第十六章 ナゾ解かぬ者、ナゾに泣く
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最上階を目指しエレベーターに乗り込むと(ナゾは先生が解いたらしい)、先ほどと同じように沈黙が始まった。
たぶん各々考えたいことがあるんだろう、あたしも頭の中を整理したいと思っていたところだ。
そんなエレベーターの駆動音が支配する空間で口火を切ったのはアーリアだった。
「それにしても大きな建物ですね。こんなに大きなアスラントの柱を隠しきれるだなんて…」
「自らの成し遂げた偉業を見せつけているつもりなのだろう。どこまでも品のない男だ」
サーロインさんの小言に、レミの小さく息を吐く音が聞こえた。
アーリアは特段気にしていない様子だったが、何かを考え込むように眉を顰めて視線を足元へ落とした。
「私自身、アスラントがこれほどの文明だったとは知りませんでした。もし…この世界の誰かがアスラントの全てを解き明かすなら、私は…」
「アーリア、嫌なら逃げてもいいんだよ」
「え…?」
「レイカ君、何を」
アーリアの酷く思い詰めた表情を見ていたら思わず言葉が出た。
それに驚くアーリアと無表情ながらもお前何余計なこと言ってんだって目をするサーロインさん。
「ここに来てからアーリアずっと不安そうだよ。みんなアスラントの謎解きたさに励ましてるけど」
「な、謎解きさにって…そんなことないですよ!」
少し言い淀みながらそう言うルークをはいはいと適当にいなす。
まぁ、ルークはそうかもしれないけど若干1名、確実に下心で励ましてるヤツはいる。
かくいうあたしも今の発言に下心がないと言えば嘘になる。
だけど、アーリアが先に進むことに迷いがあるのであれば、あの神殿へ向かうことを阻止できる。
それはフラグクラッシャーとしては願ってもない最高の展開だ。
「でも私は、アスラントの使者で…」
「あたしはアスラントの使者じゃなくて、アーリアに聞いてるんだよ」
「アスラントの使者じゃない、私?」
「アスラントの使者っていうのは誰かに指示された役のことでしょ?その全てがアーリアってわけじゃない」
「………」
「少なくとも、レイカの最強の勘を信じている君は、アスラントの使者ではなくアーリア自身だよ」
悩むアーリアに先生が助け舟を出してくれた。ナイス先生!
その言葉に何か分かったのかアーリアはハッと顔を上げた。
「もしアーリアがその使命を全うしたいなら、あたしも協力するよ。でもその使命がアーリアを苦しめているなら…」
「レイカさん…」
「大丈夫。どんな答えでもあたしはアーリアの味方だよ!」
結局はこれだ。
アーリアの悩みや不安を解決したい。
こんな幼気な美少女が一生懸命考えて考えて思い悩んでいるんだ。ここで力にならないなんて江戸っ子じゃない!
すると話を聞いていたルークとレミが、僕も!私も!と味方に加わった。
目を見張ったアーリアは2人を見たあと、少し照れたように眉を下げてあたしを見た。
「…考えてみます。記憶が戻ったら答えが出せそうな気がするから」
「うん」
はーい、そこのメガネさん。不満そうな顔しないでくださーい。
みんな(一部を除く)で決意新たに気を引き締めるとエレベーターが最上階へ到着した。
しかし、そこは何故か屋上でビルの高層階特有の突風が全身を包んで灰色の空が間近に見えた。
何で1回外に出る必要があるんだ。雨降ったら濡れるし危ないだろ!
