。