天蓬はガチャリ、と部屋のドアをゆっくり開け捲簾の後ろで怯えながら隠れている雪梅を見てハッとした様な表情を見せた。

「ヤケに騒がしいと思ったら…。捲簾、貴女の後ろに隠れている女性…上層部の娘さんじゃないですか…」

「…捲簾大将が…助けてくれて…」

小さな声で答えた雪梅を一目見てから天蓬は捲自分のポケットの中にある小さい箱から煙草を出して火をつけた。

「なるほど…捲簾、上層部の方々が貴方を探してましたよ」

「俺留守でーす」

捲簾はヘラヘラと笑いながら言うが天蓬の表情は何一つ変わらなかった。事はどうやらまずい事になっているらしい。

「あの…私…戻らないと…お父様に怒られちゃう…」

「そっか…じゃあまたな」

ビクビクと震えている手でドアノブを引こうとする雪梅を見て天蓬は彼女の妙な様子に気づく。

「どうかしましたか？」

「い、いえ…なんでもありません…」

早足で去っていく彼女の後ろ姿を捲簾はただじっと見ているのだった。



雪梅は重い足取りで誰も居ない廊下を歩き、家族がいる部屋の扉をゆっくりと開け始める。

前には鬼の様な形相をした父が目の前にたっていた。

雪梅の父は彼女に近づき、頬を思い切り殴る。