第十六章 ナゾ解かぬ者、ナゾに泣く
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さっそくエレベーターに乗り込み、ボタンを押すと思いの外ゆっくりと上昇しだした。
それについて口を出そうとしたが、おそらくサーロインさんのお小言が始まるきっかけになるだろうと思い、口を閉ざした。
静かな空間がイヤだから誰かなんか話題出せと念を送っていると、ルークが重い口振りで沈黙を破った。
「タッコウさん、大丈夫でしょうか。タージェントなんかに任せて…」
「力を抜きたまえ、ルーク君。タッコウ氏は逃げ延びるさ」
「僕、心配です…」
ここに来てタッコウさんの話する…?
まぁ、心配は心配だけど、どちらかと言えば危機的状況なのはこっちだ。
タッコウさんについては特に思い入れがないので、ルークとサーロインさんの会話を無言で聞いているとそこに先生も加わった。
「タッコウさんの話では、他にも捕らわれた考古学者がいるようですね」
「使える人材は手元に置いておきたいのだろう。アスラントのナゾを解く『駒』として」
「あんなヤツの手下になるなんて学者さんもおかしいですよ」
「組織への所属を拒んだ者は、家族もろとも存在を消される」
『私の娘が生きていたら―――』
『え、もしかして奥さんも…?―――』
『タージェントって言葉だけであからさまに私怨がありますみたいな感じだったサーロインさんが、―――』
『何があったか知らないけど相当根に持ってるなぁ―――』
『ブロネフの命令さえあれば、罪のない女子供ですら手に掛ける』
サーロインさんのその一言は、あたしの中で不明確だった部分を瞬時に呼び起こした。
まるで鈍器で殴られたかのようなそのショックに唇が震えた。
しかしサーロインさんは相変わらず淡々と話を続けようとするのでさらにしんどくなっていく。
「家族を想うようなまともな人間がアスラント文明を研究するためには………レイカ君、察しはいいがこの狭い空間で落ち込まないでくれ」
あたしは耐えきれず隅の方に移動し、壁に頭を預けた。
無理だよぉ、点と点が見事に線になって察せないほうが難しいもん…
そりゃあ建造物にだってウザいくらい小言出るよね…
「…サーロインさん、タージェントぶっ潰そうね」
「君が言うと冗談に聞こえないな」
「タッコウさんはタージェントをあるべき姿に戻してほしいって言ってなかったですか?」
「え、あれって潰してほしいってことじゃないの?」
タッコウさんの肩をやけに持つルークは、どうですかね…と首を傾げた。
いや、こんな因縁があるならさすがにサーロインさん優先だろ。
「潰さないってことだったら、こんな暴虐に染まりきった組織を元に戻すより、解体して1から作り直したほうが絶対いいと思うけど。考古学を研究するのにわざわざタージェントである必要はないでしょ」
そんなに組織で研究したいんなら解体した後で有志でも集えばいいじゃん、とタッコウさんの願いをいい感じに拡大解釈した。
そもそもなんであたしたちがあの人の頼み事に協力しないといけないんだ。怪我人と言えど他力本願すぎるだろ。
落ち着くためにふうと息を吐くと周りがやけに静かに感じて、顔を上げるとみんながきょとんとした顔であたしを見ていた。
「な、なに…」
「いや、君の正論は珍しいなと思って」
「いつもド正論ですけど」
「レイカさんがマジメに話すと、何か変な感じです…」
「なんで引いてるのかなルーク君」
明日は槍が降るなと真剣に考え込むレイトンと両腕をさすって気味悪がるルークに青筋を立てて苛立つレイカ。
場所に関わらずいつもと変わらない3人の様子に、サーハイマンとレミは苦笑いを浮かべて見守ることにした。
揉めている内にチンと小気味よい音が鳴ってエレベーターの扉は開かれた。
そこはちょうど柱の頂上の階で、柱の先には半円型のアーチが永久運動装置のように周回していて、それを追っていたら目が回りそうになった。
「アーリア、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫。けど、なんて強い力なの…」
ルークとアーリアの会話が耳に入り振り返ると、アーリアが不安そうに胸の部分をぎゅっと押さえ俯いていた。
2人の近くにいた先生もアーリアの様子に気遣い声を掛けた。
「また古い記憶が蘇ったのかい?」
「えぇ、忘れていた使命の記憶、私がアスラントの時代にいた頃のこと…皆さんとの思い出とは違う感覚です。懐かしい…けれど、けど…何故か遠くて、心細いの」
「僕たちがついてるよ。一緒に頑張ろう」
「ありがとう、ルーク。レイトン先生、私…頑張ります。皆さんに、メッセージを伝えないと」
ルークに励まされ少し笑顔を取り戻したアーリアは柱へ向き直った。
柱を見つめるその瞳は、どこか揺らいでいるようにあたしには見えた。
「…それでは、読みますね。『深遠なる知性に辿り着きし者よ。我らは永き栄華の果てに全てを手に入れた。我らの手に入れし最後の答え…そは、何ぞ。人の命を生き、神殿へ辿り着きし者よ。そなたらの胸より生まれし答えを使者の胸に差し出すがいい。そなたらの答えのままに、我らが文明の英知を授けよう。世界を変える、最後の秘宝を』」
内容は全くわからんけど、クソデカ不穏フラグが立ったことだけは分かった。
世界ってなんだよ、過去の遺物の分際でどういう規模してんの!?
もう絶対良くないことになるよ、最後の秘宝…
100パー悪い方向に使われる流れだよこれ…!
後方で頭を抱えるレイカの一方、レイトンとサーハイマンもまたメッセージの内容に深刻そうな表情を浮かべた。
「最後の秘宝…この柱にそんなメッセージがあったなんて」
「ここに書いてある事が本当なら、アスラントは私たちに恐るべき脅威を遺したことになる」
「…脅威?どういう意味ですか?」
メッセージの意味に深くまで理解が追いついていないレミとルークは、メモを取る手を止めてレイトンを見た。
するとレミに答えるようにサーハイマンが会話に加わった。
「私たちがどんな答えを出すかでアスラント文明が授ける最後の秘宝は姿を変える可能性があるという事さ」
「姿を変える秘宝…一体、どんなものなんでしょう」
「私たちは、天候や海流すら制御するアスラントの技術を目にしてきた。世界を変える秘宝ならば、その影響は一つの町どころか、世界中に及ぶ可能性もある。ブロネフの目的が何であろうと、『世界を変える最後の秘宝』は間違いなくヤツの力となりうるという事だ」
「みんな、急ごう。エッグをブロネフの手に渡したままにはしておけない」
先生のその言葉に大きく頷いたルークとレミ。
容赦なく先に進むみんなに付いていこうとしたが、複雑そうな表情で柱を見上げているアーリアを見て、あたしは歩みを止めた。
「アーリア?」
「レイカさん、私…」
そのままアーリアの言葉を待っていると、ルークの急かす声に遮られてしまった。
仕方なくアーリアと次のエレベーターへと向かうが、その表情は曇ったままだ。
ここに来て記憶は徐々に戻ってるらしいけど、エッグの時とは違って…何だろう…迷ってる?
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