ふしぎロマンス15~護れるのなら~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今夜泊めてもらえるおうちは思った以上に中は広かった。美朱と2人で部屋に入って早々に休む。
シン……と静まり返る部屋に美朱の寝息が聞こえ始める。その音を聞いていると、私も眠りについた。
夢の中を行き来しない夢は久しぶりだった。ああ、また何か見せられるのか、と冷静だった。
真っ暗な中、立つ。その時、微かに耳に音が届いた。
グルルルルル…………
今のは……なに?
グルルルルル……
唸り声だ。こんな音を出すのは……あいつしかしない。
「どこ!どこにいるのよ!!」
すると遠くでポッとその場だけが明るくなった。
ぼんやりと見える影。その影が2つの人影だと認識すると、私の瞳孔は大きく開いた。
「あっ………あぁ………ッ」
柳宿が……獣のような風体の男に、胸を一突きされていた……。
「いやぁぁぁぁッ!!!!」
突然、耳に突く悲鳴に誰もが飛び起きた。
バタバタと美朱たちの部屋に入っていくと男たちはその光景に唖然とした。
「どないしたんや!!」
「みんなっ……」
美朱が奏多を抱きしめている。
それなのに、その奏多はずっと泣き叫んでいるのだ。
「いやっ……いやぁっ……!!柳宿……柳宿ー!!」
名前を呼ばれた柳宿が目を見開く。視線が集まるものの、なぜ名前を呼ばれているのか自分でもわからない。
「さっきからずっと柳宿を呼んでるの……」
「奏多、柳宿はここにいるのだ!」
「ッ……!ぬりこ……」
井宿が呼びかけると、その声に反応して顔を上げまわりを探す。
その泣き崩れた顔が、あまりにもいつもの奏多とは違って、その場にいたものは皆息を呑んだ。
なぜ、あそこまで泣いているのか。なにがそうしてるのか。誰もわからなかった。
「柳宿……!」
「えっ……なに……っ」
柳宿を目で捉えると、ふらつく足で駆け寄ってきた。一直線で柳宿に抱きつく。
何がどうなってこうなっているのか、抱きつかれた柳宿は固まった。
「なに、これ……?なんなのよ」
「……柳宿っ……ふっ……ぅっ……」
なおも泣すがる奏多に男たちは言葉を失った。
一番、冷静なのは美朱くらいだ。
「夢を……見たみたいなの」
「夢ですって?」
「きっと……悲しい夢」
奏多を様子見る。柳宿が腰に腕を回して抱きしめているからいいものの、奏多はぐったりと身を寄せている。
「柳宿、寝かせるのだ」
「そ、そうね……」
井宿が柳宿から離そうと体に触れた瞬間に、奏多は更に柳宿にしがみついた。
「え、えぇ~……どうしろって言うのよ」
「柳宿が運んでやったらいいんじゃねェの?怪力なんだし」
「出来ないこっちゃないけど……よっと」
鬼宿に言われて、柳宿は奏多を引き上げると、そのまま横抱きにした。
当たり前のように自然に自分の首にしがみつかれ、その顔の近さに面食らう。
「なんなのよ、もう……」
ハァと短く息を吐くと、柳宿は奏多を寝台に寝かせた。
「……ゔっ……は……離しなさいよ……」
寝台に寝かせたはいいものの、首に回した手をなかなか離してくれない。
こんな力、柳宿にとってはなんてことないが、ちょっと引き離そうもんなら奏多はまた嗚咽を漏らした。
「ふ……ッ……ぅ……ッ」
「ホンマ、どないしたんや……」
「翼宿、あんた見てないで助けなさいよ……」
柳宿はどうにか奏多の両脇に手をついて耐えている。だけど、さすがに長くは持たない。
この中腰にもなった腰がプルプルする。
「井宿っ、一緒に暮らしてたんだよね?どうしたらいいのかなっ」
「暮らしていた、と言っても少しなのだ。最近はどんな夢を見ていたのかさえもわからないのだ……でも」
「でも?」
「そばにいれば……落ち着くいてくるのだ」
「そばに、いるじゃない!でも離れないのよ……!」
井宿はどこか言いにくそうに口ごもる。軫宿が井宿の肩にそっと手を置く。それを見て、諦めにも似た声を出した。
「……抱きしめていたら、そのまま大人しくなるのだ」
衝撃的だった。まさか、そんなことを2人がしていたとは。
いや、奏多は眠っていたから知らないことなのかもしれない。でも、井宿が?この井宿がそんなことをしていた、とは。
言うように促した軫宿さえもさすがに驚いた。
「不安だから夢を見るのだ。不安だから泣く……。奏多はいつも何か不安がっていた。オイラは寝かせてあげたかっただけなのだ」
「不安……あんた、何が不安なの……?」
「……………」
柳宿は片方の手を持ち上げると、その髪をそっと撫でた。