ふしぎロマンス2~夢と出会い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どのくらい経ったか、ふいに井宿の声が止んだ。
「待たせたのだー」
先ほどとは全く違う声質に思わず笑ってしまう。
「終わったの?」
「だっ!」
「念を込めたもの、どうするの?」
「町の人に買ってもらうのだ。邪気がよらないように少しばかりだが念を送り込んだものなのだ」
「へー、そんなことも出来るんだね。お守りみたいなものかな」
「お守り、と奏多の世界では言うのだ?」
「思ってるものが同じなら、たぶんね」
井宿と来た道を戻る。
少し視野が開けた広場で、先程はなかった人だかりが出来ていた。
「あれは何?宮殿はまだ先よね」
「だ?あれは賭博(とば)なのだ」
「何を賭けてるの?」
「射的のようなのだ。射る者が何番に当てるのかを賭けるのだ」
「そう……」
見ると挑戦者が矢を当てる番号を宣言し、それに当たるか当たらないかを賭けているようだ。
「ねえ、井宿。あれで稼いでも……井宿は喜ぶ?」
「だ?」
「私、弓道部だったの」
「弓が出来るのだ?」
「体が覚えてるなら」
前を見つめたまま、井宿に話しかけた。
的はそんなに遠くない。
出来るかはわからないけれど……
学生時代は弓を扱えることが自慢だった。
「やってみるのだ」
「ほんと?信用してくれるの?」
「もちろんなのだ」
井宿が笑った。
その笑顔を見て、私は決心がついた。
「挑戦してもいいですか?」
「お嬢さんがするのかい?」
「はい」
人混みをかき分けて、おじさんに声をかける。
私の声にそこにいた誰もが笑い出した。
「あんな子が矢を射ることが出来るのかい」
「よし!外すに銀10両だ!」
「俺は銀15両!」
口々に皆が「外す」に賭ける。
見かねたおじさんが声を上げた。
「みんな外すに駆けちゃ、賭け事になるかい!誰かいねぇのか!?」
今までガヤガヤしてたというのに、一斉にシーンとなった。
まったくもって失礼な話だ。
「オイラは“当たる”に銀1両なのだ」
「兄ちゃん、賭け金少ねェよ!」
「全財産なのだー」
静けさの中の高めの声。
振り返らなくてもわかる声の持ち主。
おおー!と、その場にいる者がどよめいた。
「おじさん」
「なんだい?やめるなんて言わないだろうねぇ」
「言わないけれど……あれ、ど真ん中に当てたら、賭け金2倍ね」
この言葉にまた、どよめいた。
うるさいわ。
見てなさい。
血の滲む努力をした過去の私の努力をバカにするんじゃないわよ。
キリキリキリ…………
手に馴染んでいない弓を構える。
あぁ、なんて弓なのだろう。とてもいい弓とは言い難い。
それに筋力も衰えている。
腕がプルプルする。
それでも……
集中しろ……!
バシュッ…………!!!
「だっ……やったのだ………」
矢は見事に
“1”
と書かれた真ん中に当たった。