ふしぎロマンス14~女誠国~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「なんつぅひどい雨や……!」
「気をつけろ!岩にぶつかるぞ!!」
甲板に翼宿と鬼宿が出てくる。彼らに続いて美朱と柳宿の姿も見え、一瞬で全員がずぶ濡れになった。
「翼宿……!出てきちゃダメ……!!」
大声で叫んでも豪雨にかき消される。次の瞬間、また空が一瞬光った。
ピシャアアアアアッ!!!
バリバリバリ………!!!
「…ッ……あッ……!」
襲いかかる電流の痛み。体にビリビリとした痛みに甲板に出ていたみんなも自分の体を抱きしめる。
「い……たっ……」
「青龍七星士の1人なのだ!雷をあやつる者がいる!」
「あん時のやつやな!?」
翼宿も角宿を追った時のことを思い出していたようだ。
「翼宿!そこにいないで!!」
「あぁ?なんや!聞こえへんぞ!!」
あーもう!ここからじゃ声が届かない!行って教えなきゃ!
翼宿の元へ行こうとした瞬間、腕を引かれた。
「あまり動き回っては危ないのだ!中に入ってろと言ったのが聞こえなかったのだ!?」
「井宿!でも、翼宿が危ないの!このままじゃ……っ」
「それなら余計に、ここにいてはいけないのだ!!」
ズルズルと井宿に引っ張られ、どんどん翼宿たちから離れていった。
まさに今、船に水が上がり込んでいる。翼宿が炎を起こして蒸発させようとした瞬間、ドバッと波に攫われた。
あーもう!ほら!
「井宿!助けないと!次は美朱が危ないわ!!」
「君は……」
「井宿!!」
放心状態の井宿を急き立てる。落ちた翼宿を助けようと、案の定、美朱も飛び込んでいた。
「あのバカ!!」
「待ってなさい、縄を降ろすから!!」
鬼宿が飛び込み、柳宿が縄を掴むところに私も加勢する。後ろには井宿もいた。
翼宿が縄にしがみついた所で、引っ張る。でも、船の揺れは一向に収まらない。しかもまた、波が打ち上げられる。
「ッ……!!」
波に足をすくわれそうになる。船にしがみつくと、体を強く抱きしめられた。
「井宿!?」
「もう一度波が来る!耐えるのだ!!」
「……!!」
その言葉のとおり、すぐに高い波がザバァッと一気に押し寄せてくる。
柳宿が波に攫われ、すでに海の中で鬼宿たちと流され始めていた。
「ゴホッ……柳宿!!」
「3人が、流されていくぞ!」
「軫宿、まずは翼宿を引き上げるのだ!」
縄を張宿も含めて4人で引っ張る。すぐに翼宿が甲板に引き上げられた。
「……もうダメかと思ったで……」
「今、海に雷が落ちたら感電死するのだ……!何とかくい止めなくては!」
なおも雨が降り続ける中、船の状態を確認に回る。
「お前らは中に入っとれ!!」
「僕は平気です!奏多さんを……」
「私も大丈夫よ!誰かさんこそ、もう流されないように中に入ってたら!?」
「誰かさんて、誰や!!」
「泳げないんだから、危ないでしょ!!」
「なんやてー!?」
「こんな非常時に言い争ってないで、平気ならこっちにきて直して欲しいのだ」
井宿の声にハッとする。見れば至るところが壊れて船の機能を失いそうだ。
「ごめん、井宿。今、直す」
「出来る限りでいいのだ。君に倒れられては困る」
「わかった!」
帆もたくさん、雷で燃えてしまった。直すために、その場から離れた。
「……翼宿」
「なんや」
「彼女は君を心配してああ言ったのだ。また海に投げ出されては……」
「わかっとるわい!そんなこと……よう、わかっとるわ」
「それなら良いのだ」
この雨の中だ。井宿たちの会話は聞こえず、ただただ船の修理に徹した。
壊れている箇所が多すぎる。辛うじて船は動いている状態に違いはなかった。
「まだ美朱達がどこにおるんかわからへんのか!?」
「どうやら雷雲が結界となっているのだ。妨害されて美朱達の気配を感じ取れないのだ!」
井宿が数珠に手をかけ、“気”を探る。雨や風が邪魔をして船が揺れる。集中も難しいようだった。
「張宿。流れが早いけれど、美朱ちゃんは無事だと思う」
「はい。僕もそう思います。柳宿さんと鬼宿さんが一緒ですから、どこかで耐えていると思うんです」
うん、張宿は賢い。その通りだよ。美朱は今、どこかの岩穴に入ってる。
どこ?その岩は、どれなの!?
雷雲がまたゴロゴロと唸る。
あぁ、もうあの音は嫌だ。ふらっと体が揺れた気がした。
「大丈夫か?」
軫宿が背中から体を支えてくれる。上を見上げて、わずかに微笑んだ。
「ごめん、船が揺れたから」
「そうは見えなかったが……」
確かに今、眩暈がした。でも今は何より、美朱たちを探し出さなくては。