ふしぎロマンス12~錯誤する想い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「早く奏多と美朱を宮殿の中へ!」
「あ、星宿!これ……」
「……これは……!どうしたのだ、奏多」
星宿に手渡したのは四神天地書だった。
「心宿から奪ってきてくれた人がいるの。これでもう、倶東国に行かなくて大丈夫だよね」
「あぁ。そうだな。本当に、そなたはすごいな」
そこに翼宿が軫宿を連れてきた。
「軫宿!早う、治したってくれや!こいつ、背中に食らっとんのや!!」
「翼宿……」
「すまない……美朱を治した。暫く力が使えない」
「なんやて!?ちょっとくらい出けへんのか!?」
「すまない……」
軫宿が目を閉じる。
ひらひらと手を振って、ゆっくりと立ち上がった。
「私も力を使いすぎただけだから。軫宿、普通に診てもらえたらそれで大丈夫」
「……力が戻ったらすぐに治そう」
「ありがと。ほら、みんなも戻って着替えよう。びしょ濡れじゃない」
いつから外にいたんだろう。みんな、じっとり服が体に張り付いている。
「あたし達は良いのよ。軫宿!早く連れて行ってあげて!」
「ああ」
軫宿が前に立つ。手が伸ばされ、簡単に背中に担がれた。
「ごめんね、軫宿」
「いや、気にするな」
そのまま部屋に入り、軫宿は素早く背中を手当てを開始した。
力を使っていないというのに、診てもらえるだけで痛みが軽減したような気がした。
「よし、これでいいだろう」
そういう軫宿の表情が少しつらそうに見えた。
「軫宿……まさか」
「お前もがんばったんだ。男の俺が頑張らないでどうする」
使ったんだ。力を……。
1日にそう何度も使えないはずなのに。
「ありがとう」
「構わない。それよりも………それは……鬼宿にされたのか……?」
服を手直ししていると軫宿が目を逸らして聞いてきた。何のことかと思ったら、手が首元を指す。
そうされたかといって見下ろしたところで首なんて見えるわけがなくて。
「なに?」
「……それは跡、だろう?吸われたのか」
…………跡?
跡ってまさか………。
「げっ」
「服を変えた方がいいだろうな。このままでは丸わかりだ」
「どうしよ。隠さないと」
「何か借りてこよう」
軫宿が部屋を出ると、代わりにぞろぞろと七星が入ってくる。
「どないや!?少しはええか!?」
「ちょっと、翼宿!軫宿はまだ入るなって言ったわよ!?」
「そんなん聞いてられるかい!」
「……あとで軫宿に怒られても知らないのだ」
「軫宿なんて怖ないわ!」
「あ、あの……奏多さんが……」
「なんやねん、張宿!お前かて心配やろうが!」
「それはそうなんですけど……でも奏多さんが……」
「奏多がなんやねん!!」
………ほう。いいわね、あんたたちは。
着替えも済んでるみたいねぇ。私はまだこれからなのよ?ええ?
「……オホホ、やだわ。奏多が言わんとしてることが顔見たらわかるって……あたし達、すごくない?」
「………ここはひとまず退散するのだ」
「そ、それがいいですね」
柳宿に井宿、張宿は察してくれたというのに……翼宿はずっと怖い形相でこちらを見ている。
なんで私が睨まれないといけないのだろう。
「お前……それ、なんや」
「ちょっと翼宿!早く出るわよ!」
「……お前のその首についとるんは、なんや!!」
「あんた、何言って……ッ……奏多、それ……!」
全員の視線が集まる。
だから何だって……ってぇ!!
めちゃくちゃ見えてるの忘れてた!!
すぐその後、軫宿が服を手にして戻ってきたけれど、それはもう意味を成すことはなかった。
「ハァ……もういないかな?」
「どこ行く気ィや」
「わぁ!!なんでまだいるの!?」
着替えをするから、と一旦全員出てもらった。
ゆっくり、ゆっくり着替えて、そろーり、と部屋から顔を出した。
それなのに……全員部屋を出たところに壁に背を預けて座り込んでいる。律儀に一列に、だ。
「……話すことなんて何もないからね」
「話す気ィになるようにしたるわ」
「ちょっと!私、けが人なの!休ませてくれてもいいよね!?」
「軫宿が力使ったんは知っとるで。そもそもけが人がどこ行こうしとんねん」
「うっ……」
こういう時の翼宿、なんで頭が切れるかなぁ。
「ほな、行こか」
「えっ?」
柳宿を見れば苦笑いを浮かべている。
その間に翼宿がおりゃ、と肩に担ぐと、問答無用で歩き出した。
「翼宿!?」
ズンズンと歩かれる。
顔を上げ、後ろからついてきている七星に目をやった。
「なにこれ!どこ行ってるの?」
「うーん……それはねェ……」
「井宿!翼宿をどうにかしてよ!」
「君はこうでもしないと話さないのだ」
「張宿!!」
「ご、ごめんなさい……」
「わあ~!!軫宿!軫宿はどこ!?」
「うっさいねん!黙っとれ!軫宿は休憩中や!!まだ話したいんなら……ここで喋れや!!」
ストン、と下ろされる。反動でペタン、とその場に座り込んだ。
顔を上げると、目の前には星宿の姿があった。
「ええと……」
「皇帝はんの前やったら話せるやろ?」
「うわー……」
今回は翼宿の方が一枚上手だった。