先生は風で飛ばされないように帽子の鍔を掴んだまま、目的の部屋を見上げて口を開いた。
「ここが、ブロネフの部屋…」
「うぅっ、緊張してきました」
「エッグはあの扉の奥です」
「その前に絶対通してくれなさそうな人いるけどね」
いかにもボス部屋ですという感じの部屋へ続く階段の前には、山吹色のスカーフをつけた黒服の男が立っていた。
ソイツは電撃のような髪型の白髪と顔の中央を横一閃に走る大きな傷痕が特徴的で、今までの黒服とは違って只者ではない雰囲気を纏っている。
それに心なしか掛けているサングラスまで他の黒服たちより立派なもののような気もする。
そうそう、ボス部屋前にはこういう準ボス的なのが立ち塞がりがちなのよ。
「我らがボスに会いに来たか。エルシャール・レイトン!」
「お、お前は誰だ!」
「子供に名乗る名前は無い」
ルークが果敢に名前を尋ねるとその質問はバッサリ切り落とされ、本人はぐぬぬと怯んだ。
こんな個性の塊のような見た目なのに名乗らないとか…コイツなかなかの強キャラだぞ。
「お前たちがブロネフ様と会うに相応しい者かどうか、試させてもらう」
グラサンはパキパキと指の関節を鳴らし始めた。
なんだぁ?拳か?こっちには破壊神レミ様がいるんだぞ?
あたし達はグラサンの出方を伺って構えるも、ヤツが拳を構えることはなく、サングラスのブリッジを押さえてこちらを見たまま動かない。
「ふむ…何、75問以上ナゾを解いてないだと?」
「いやいや、何問解いたかは知らないけどそのくらいはやってるでしょ………ん?」
グラサンの視線はあたし達、というよりあたしに向けられている。
…もしかしてみんなで75問じゃなくて、個人でってこと!?
というかあたしじゃなくてもそんな数のナゾ、誰も解いてないだろ!
「その程度でブロネフ様に会おうというのか?ボスを幻滅させるような事はするな。75問以上のナゾを解いてくるんだな」
「ちょ、ちょっと待て!こういう時は普通みんなで75問以上じゃない!?しかもなんであたし!?」
「厳選した結果だ」
「何を厳選したらそうなるんだよ!」
「それにどうしてレイカさんが解いたナゾの数が分かるんだ!」
声を荒げるあたしに乗っかって序盤で一蹴されたルークがグラサンを勢いよく指差した。
いいぞ、言ってやれ、きっとハッタリなんだ!
するとグラサンがどこか誇らしげに顔を僅かに上げて、サングラスが雷の光でいい感じに輝いた。
「我らタージェントが誇る最新テクノロジーを駆使したこのサングラスがあれば、誰がどれだけナゾを解いたかを分析することができる」
「驚くほどテクノロジーの無駄遣い」
ドヤるグラサンのサングラスを見て、隣で先生がほう…と感嘆の声を漏らした。こっちはこっちでよくわかんない技術に興味持っちゃってるしよぉ!
そしてこの混沌とした空気の中、レミが恐る恐るグラサンに質問を投げかけた。
「ちなみに、今何問なの…?」
「3問だ」
「うわあああああああ!!」
非情な宣告にあたしは大声を上げたまま両耳を塞いでしゃがみ込んだ。
聞こえない聞こえない!3問ってなんだよ!あと72問も解かないといけないの!?
こうなったらやることは1つ…とゆらりと立ち上がってグラサンを見据えた。
「これはもうアイツを物理的に倒すしかない…!」
「いや、それではタージェントと変わらない」
「この際いいよ変わらなくて」
「なお、今まで解いたナゾに再挑戦したり内輪で出し合うのはナシだ。考古学者なら世界中を探せ」
「どう見ても考古学者じゃないだろ!」
一応呼んだのアンタらのボスだよね!?あたし達のこと待ってんじゃないの!?
もはや殺意が芽生え、せめてあのサングラスだけでもかち割ってやろうと拳を握ると、先生に右肩をガッチリ掴まれた。
「仕方ない。ここは一旦引こう」
「…嘘でしょ。本気であと72問解きに行くの…?」
自分でも分かるくらい血の気の引いた顔で先生を見ると、ちょっと楽しげに微笑まれた。
あ、この方、まだ見ぬナゾに心躍らせていらっしゃる…
絶望に打ちひしがれてフリーズしたレイカを連れて、一行は無言のままエレベーターへと引き返していった。
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