ふしぎロマンス13~痛む心~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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風……。今日もすごく吹いてる。
この風の音を聞いてると、また瞼が落ちてくる。
ほら、翼宿も軫宿も眠っちゃってる。
井宿だって……。
井宿も、寝てる?こんな無防備に?
「どうしてっ!?」
井宿に近づき体を揺する。それでも目を開けない。
こんなの変だ。井宿がこんなに爆睡するはずがない。
「井宿!起きて……!翼宿!軫宿!!」
隣で寝ている彼らを呼んでもピクリともしない。
嫌な……予感がする……!
弓を片手に結蓮たちが睡る部屋に入る。
「あ……っ……」
そこには今、まさに鬼宿の家族に手をかけようとする亢宿にそっくりな……顔。
「す、ぼし……」
彼がいた。
「へぇ、透さんの言ってた通りだな」
「え……?」
彼がふい、と視線を横にずらす。その視線につられて見ると暗闇から透が姿を現した。
「奏多……来てると思った」
「透くん……」
手の周りには風が巻きついている。それじゃあ、昨日からずっと聞いていた風は……彼が?
「風の音で声をかき消そうとしたんだけど……まさか起きてくるなんて。君には特に寝てて欲しかったのに」
なにを、言ってるのだろう。透くんは……角宿にさせる気なの……?
「透くん!どうしてっ……!!」
「奏多……人の思いまでは止められない。俺がどれだけ言っても彼の思いは……止められないんだ」
「彼の思い……」
角宿を見る。
彼は、亢宿を……双子のお兄さんがなくなったと思ってるんだ。
「角宿!亢宿は……ッ……!!」
頭が痛くなる。
これも言うなと言うの?そんなの言ってられないのに……!!
「亢宿はっ……アッ……クゥッ……!!」
「奏多、やめるんだ。君が壊れてしまう」
そんなこと……どうして言えるの……。どうして、こんな……非情な事が出来るの……。
「もう話はついた?そろそろ殺っちまいたいんだけど」
「ついたよ」
「させない!!させないよ!角宿!!」
すやすや睡る子供たちの前に立つ。こんなに大声を出しているのにみんなが起きないのは……あの風の音があるから?透は、そこまで風を操れるの?
「君に何が出来る?どうやって守るの?ここに来るまでにこんなにアザを作って……何をしてるんだ」
「……ッ……!」
気がつけば目の前に透がいて、私の頬に触れる。いつ動いて近くに来たのかわからなかった。
「透さん、そのまま押さえててよ。殺っちまうから」
「角宿、さすがにいつまでも朱雀七星を惑わせられない。気をつけて」
「やめて!!透くん、どいて!!」
「ダメだ。君にアレが当たったらどうするの。死ぬよ」
「それを子供たちに当てようとしてるのよ!?何考えてるの!」
「いいよ、それも運命だ」
「……!!」
私は手を振りあげ、透の頬を叩いた。されるがままに叩かれた透の目が……悲しみに歪められた。
「透くん……どうしてそんな……」
「君を護れるなら……俺は何だってする」
「なに言って……」
「ぐあぁっ……!!!」
ハッとした時には既に一撃がおじさんに襲いかかっていた。
「あ……や、やめてよ!!やめ……」
次々と目の前で角宿の武器が飛び交う。血が……飛沫(シブキ)を上げる。
「ちゅ、うえい……」
何が起きているの。こんなこと、どうして許されるの。
どうして私はここで見てるだけなの……!
ここに何をしに来たの……!!!
体がガタガタと震え始める。もう、何に震えているのかわからない。体が熱い。
地面が揺れ始めた。それは徐々に強くなって、透は思わずその場にしゃがみこむ。
それでも私は立っていた。
「やめてって……言ってるのよ!!!」
手を振り上げると、角宿の下の地面が盛り上がった。咄嗟に攻撃をやめ、その場を離れる。
「逃がさない!許さないんだから!!」
今度は自分の下の地面を触り、振り上げると手を前に突き出した。
たくさんの土が拳の大きさにまとまり、角宿に飛んでいく。
「くっ……なにっ……」
怯んだ隙に倒れている子供たちのそばに近寄る。すぐに1人ずつ口付けをした。
間に合って……!お願いだから……命だけは……!!
「させるか!」
私に向かって角宿が攻撃をしてくる。すぐに手を地面につき、私たちの周りにぐるりと壁を作った。
「なにっ……!?」
ドォン!ドォン!と打ち付ける音がする。壊そうとしてるのだろう。
でもその時、角宿のくぐもった声が聞こえてきた。そして、何かが弾ける音。
「奏多!俺だ!中にいるのか!?」
軫宿の声が……聞こえた。
よかった。起きてきたんだ。
ふっと、力が抜けると壁がモロモロと壊れて土に還った。