第十五章 フラグクラッシャーの憂鬱
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ボストニアス号ではすでにレイモンドさんが応急処置の準備をしていて個室へと案内してくれた。
手持ち無沙汰になったあたしたちは、処置が終わるのを応接室のソファに座って待った。
ルークが心配そうにそわそわしていると先生とレミが様子を伺いに席を外した。
「タッコウさん、大丈夫でしょうか…」
「フラグ乱立してたけど、タッコウさんにはレイモンドさんが付いてるから大丈夫だよ」
「ふらぐ…」
「あぁ、レイモンドの腕に間違いはないからそこまで心配する必要はないよ」
「そ、そうですよね!きっと大丈夫です…」
ルークの返事は自分に言い聞かせているようにも感じた。
正直タッコウさんの容態なんて何も分からない。
でもこれ以上ルークとアーリアにトラウマ案件と遭遇させるわけにはいかない。
せめて何か明るい話題はないかと考えているとアーリアが口を開いた。
「レイカさんの勘ではどうですか」
「え、勘?勘としては問題ないかな」
「なら、大丈夫」
「アーリアはすっかりレイカ君の勘の信者だな」
アーリアなりに空気を変えようとしてくれたのだろうか。
安心させるようにルークに向かって優しく微笑んだ。これが天使力か。
おかげでルークの表情も少し柔らかくなった。
「そういえばレイカさん、やっとタッコウさんの名前を覚えたんですね」
「まぁ、みんながタッコウさんタッコウさん言うからねぇ」
「私の名前もそろそろ覚えてもらえると嬉しいのだが」
「何言ってんすか。サーロインさんはサーロインさんでしょ」
「………」
サーロインさんが無意味にメガネのブリッジをあげると先生とレミが戻ってきた。
それを見たルークがソファから勢いよく立ち上がった。
「先生、タッコウさんの具合はどうでしたか?」
「大丈夫だよ。安静にしていれば、持ち直せそうだ」
「よかったぁ!」
安心しきったルークはソファに深く座ってアーリアと笑い合っていた。
こっちはどうにかなった。
が、先生の後ろにいるレミの表情が何故か曇っている。
本拠地の探索を再開しようと話す輪からスッと抜けて、少し俯いているレミに話しかけた。
「…レミ、なんかあった?」
「え?ううん、何もないわよ!全然!」
「………」
早くエッグを取り返しに行くわよ!といつもの様子でレミがあたしの背中を押す。
いや、絶対なんかあるやつじゃん…!
なんだ?先生が地雷踏んだとか?でも様子がおかしかったのはこの街に来る前からだったし…
レミをもう一度見ても普段通りニコリと笑うだけ。
話を聞くにも今の状況では難しい。
…どうか、でかい闇抱えてますみたいなサーロインさんパターンではありませんように。
悶々としながら再びトンネルを抜けて路地に出ると装甲車の前でいつもの黒服コンビが待ち受けていた。
うん、やっぱこいつらはセットの方がしっくりくる。
「やっと来たな、シルクハットの紳士!」
「そこを通してくれませんか。私たちはブロネフの元へ行かなくてはなりません」
「それだけは許さねえぞ。ここを絶対通すもんか!………あ」
ロビンはレイカを見つけるとぽっと頬を赤らめた。
その異変に気付いたレイトンは視線の先のレイカを見たが、当本人は黒服二人の方を見てヘラリと笑っている。
「お、おいスワロー…!あの子がこっち見て笑ってるぞ!」
「黒細ー!よかったな!やっぱコンビの方がアンタらしいよ!」
「チッ…余計なことを」
「なんだよ、どういうことだよ…」
「違う、ロビン。これには「なんでお前だけあだ名付けてもらってんだ!!」…は?」
なんだかよく分からないが、黒丸が黒細に掴みかかった。
あれ、仲直りしたんじゃないのか?
