ふしぎロマンス15~護れるのなら~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「てめェ!色目使ってんなよ!!」
「色目?そんなつもりはないけど……」
「無自覚が一番厄介なんだぜ!?美朱もこいつ、見んな!」
「あ、あたしだけじゃ……!柳宿だって!」
確かに見れば目がハートになっている。
「あら、しょうがないじゃない。生で見るとホントいい男なんだものー!オホホホホ」
「そう?嬉しいな。柳宿もこんな綺麗だとは思わなかったよ」
透が微笑むとその場にいた美朱も私も息を吐く。ため息が出るほどいい男だ。
柳宿にいたってはテンション上がって鬼宿をバシバシ叩いていた。
「……そろそろ出発するのだ」
「奏多。もうオレん馬乗らんと、柳宿か井宿の馬に乗れや」
「え?」
「お前乗せるんはいろいろ大変やねん」
プイ、と横を向く。何がそんなに大変なのだろう。
鬼宿だって軫宿だって、ちゃんと乗せられているのに。
「奏多は俺が連れて行くよ。これでね」
透がふわりと風を巻き起こす。
「奏多、おいで」
……おいで?おいでとは!?
「え……と、透くん……なんで手なんか広げて……」
「連れていってあげる」
そこに飛び込めと!?確実に透に抱きしめられそうな感じがしますけど……!!
「い、いい!私、柳宿に乗せてもらうから!」
「どっちでもいいから早くしなさーい?」
「柳宿!お願いします!」
「ハイハイ」
「そう?残念だな」
そう言いながら、走り出した馬にスィーと横を進む。
「風の力ってすごいわね」
「うん……」
前に座る柳宿が呟いた。透はこの先もついてくる気なのだろうか。
特烏蘭につく頃には、ちらほら雪が降り始めていた。
「あら、すごい。紅南じゃあまり降らないのよねェ。気候いいから」
「暖かかったから、この寒さ……堪える~」
「なぁに?奏多は寒いのダメなわけェ?」
「紅南国の気候に慣れちゃっただけよ」
馬を降りて食事のできる店に入る。その中は暖かくて、ホッと一息つけた。
それにしても……井宿だけ、上から何も羽織らずいつもの服なのはなぜだろう。
寒くないの……?
柳宿も襟の詰まった服だし、鬼宿や翼宿、軫宿や張宿ももう1枚服を着ている。
なぜ……なぜ井宿は、そのペラッとした服と袈裟だけなのか……!
「……なんなのだ。今度はじっと見て」
「え?あ、寒くないのかなーと思って」
「オイラは修行をしていた身なのだ。これくらい……って何をしてるのだ」
ちっ、バレたか。裾を掴もうとするとその手を取られた。
「実は中にめちゃくちゃ暖かいもの来てるかと思ったんだけど……」
「そんなわけないのだ」
「簡単に男の服、めくっちゃダメだよ?奏多」
「あ……透くん」
掴まれていた手の上にそっと透の手が乗る。自然に井宿の手が離れた。
「少し感覚鈍ってきてる?それともこれくらいならいいと思ってる?」
「え……?」
「……君がここまでだなんて……今までどう過ごしてきたのか、怖いな」
「透くん、何言って……」
それ以上、透は話さなかった。みんなで一つのテーブルを囲むと、そこに暖かな料理が並び始める。
「おいしそー!いただきまーす」
美朱がものすごいペースで食べ始める。ほんとに、この子は食べる時にとても幸せそうな顔をする。
柳宿の隣でお椀に入ったスープに口つける。
あ、あったまる~!
「さてと、こっからどーすっかだな!」
バッと出されたこの国の地図に目を落とす。字も書いてあるが、私には読めない。
「今は市街の入口なのだ。手分けしたほーがいいのだ!」
手分け。
心臓が、ドクッと鳴った。
あ、ダメ……。ダメだよ。
「ち、井宿……みんなで一緒に……探さない?」
お願いよ。
離れちゃだめなの。ここで皆がバラバラになるから……。
「それでは時間がかかってしまうのだ」
……お願い、井宿。気づいてよ。
柳宿が……あぶないのよ……っ!
「奏多」
テーブルの下で握りしめた手に、透の手が触れる。
顔を上げて透を見た。
とても辛そうに見つめられる。そして……首を横に降られた。