ふしぎロマンス13~痛む心~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「こ、れは……」
「軫宿……っ……助けてっ……!」
壁で囲っていて暗かった。崩れたことで陽の昇り始めた光に部屋の中が明るくなっていく。
目の前の惨劇に、頭がおかしくなりそうだった。
「逃がさんで!!!」
「翼宿!深追いはよすのだ!もう気配がない!」
角宿と透は翼宿たちが来るとすぐに逃げたようだった。軫宿がおじさんの手当を始める。
私は子供たちに代わる代わる口付けをした。忠栄と春敬、結蓮は浅くだが息をし始めた。
よかった。命さえあればいくらでも再生できる。
それなのに……どうして玉蘭だけは目を開けないのだろうっ……!
「いやだっ……おねがい、おねがいだからっ……」
たくさん気を送った。何度も深く口付けて命が再生するように願った。
「奏多……」
見ると、軫宿が悲しく目を閉じている。
「どう、したのよ……軫宿」
どうして手を止めてるの。早く、治さないと……。
「もう……手遅れなのだ……」
「お前はようやったで……」
井宿……翼宿と何を言ってるの……?
手遅れ……?誰が?
「う、そよ……だって……」
「親父さんたちを奥に運ぼう」
私は……玉蘭を守れなかった……?
あんな、可愛く笑う子を……?
呆然としていると家の外に人の話し声が聞こえてきた。続いて人が入ってくる音。
「親父!オレだよ、帰ったぜ!」
ああ……。誰か、嘘だと言って……。
「親父……?……奏多!なんでここに……!おまえら……なん、だよ……これ……」
鬼宿と美朱、柳宿がやって来た。この状況を説明しようと軫宿が立ち上がる。
まだよ。まだ……私にやれることはある。守りたいのなら命をかける!!
「黄龍!私の命をあげるからその力をもっと見せてみなさいよ!返して!!玉蘭を!!」
地面に手を置き、一際鋭い先の尖った石を創り出した。
「奏多!?」
「何をするつもりなのだ!!」
「やめなさい!」
いやよ。やめられない。
怖いわ。とても怖い。
でもこの子達は……もっと怖い思いをした。
ドッ……!
手をゆっくり振り上げ、降ろした。鋭利な石が左胸に突き刺さった。
ゴフッと口から血を吐くと、それが玉蘭に降りかかる。
「「「奏多!!!」」」
「いやぁっ!!奏多さん!」
「軫宿、治せるのだ!?」
「……くっ……やってみるが……俺も相当力を使った後だ」
その声が聞こえる中、玉蘭の体に血が吸い込まれていった。
これは、奇跡が起きたのだろうか。
今……目の前で……その瞳がゆっくりと開く。
あぁ……よかった。
「ぎょく、らん……おはよう」
「お、ねえちゃん……」
玉欄の目をまた見れるなんて。
……なんでも、やってみるものだわ。
ものすごく疲れたけれど。
それからと言うもの私は動けず、されるがままになった。軫宿が出来る限りの手当をし、体に包帯の代わりとしてサラシが巻かれた。
血で汚れた体を美朱が泣きながら拭いてくれた。すべてが終わったあと、鬼宿が中に入ってきた。
「……なんで、1人で出てったンだよ……なんで、ここに……」
知ってたのか?こうなることわかってたのか?
そう鬼宿は涙声で聞いてくる。
「おじさんや、子供たちは……?」
「みんなっ……元気だ!お前が、守ってくれたから!」
「…………よかった……」
目から熱いものが流れていた。鬼宿も、私の横に膝をついて涙を流していた。
「ありがとなっ……ほんとに、親父と弟たち助けてくれて……っ」
鬼宿が部屋を出てから、みんなが押し寄せてきた。軫宿が止めても、ぞろぞろと。
「お前、めちゃくちゃやなぁ!」
「これほど驚いたのは初めてなのだ」
「……ごめん、夢中で……」
「奏多さん、あんまり無茶したらダメだよ!」
「うん。もう、ないと思いたい」
「あんた……」
「……ハイ、すいませんでしたっ」
柳宿がものすごく怒っているのがわかった。だから素直に謝った。起きられないから目を瞑るしか出来なかったけれど。
でも、すぐにふわっと体が包み込まれた。
「柳宿……?」
「……叩いたの謝りたかったのに……あんた、言わせない気なの……?」
「えっ……」
「あんたが……死ぬかと思ったわ……もう、あんな思いは嫌よ」
柳宿が泣いている。そっと背中を摩ると、大きな声を出して泣き出した。それはもう、周りもびっくりするほど。
「そ、そんな、泣かないで」
「あんたのせいだからね!またこんなことしたら、叩くわよ!!」
「え、あれめちゃくちゃ痛かったのに……」
「だったらやめなさいよ!もう!!」
未来は変わった。
良いのか悪いのかわからなかったけれど、鬼宿の家族を失わずに済んだのは、私にとって希望となった。