第十七章 博士の本性
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『今日はやけに張り切っているな。ご馳走ばかりじゃないか』
『あら、いやね。貴方忘れたの?今日はエルシャールが家に来た日よ。あれからもう30年以上経つなんて信じられないくらいあっという間だったわ』
『そうか、もうそんなになるか』
『とっても幸せだったわね』
『全くだ』
「……!!」
「おぉぉぉまぁぁぁえぇぇぇ!!」
映し出されたのは、庭でささやかなパーティーをしているレイトンの両親の姿だった。
再度暴れ出したレイカに必死にしがみつくレミ。
一拍置いてルークも同じようにしがみついたが、その脳裏にはいつかのサーハイマンの言葉が思い起こされて不安で押しつぶされそうだった。
一時停止ボタンを押したブロネフは、笑みを深くしたままモニターからレイトンへ視線を投げた。
「実に幸せそうな夫婦じゃないか。この二人にこれから何が起きるのか興味がないかね」
「何をするつもりだ!」
「タージェントの一員になると言えば、何も手荒な真似などしないさ」
「レイトン君、耳を貸してはいけない!この映像はフェイクだ!」
「白々しい男め!レイトン、そのような世迷言を信じればコイツと同じ目に遭う「あぁぁぁぁ!!母様の特製チキンじゃん!」誰かソイツを黙らせろ!!さぁ、選ぶのだレイトン。お前の答えを聞かせろ!」
「……」
レイトンは選択を迫るブロネフから視線を外し、レイカが見入っているモニターをもう一度見た。
モニターに映る、最愛の両親の姿を。
そして、数秒目を瞑り、ブロネフを真正面から見据えて口を開いた。
「私はタージェントになどならない」
レイトンの選択は一瞬、室内の音を全て消し去った。
突然訪れた静寂にレイカもレイトンへ振り返った。
その答えにブロネフは笑みを消したが、喉を鳴らす含み笑いから次第に大きな笑い声を上げ始めた。
「そうか、お前は両親を見捨てるのか。これを見てもなお、そう答えるのか!」
モニターを勢いよく指し示すブロネフの再確認にも動じず、レイトンは答えを変えることはなかった。
「これでは私の誘いになど乗るまい。お前はタージェントに加えるよりもそのままにしておいた方が面白そうだ。「フラれただけなのに何言ってんだ」エッグはくれてやる!「そっちが負けたからねぇ」だが、どんなにお前が抗おうとも私はまたお前の前に現れるぞ!!「いや、現れんなよ」
「〜っ!貴様は黙っていろ!!」
合いの手のように野次るレイカの口を、顔を青くしたレミが咄嗟に手で押さえたが、ブロネフは怒鳴った後、そのまま部屋の奥へ消えていった。
部屋の主の退出で緊張が解かれたレミは大きく息を吐いて、悪びれる様子のないレイカを解放した。
サーハイマンも怒りの矛先がいなくなったことでようやく冷静になったが、最後に忌々しげに眉をひそめた。
「どこまでも卑劣な…」
「何で先生に絡んでくる人ってまた会おうとしてくるわけ?」
「さあね」
「そんな…先生、なんてことを!」
ケロッとしているレイトンの服にルークが掴みかかった。
レイトン夫妻の安否を気遣って訴えるルークを安心させるようにレイトンは彼の肩に手を置いた。
「ルーク、落ち着いて聞いてくれ。あの映像は今のロンドンじゃない」
「えっ…?」
「我が家の特製チキンはあるパーティーの時にしか出ないんだ。そしてそのパーティーは、つい先日行われたばかりなんだよ。残念ながら私たちは出席できなかったけれどね。夜には母から電話があって、その一部始終を楽しそうに報告されたよ。無事は分かっているんだ」
「世の中、何が幸いするか分からないものだ」
「なあんだ、そうだったんですか…」
ルークはそれを聞くと緊張や不安から解放され、やっと肩の力を抜くことができた。
「しかし博士が叫んでくれなければ私は動揺を抑えきれず、ブロネフの話を鵜呑みにしていたかもしれない。ありがとう、博士。感謝します」
「ね、なんか感情昂ってるヤツが隣にいると逆に冷静になれるもんね」
「…それだけは君に言われたくないな」
やれやれとメガネのブリッジを上げながら、サーハイマンはブロネフの書斎机に置いてあったエッグを取ってきてアーリアへ手渡した。
受け取ったアーリアは両手に収まるそれをジッと見つめる。
「これが、最後…」
「アーリア…」
「私、聖閃石を解き放ちます」
力の解放は外で行いましょうと、アーリアにしては珍しく先陣を切って部屋の外へ歩き始めた。
その顔つきは、数日前の不安や迷いが覚悟に変わったようだった。
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