第十五章 フラグクラッシャーの憂鬱
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貨物室を出ると吹き抜けの広い通路に出た。
下の階を覗くと小型艇のメンテナンスをしている人が数人いた。普通に人いるじゃん…
あそこが操縦室です!とルークが奥に見える上階の扉を指差した。
そう言えばハシゴで登るんだよなぁと思い出し、そこを目指して歩みを進めようとすると先生が急に立ち止まった。
前を見るとよく知る黒服コンビの黒細が通路の先にいて、あっちもこちらに気付いた様子だ。
「あれは…」
「くっ…ここを通すわけにはいかん。あの研究者を捕まえなければ他のタージェントが来てしまう。これでも食らえ!」
黒細は近くにあった装置で数本のクレーンを振り子のように振って、操縦室へ続く道を進めないようにしてしまった。
レイトンはしばしクレーンの動きを観察するとタイミングを測って通路を歩き進めた。
ハラハラと見守るルークとレミに、サーハイマンが「彼なら大丈夫さ」と告げた時、ある違和感を覚えた。
こんな時、絶対に騒ぐであろう彼女がいないことに。
集中しているレイトンの気を逸らさせるわけにはいかないと、サーハイマンが静かに視線を巡らせていると、何故か通路の向こう側で黒服と対峙している探し人を見つけて思考が停止した。
「おい、危ないからやめなさい!」
「!!お前は…なぜ、どうやって渡ってきた!?」
「普通に横のハシゴ使って上の連絡通路通ってきたわ」
「「………」」
全員の視線が壁にかかっているハシゴへ向けられた。
その先には確かに連絡通路がかかっていて反対側へと繋がっている。
「早くクレーン停めんかい!さもないと武力行使も
「…。お前のボディーブローは結構効くんだ」
「そう言えば前もここで…」
思い返せば以前も黒細が見張ってて…
あの時はノリで腹パンして黙らせたから今回もどうにかなるだろうとファイティングポーズをとった。
しかしあの時の黒細と違って、というかいつもと違って勢いがないような気がしたので拳を下ろした。
「ここ、アンタらの本拠地なんでしょ?なのになんか居心地悪そうっていうか…」
「何を言ってる…ロビンに気に入られてるからといってお前でも容赦しないぞ」
「そうそう、いつも一緒の黒丸もいないじゃん」
「………」
黒細は帽子のつばを掴んで俯き沈黙した。
変なやつだなと思ってると、クレーンを避け終えた先生がムッとした表情でこちらを見ていた。
やば、おこじゃん。
「レイカ、率先して危険な行動を取るのはやめるんだ」
「いや、動くクレーンを避ける方が危険な行動だと思いますけど」
「くっ、まさかあのクレーンを突破してくるとは…」
「タッコウさんはこの先ですね?」
先生が黒細に尋ねていると、レミが通路を渡らず動くクレーンのフックを乗り継いで黒細と先生の間に着地した。
…なんか、全部レミがなんとかしてくれるんじゃないかなと思い始めた。
「私たちは彼に用があるんです。そこをどかないと、酷い目に遭いますよ!」
「行かせると思うのか?我々はあの考古学者の確保を命じられている。手柄の邪魔をさせるつもりはない」
「黒細、やめとけ。レミはボディーブローの師匠だ」
「ボディーブローだけで済めばいいけど」
「いや、君は下がっているんだ、レミ」
レミの肩を引いて先生が前へ出た。
確かに今のレミは戦闘狂モードだから生半可なやる気状態の黒細が挑んだら命がいくつあっても足りないだろう。
ええ?と不満気なレミを背に先生は黒細に向き合った。
「手柄を取りたかったのなら、私たちを足止めなどしたりせずにタッコウさんを追えばよかったはず。そうしなかったのは、貴方の中に迷いがあるからですね?」
「何を甘い事を…」
「その証拠に、貴方は銃さえ持っていない。まさか装備を忘れた訳ではないでしょう?」
「……」
先生の『迷い』という指摘に、あたしの中で引っかかっていたもやもやもなるほどと納得した。
つまり黒細は組織の命令でここにいたのではなく、助けに…?
黒細は先生の指摘に答えず、無言のままクレーンの装置から少し離れた。
先生がそれを
あたしも続こうとしたが視界の端に意気消沈した黒細がいて、それをなんとなく見ていたら黒細もこちらを見た。
「何してる。早く行け」
「あたしはアンタのことそんなに知らないけど、黒丸と一緒にエッグ探してた時のアンタの方が今より楽しそうに見えたよ」
「フン、知ったようなことを」
「だから知らないけどって言ったじゃん」
「………」
また黙り込んでしまった黒細を見ているとサーロインさんに呼ばれた。
そういえば知らないおっさんを助けに来たんだったと思い出し、なんだか可哀想なくらい何かを悩んでる黒細に後ろ髪を引かれながらあたしはハシゴへ足をかけた。
ハシゴと階段で2階分登り終え、ついに操縦室に辿り着いた。
そこには何の機械か分からない装置に背を預けて座り込んでいる知らないおっさんがいた。
するとあたしたちに気付いたおっさんが装置にしがみつきながらよろよろと立ち上がった。
「タッコウさん!!」
「う、うぅ…貴方たちが…なぜここに?僕は幻を見ているのか…」
「幻ではありません。しっかりしてください、タッコウさん」
先生がおっさんに近付いて軽く肩を揺さぶった。
赤いコートで分かりにくいが怪我をしている右腕部分は赤黒く染まっている。
おっさんは反応はするが、脂汗をかいていて目の焦点が定まっていない。
ほとんど意識朦朧としているのだろう、てかよくこの状態であのハシゴを登ってきたな…
「ぼ、僕はもうダメだ…この戦艦で逃げるつもりだったのに…」
「しゃべらないでください。体力を消耗してしまいます」
「もうしゃべっててもいいから早くここから連れ出したほうがよくない?」
「確かに。レイトン君は右肩を頼む」
「わかりました」
サーロインさんと先生がおっさんに肩をかし、ゆっくり歩き出した。
それをルークとアーリアが心配そうに見守っている。
この状況、子供には刺激が強すぎるだろ。
歩み進める中、先ほどの先生の言葉を無視しておっさんはしゃべり続けた。
「この街から、逃げるんだ…アスラントの研究をさせてくれるなんて、そんな言葉に乗せられた僕が…バカだった…ブロネフはあの軍隊を使って研究者たちさえ支配してしまった…彼が…全てを歪めてしまったんだ。タージェントの、研究者としてのあり方を…」
「しゃべっててもいいって言ったけどめっちゃしゃべるじゃんこの人」
「タッコウさん、もう黙ってください。このままでは貴方は…」
「…聞いてくれ。みんな、自由を望んでいる。恐怖に縛られない、自由な研究を…タージェントが、あるべき姿に戻ればきっと僕たちの願いは叶うはずなんだ…ど、どうか、ブロネフを………」
話の内容的に死亡フラグビンビンだからやめてほしいなと思ってたところだった。
知らないおっさんの言葉は途切れ、力が抜けてガクンと先生とサーロインさんの肩に体重がかかった。ほら言わんこっちゃねぇ。
「って知らないおっさぁぁぁん!!」
「タッコウさん!!」
「気を失っているだけだ。だが、急いで彼の応急処置をしなくては」
「えぇ、ボストニアス号へ急ぎましょう」
レミは前方、あたし・ルーク・アーリアは後方を確認しながら戦艦を脱出しボストニアス号へ向かった。
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