ふしぎロマンス13~痛む心~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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鬼宿の村についた時には、既に陽も沈みかけた夕方だった。
家を訪れると鬼宿のお父さんが出てきてくれた。
「これはこれは……如何なさったか」
「あの……」
来たものの、なんと言えばいいのだろう。命を守りに来た、なんて言えないし……。
思い悩んでいると、この場に居合わせていない鬼宿に気がついたお父さんが不安げに問いかけた。
「息子に……何か……」
「あ!いえいえ!元気に過ごしてます」
「今日は兄ちゃん一緒じゃないのー?」
鬼宿の弟、この子は春敬くんだ。彼が服を引っ張る。
その弾みで体が変に曲げられ、痛みが走った。
「………っ」
「すまない。我々だけ所用で地方に出ようとしていたのだがこの者が怪我をしてしまい……暫し、休ませてもらえないかと寄らせてもらった」
軫宿が私を支え、おじさんに話をつけてくれた。
おじさんも軫宿に治してもらったこともあり、すぐに一室を用意してくれた。
「感謝する」
「なんの。一室で申し訳ない」
「とんでもないですのだ。お借りしますのだ」
部屋に入ると軫宿は懐から小さな瓶を取り出した。
「それ……」
「太一君から授かった。治してやろう」
「だ、ダメ!!!こんなことに使わないで!」
「こんなことやて!?お前、顔も腕も足も傷だらけやねんぞ!!」
顔は……これは柳宿からのだ。
手を添えると腫れているのがわかる。でもこれは、仕方のないことだ。
「本気で叩かれたようだな」
「本気で怒らせちゃったから」
申し訳なさと心配されたくなくて少し笑えば、軫宿は呆れたように別の薬を塗ってくれた。
「にいちゃん……どこ……」
「ん?」
どこからか可愛い声がして周りを見れば、コソッとこちらを見ている小さな女の子。
「結蓮ちゃん。久しぶりだね」
「おねえちゃん。にいちゃんは、いっしょじゃないの?」
「ごめんね、今、結蓮ちゃんのお兄ちゃんは巫女様のそばにいるよ」
「にいちゃんと……あそびたかった……」
さすがにこのお願いは聞いてあげられない。3人も困ったように眉を下げている。
「あ、鬼宿はいないけれど……お兄ちゃんなら、ここにほら!」
「だっ!?」
「ほら、ほら!」
「ちょお……なんやっ!?」
「まさか……俺達に……」
ひきつる顔を見せる男どもに、にっこり笑ってやった。
さぁ、遊べ。
そう言わんばかりに。
子供たちの笑い声が響き渡った。
「奏多っ……お前ェ、あとで覚えとれっ!!」
「ハイハイ。翼宿にも懐いてくれたんだから喜んだら?」
「さっきからよじ登って来て、きっついねん!だーもうっ!登るなら軫宿にせぃ!」
「俺には既に2人登ってきているが……」
「さすが軫宿ね!登りがいがありそうだもの!」
そうなると……井宿は?
「だぁ~!結蓮ちゃん、もう勘弁なのだー!」
「やだー!もっとあそぶー!」
ちっちゃくなった井宿でリアルお人形遊びをしていた。
これは……面白そうなことを。
「楽しそうだねー」
「!?」
「あっ、おねえちゃんもやろー!」
「ふふふ。いいわよ~」
「だっ?君は怪我をして……や、やめるのだっ、何をするのだ!?」
「何って……結蓮ちゃんと着せ替えごっこだけど?」
サァ……ッと井宿の血の気が引くのがわかった。
逃げようとする井宿を押さえつける。
「まぁまぁ、これで結蓮ちゃんが喜んでくれるならお安いでしょ」
「奏多!君という人は……ッ!あっ、やめるのだっ!」
井宿は素早く印を結んだ。
ドロンッとわかりやすい効果音がしたかと思うと、井宿は元に戻って私たちから離れたところに降り立った。
「あっ、卑怯な!」
「そんなこと言われたくないのだ!!」
「もー、いいわよ。結蓮ちゃん、一緒に遊ぼー?」
「う……ん~………」
「あら?結蓮ちゃん?」
見れば目を擦って、とても眠そうだ。そっと抱き寄せると、結蓮はそのまま目を閉じた。
「お?こっちも寝たでー」
「子供は寝つきが早いな」
翼宿と軫宿が子供たちを布団に寝せる。井宿がやってくると、結蓮を抱きかかえた。
「奏多ももう休むのだ」
部屋に戻ればちゃんと布団が用意されている。
でも1組のみだ。
「え、私だけとか使えないよ。いいよ、雑魚寝で」
「んなことさせられるかい!」
「そうだ。しっかり休むのも大切だ。雑魚寝は慣れてないだろう」
「でも……前に私の外套と井宿の袈裟があった時は結構寝れたよ?」
「…………」
「…………」
「……また余計なことを言うのだ、君は……」
「え?あ、あれは雑魚寝に入らない?」
「お前ら……いつどこで、どんな寝方しよるんじゃー!!」
キーンと翼宿の声が耳に届いた。しかも、井宿には問答無用で布団に入れられる。
「おもしろいな、翼宿は。じゃあ、おやすみなさーい」
なおも突っかかってくる翼宿の声を布団を被って耳を塞いだ。
ごめん。もう、寝るわ。