ふしぎロマンス14~女誠国~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「!……見つけたのだ!」
井宿の声が遠くに聞こえた。足元がふらつく。あれ、まだこんなにも船は揺れてるの?
「おい!奏多!?」
翼宿が驚いた顔を向けてきた。その顔を見て、私のまぶたは閉じた。
「すごい熱です!」
「……すまん。他の船員を治したからすぐには治せんぞ」
「軫宿ー!来ないな時に何してくれとんのじゃ!!」
「さっき支えた時に熱かったから嫌な予感はしたのだが……中に運ぼう。力を使いすぎたのだ」
あ……なんか迷惑かけた……。平気だと思ったんだけど。やっぱり雨かな……。
こんな大雨の中に傘も刺さずにいたことなんてないもの。
ふわっ、と体が浮く感覚がした。心地いい揺れがしばらく続いて、力が抜ける。
すぐに体に雨が当たらなくなった。そしてどこかに寝かせられる。
ここ、船の中……?
「……軫宿」
井宿の声が少し離れたところから聞こえた。
「美朱達がいたのだ。引き上げるのに手を貸してやってほしい」
「……奏多はどうする」
思いの外、軫宿の声が近くに感じる。
「奏多には、オイラが“気”を送るのだ。それで少しはマシになるはずなのだ」
「“気”、か。それなら井宿が専任だな。ここは任せる」
「承知したのだ。軫宿、オイラが出てくるまでここには誰も入らないようにして欲しいのだ」
軫宿が「わかった」と言って出ていった。
目を開けてみる。井宿だけが見えた。
「……ち、ちり……?」
「……どうして起きているのだ」
「………………起きてちゃダメなの……?」
「やりづらいのだ……」
何を、言ってるんだろう。うっすら開けていた目で井宿を見る。
井宿が顔の近くまで寄ってきていた。
「でも、あとで知られて怒られても面倒なのだ」
「え?」
「きちんと話すから聞くのだ」
「う、うん……」
「……君は力も使い、雨に打たれすぎて熱を出して倒れたのだ。軫宿がここまで運んだのだ」
「そう……」
「軫宿はさきほど、別の船員を治療したので、すぐに君を治すことが出来ない」
「そう、なの……」
「しかし君はとても熱が高い。あとは君の回復力を高めるしかないのだ」
「………どうやって、高めたらいいの……?やり方教えてくれる?」
井宿と目が合う。
「……君に“気”を送るのだ」
「気……」
え、と……それは、つまり……。
「君に口付けする」
………くちづけ……私と井宿が?
ふらふらとする頭を使って考える。でも、出た言葉は意外とこの状況を受け入れていた。
「今、より……らくになる?」
「なるのだ」
「じゃ……お願いします……」
「わかったのだ」
ある意味、こうしてお願いするのも……熱があるから出来たことだと思う。
井宿が面を外した。久しぶりに見るその素顔をじっと見た。
どうしていたらいいのだろう。目はもう閉じた方がいいのだろうか。
どうにも居心地が悪くて、視線を外した。
井宿が手を顔に添えると、目の前に近づく井宿の顔に目をぎゅっと閉じた。
すぐに唇に感じる柔らかなもの。顔の角度を井宿の手によって変えられる。
唇を全て覆い尽くすほど、井宿は深く口付けてきた。
「ん……っ」
とても、温かい。ほわほわとした気分に陥った。
体の中から力が蘇る。
何これ……きもちいぃ……。
力んでいた体から力が抜ける。自然に腕を井宿の首に巻き付けた。
もっと……もっと欲しい……。井宿の力……。
大丈夫かな……こんなにもらって。
「ッ……」
ふいに井宿が唇を離す。もう終わりかな、と思って瞳を開けた。
「応えようとしてはダメだ」
「え……?」
「君は今、無意識にオイラに“気”を送ろうとしていた」
「……え?」
「オイラのことは考えなくていいのだ。身を任せてくれれば……」
そう言って顔を寄せてくる。
「それに……オイラは今、術を使ってるだけなのだ」
術を……使ってるだけ……。
唇が再び触れ合う。それなのに……どうしたのだろう。先程までの、やさしい温かみが感じられない。
今思うのは、ただ胸が苦しいだけ。
「ッ……ぅッ……」
ひっく、と喉がなる。熱いものが一筋、頬を伝った。
「奏多……?」
「もう、いらない……」
井宿の胸を押し退けた。
やばい。手が震える。
なにこれ……なんでこんな、苦しいのっ。
「もう、いらないわ……」
「……………」
「井宿からの“気”は……もう二度といらないっ」
体を起こせば、力が入った。
ほぼ最初のあの行為で回復力は上がったようだ。
立ち上がると井宿の横を逃げるように通り過ぎた。