ふしぎロマンス13~痛む心~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「あんた……自分が何したかわかってンの!?」
「…………」
「知ってたンなら……なんで言わないのよ!バカにしてんじゃないわよ!!」
違う。バカになんてしてない。
救いたい。私はずっと……あなた達を救いたいと願ってる。
「柳宿、よせ!陛下、柳宿を」
「あぁ。柳宿、こちらに来るんだ」
「お離しください!まだ話は……!」
「そなたは……奏多だけのせいだと申すのか」
「……ッ!」
軫宿がすぐに私の頬に手を当てようとする。でも私はそれを手で遮ると、柳宿に近寄った。
「言えなくて……ごめんね。教えてあげられなくて、ごめん。裏切ったも同然だよ」
「……奏多っ……あんたって子は……!美朱がどれほど傷ついたと思ってンのよ……!」
「うん。そうだね……私が、傷つけた」
「それは違う!断じてそなただけのせいではない!」
ああ……私は最低だ。
柳宿にもこんな苦しい事を言わせて、星宿の優しさを受けて……私は何も返せていない。
「柳宿が怒るのも無理ないから。私は……肝心なことは教えてあげられないんだもの。私もここにいる意味を見つけられないんだ……」
それは今回のことに限ったことじゃなくて……これからのことも……。
重い空気の中、美朱たちは戻ってきた。その中に亢宿はもちろんいない。
「奏多さん!?その顔、どうしたの!?」
あ、しまった。
自分の戒めとして治してもらわなかったけれど、これでは矛先が変わってしまう。
「ちょっと転んで……」
事情を知る星宿や軫宿は視線を外している。そこに柳宿がはっきりと前に出て言った。
「あたしが叩いたのよ」
「は!?柳宿が叩いたやてー!?お、おまっ……こいつは女やねんぞ!?」
「それでもねェ!腹が立ったんだからしょうがないじゃない!!あの青龍七星はどーしたのよ!」
「河に落ちた……あの急流じゃまず助からねェ」
鬼宿が言う。
あぁ、やっぱり……河に落ちてしまったのね。
亢宿の生死ももちろん覚えている。
「亢宿は……」
でもやはり、ここにいる人たちには伝えられない。
「……あんたがっ……あんたが殺し」
「それ以上は言わせないのだ」
柳宿の前に入り込み、私との間に立ち塞がった。井宿が少し声色を低くして呟いた。
「柳宿。その言葉は言うものじゃないのだ。言った方も、言われた方も……ずっとその言葉に支配されるのだ……」
「だからって……奏多が教えてくれてたらあのコだって……」
「奏多が先のことを話そうとして頭に激痛が走っても話して欲しいのだ?そうまでして君は先のことが知りたいのだ?」
「…………」
「オイラ達は、奏多がいなければ美朱を護れないわけではないのだ」
「そんなの……わかってるわよ」
柳宿が落ち着いたところで、井宿が離れる。井宿は私に視線を送り、頷いた。
そっと柳宿に近づくと、その今も震える肩を見て迷ったがその体を抱きしめた。
「ちょっ……何すンのよ……っ」
「ごめん、柳宿……役たたずで、ごめんっ」
「…………」
「柳宿にこんな思いさせて……ごめん」
ぎゅっと抱きしめると、ようやく柳宿の体から力が抜けた。
その後、まだ火は燃えているからと美朱と七星は中に入っていった。
残った私は空を見上げた。
きっと今頃は……太一君がみんなの前に現れているだろう。そして、朱雀を呼び出すには“神座宝”のことを聞かされる。
それから……。
“北甲国”
脳裏によぎった瞬間に体が震え出す。恐ろしすぎて考えたくもないこの先の未来。
これから先は……失敗は許されない。
そうだ。
救いたい命があるのなら……こうしてはいられない。
部屋に戻って弓を担ぐ。必要なだけの荷物を持って、私は出発した。
馬は乗れない。歩くしかない。そして、時間はない。
急がなくては……。亢宿を失った彼の憎しみが……
あの家族に降りかかる前に。
「何?奏多がおらんじゃと!?」
美朱に話し終わった太一君が次に奏多を呼べと言った時、すでに奏多は宮殿を旅立っていた。
「井宿、追うのじゃ。あやつは何をするかわからん。一人にしてはならん」
「はいですのだ」
井宿は朱雀廟から出ると、星宿にことの経緯を知らせた。
「なんと!井宿だけでは危険だ。誰かもう一人……」
「俺が行こう」
「軫宿か。そうだな。治癒できる者は心強い。よいな、井宿」
「オイラは構いませんのだ」
「オレも行くで!」
「翼宿はいらないのだ」
「なんでやねん!!」
「奏多を連れ戻すだけなのだ」
「じゃかしいわ!行く言うたら行くで!!」
「井宿。翼宿も即戦力になる。連れて行くといい。無事に帰ってきてもらわねばならぬからな」
「……わかりましたのだ」
井宿は奏多の“気”を探ってみる。まだそう遠くはない。そんな気がした。
馬を3頭用意し、3人は勢いよく走らせた。