ふしぎロマンス15~護れるのなら~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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離れちゃダメだ。もう、柳宿から離れない。
絶対……一人にしない。何があっても……1人に、しちゃいけない。
「……ん………」
よく寝たと思う。確か夢を見ていたはずだ。
それでもこんなにも目覚めがいいなんて一体何があったのだろう。
起き上がると、向こうのベッドでまだ寝息を立てて寝ている美朱の姿があった。
よいしょっ、とベッドから降りようとすると、いきなり後ろから羽交い締めにされた。
「っっっ!!!」
「シーッ!あんた、この状況を叫ぶんなら許さないわよ」
「むぐっ!?」
声がしたと同時に口を手で覆われる。
何事かと目だけをキョロキョロさせると、眉間にシワを寄せた柳宿と目が合った。
「……っ、なんで柳宿が?」
「なんでって……あんたが」
「私が?」
柳宿がほとほと呆れたように顔を歪めて見てくる。その姿を見れば、服はシワシワで……。
「あれ、胸元の服濡れてるね……。どうしたの?」
「………お気楽なもんね、あんたって。井宿に同情するわ」
「はぃ?」
何だか、話が見えない。すると、美朱がムクっと体を起こした。どうやら起きたみたいだ。
「あ、おはよー。もう昨日はびっくりしちゃった」
「え?」
「あ、バカ美朱!もういい……」
「よかったね!もう泣き止まないかと思ったよー」
……はぃ?
柳宿は額に手を当てて苦虫を潰したかのような顔。
「美朱ちゃん、何?泣き止まない、とか……」
「もう、どんな夢見たの?みんなビックリしてたんだからー」
……………………え。
「えぇぇぇぇぇっっっ!!!!?」
あ、ありえないっ……!!
私……また!?!?
バタバタバタ……!
バンッ!!
「ンだよ!また泣き出したのかよ!!」
「ええ加減にせぇよ!」
「柳宿!しっかり抱きしめていれば問題ないと……!」
「う、ぁ……ウソ……でしょ……?」
バタバタと入ってきた彼らの顔を見る。今の鬼宿と翼宿、井宿の言葉で、色々察することは出来るわけで……。
一気に血の気が引いた。
恥ずかしい……。
「もう……寝れない……」
「なにアホなこと言うてんねん」
馬に乗ったところで前から翼宿の声が降りかかる。
一夜明けて、中央部の特烏蘭(トウラン)に出発した。それぞれが馬に乗り、一人で乗れない美朱は鬼宿の後ろ、張宿は軫宿の後ろ。そして、私は……翼宿の後ろだ。
「なぁ、お前……消去法でオレの馬、選んだやろ」
「え゙?い、いや、まっさかー?」
「……わかりやす」
その通りである。あのあと、昨日の失態を美朱から聞いてしまった。
こんな醜態を晒していたとは……。夢の中で叫んでいたとばかり思っていたのに……。
チラ、と前を行く柳宿の背中を見る。そして、横を走る井宿も見る。
「……なんなのだ?」
「!……な、何でもないわ!」
目は前を見ていると言うのに、声がかかったことにびっくりした。井宿は顔の横にも目があるんじゃないだろうか。
昨日のことで、これまでも井宿に迷惑をかけていたのだと知った。
どうして夢を見て泣いてしまうのか……。いい大人が恥ずかしすぎる。
それにしても先ほどから私たちの乗っている馬は走るのが遅くないか?横にいた井宿も僅かに前に出て、私たちが最後になっている。
「翼宿、もしかして落ちないように、気遣ってる?」
「……もう柳宿にどつかれるンは嫌やからな」
あぁ、やっぱり。彼は同じ過ちを二度はしない人。
翼宿の腰に回していた腕に力を入れる。
「大丈夫だよ。ほら、こうして掴んでおくから」
「……そない力入れとったらすぐにバテるで」
「一応、弓だって出来るんだから腕力はあるの。翼宿あったかいし、ちょうどいいわ」
「フン。知らへんぞ、オレは」
翼宿はみんなに置いていかれないようにしつつも、やっぱり緩やかに走った。
馬を走らせて2時間。それでもまだ、景色は変わらない。山には雪が積もり、徐々に冷え込みも増してきた。
「少し馬を休憩させるのだ」
この寒さの中で、僅かながら生えて立つ木々で止まる。それぞれ馬から降りた。
「走っても走ってもつきやしない。特烏蘭ってそんな遠いのわけェ?」
「北甲国は紅南国の3倍の広さと言われているのだ」
「3倍ィ!?移動するだけでも大変じゃねェか!」
こんなに時間がかかるとは思ってもいなかった。再認識する。読んでいる時と実際では時間の感覚が全然違うということを。
こんなことでは、すぐにみんな疲れてしまうわ。
馬だって……。
「あ、そうか……」
「ん?なんか言うたか?」
馬の手綱を持つ翼宿に近づく。馬の太く張りのある首をそっと抱き込む。少しでも回復するように。
途端に光る黄色の光。
「奏多!何やってンの!」
体を放すと、ニコリと笑った。
「馬の疲労を回復させたのか。俺でも出来ないことを……つらくはないか」
「大丈夫よ、軫宿。これだと力の使いすぎにもならないみたいだし、みんなの馬も任せて」
残り四頭を次々に再生していった。これで、先に進める。