ふしぎロマンス14~女誠国~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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先に宮殿についてみんなを待っていると、彼らは無事に無傷でやって来た。
すでに軫宿にも力が戻り、私の傷も完全に治してくれた。
事情を知った星宿によって、鬼宿の家族に治安のいい場所の家が用意された。
こういう事を一瞬で手配して案内ができるのは、さすが皇帝陛下だと思う。
案内を済ませ、鬼宿は家族に挨拶をした。
そして今、私たちは船の上にいる。
「あっはっは!最高な気分だなぁ!」
「よかったなぁ、たま……オレは最悪な気分や……」
「何だよ。まだ船乗っただけ……あーー!!さてはお前、カナヅチだな!?」
「ギクッ……」
翼宿、今……自分で“ギクッ”て言ったわ。モロバレすぎるって。ほら、鬼宿が面白がって船から落とそうとしてるし。
「みんなー、こっち向いてーっ」
いきなり“カシャッ”と言う音。
今までじゃれ合っていたと言うのに、こういう時はしれっとキメ顔になるところがおもしろい。
「美朱ちゃん、それ……」
「うん!ポラロイドだよ!」
「わー、懐かしい!」
薄々思ってたけど、美朱は私と時代のズレがある。
ポラロイドを常時持つという習慣がある人はかなりレアじゃないだろうか。
「せっかくだし、みんなで撮ろっ?」
「おーい!井宿も来ーい!」
「奏多も入るのよ!」
「えっ、私も?い、いいよ!私は!」
この写真に本当なら私はいない。
「当たり前じゃないー」
「9枚撮ってね。1人ずつ持っとくから!」
まさかこの写真に私まで入るなんて。張宿の隣にそっと立つ。
「ほ、ほんとに写って良いのかな……」
「笑ってるといいみたいなのだ」
後ろに立つ井宿が笑う。
うん、笑おう。せっかくの機会なのだから。
「行ってきます!」
「出航ーーー!」
船が動き出した。これで紅南国には暫く戻れない。
小さくなる星宿をずっと見つめた。
必ず無事に美朱に会わせるわ。帰ってくる時は……みんな一緒よ。
チラ、と柳宿を見た。
「ん?どーしたのよ」
不思議そうに見てくる柳宿に微笑んでみた。
「人の顔見て笑うなんて、なんなのよー」
そう言ってても、それは照れ隠しだとわかる。プィ、と顔を背ける柳宿の腕を取った。
「なんでもないっ。星宿がいなくて寂しいかなって思っただけ。いこっ、船なんて久しぶりに乗ったわ」
「……ったく、あんまりはしゃいで海に落ちたりするんじゃないわよ?」
……海に落ちる、か。
記憶の中にある、出来事を思い出す。気をつけてないと。
と、思ってたのに……。
「ふー…………うー………ぅぅ……」
絶賛、船酔い中……。
あまりに久しぶりすぎて忘れてた。私、乗り物に酔う性質(タチ)だった。
「あー……最悪や……全っ然、治らへん……おぇ」
「…………」
そうだった。翼宿も船酔いするんだった……。
「翼宿、平気?」
「な、なんのことやー?」
「……強がっちゃって」
「ちーっと中に行ってくるわ……こりゃたまらん」
「あ……」
船内に入るって、なかなか勇気がおありのようで。
私は無理だ。ここで風にあたって遠くを見てなきゃ、やり過ごせない。
「………はぁ………うー……ぁー………」
「…………」
「うー………揺れがきついー……」
「そんなにきついならいっそ吐いてしまうといいのだ」
「……えっ!?」
近くに誰もいないと思っていたのに、隣に腕を組み座り込んでいる井宿がいた。
その眼差しは遠くを見ている。
「いつの間に……」
「オイラはずっとここにいたのだ」
「何か見てたの?」
「……いや、何でもないのだ。……張宿、どうかしたのだ?」
ふと、後ろをパタパタと走り去ろうとする張宿に声をかける。
「なにか美朱さんの様子がおかしいとかで……髪紐を燃やした、とか」
「髪紐……?あの子、リボン燃やした!?」
しまった。船酔いですっかり思考回路がおかしくなっていた。
その時、井宿がピクリと反応する。
「井宿?」
「……“気”を感じるのだ……。前方から何か邪悪な“気”がどんどん近づいてくるのだ!」
井宿が言うように、それはすぐに船の上へとやってきた。すぐさま降り出す大量の雨。雨は嵐となり、船も大きく揺れだした。
「奏多と張宿は中に入ってるのだ!」
そう言われた瞬間、雷雲が突然現れる。
「ッ………!!!」
ピカッと一瞬明るくなったかと思ったらすぐに轟音が耳を貫く。
「わっ!!」
目の前の帆に雷が直撃した。轟音は体にも振動を与えた。
倒れそうになる体を井宿が支える。帆がメラメラと燃えている。
「角宿を追った時、雷が急に鳴り響いたのだ。これは……っ」
井宿は険しい表情をしてどす黒い空を見ている。
この空……雷を操る七星、房宿だ!!