「なんか揉めてますね」
「今のうちに先に進んじゃいましょう」
「ええいっ、今取り込み中だから俺たちの渾身のこのナゾでも食らえーっ!」
海賊と水兵のボードを投げつけられ仕方なくみんなでそれを覗き込んだ。
こういう手数のあるナゾ苦手だなと思っている内に先生がさっさと解いてしまった。
まだ揉めてるか二人の方を見たら、先生のナゾ捌きを一緒になって見ていたようで、あたし達と目が合うと慌てて距離を取った。
「うぐ、うぐぐぐ…まさかこのナゾまで解きやがるとは…」
「ナゾは解きました。通していただけますね」
「そんなわけないだろ、ここは通すもんか。なっ、スワロー!」
「……。行くがいい。我々の拠点はこの先のビルだ。俺たちのボスはそこの最上階にいる」
「そうそう、この先のビルが俺たちの本拠地で…んん!?」
黒丸が芸人ばりに黒細の顔を二度見した。
あたし達も黒細の発言には驚いたが、それ以上に黒丸が驚いて困惑している。
「ロビン、お前と世界を回ってみて俺はようやく分かったんだ。こんな事がやりたかったんじゃないってな。ボスのために走り回るのはいい。だが、人殺しはまっぴらゴメンだ。俺は今日限りでタージェントを辞める」
「ちょ、ちょっと待て。お前、タージェントを辞めちまうのか!?」
「あぁ、世話になったな、ロビン。お前と過ごした時間は楽しかったぜ」
「バカヤロー!!俺たちはコンビだろうが。お前一人辞めさせるなんてそんな水臭い真似ができるか。俺だって一緒に辞めてやる!」
「おお!黒丸、粋だねぇ!カッコいいぞ!」
「え、カッコ………」
と思ったら顔を真っ赤にさせてワタワタと暴れ始めた。
「そそそそそ、そうと決まったら小型船で脱出だー!!」
「まだ話は終わっていない、ロビン!ちょっと待て…!最後までこんな調子か。あとは頼んだぞ、英国紳士」
「貴方が助けようとしていたタッコウさんは、私たちの飛行艇にいます。脱出するなら彼を連れて行ってください」
「それくらい朝飯前だ。もう二度と会う事もあるまい、さらばだ!」
黒細は迷いが晴れてスッキリした様子で走っていった黒丸を追いかけていった。
黒細は人生の岐路に迷ってたんだな、なんか解決してあたしも心なしか嬉しい。
万事解決!とうんうん頷いているとレミがあたしの肩にぽんと手を置いた。
「レイカのそういうところ…素敵だけど考えものね」
「そういうところ?」
「レイカ君、フラグを管理したいのなら自身の発言や行動にも気を配りたまえ」
「なんかフラグあった…?」
「フラグというよりもっと厄介なところですよね」
レミ・サーロインさんに続いてルークまでもあたしの何かに文句を付けてきた。
3人の目からは何故か哀れみすら感じる。
「あ、黒丸褒めたこと?だって職より相棒を取ったんだよ?江戸っ子としてはそういう粋なヤツがいたら大歓喜だよ!」
「江戸っ子ねぇ…」
「江戸っ子か…」
「…江戸っ子って難しい生き物ですね」
「ちょ、先生!3人が江戸っ子いじめてくる!」
珍しい組み合わせの攻撃に思わずビビり、先生の腕を引っ張って助けを求めた。
先生はあたしの顔を見つめて少しの沈黙の後、ニコリと笑った。
どうだ、江戸っ子は英国紳士様を味方につけたぞ!
「タージェントのビルはこの奥だな」
「ガン無視!?」
レイトン君も苦労するよと3人は先生を囲んで先へ進んでいった。
取り残されたあたしをアーリアが心配そうに見ていたので、なけなしの笑顔で行こっかと歩き出した。
江戸っ子気質は変える気ねぇからなと闘志を燃やしながら。
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