第十五章 フラグクラッシャーの憂鬱
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暗いトンネルを抜けるとビルの谷間に出た。
背の高いビルがたくさん建っていたのは分かっていたが、このコンクリートジャングルでは現在地がいまいち分かりにくい。
ビルの他に目についたのはビルの中を通過し頭上を走る列車と空中でほとんど支えのない線路、道端に無造作に停められている装甲車。
ツッコミどころ満載で呆れたように見上げていると先生とサーロインさんも同じように見上げた。
「………治安最悪な遊園地?交通網?」
「建物と建物の間に、線路を通してしまうとはかなり斬新な設計だな」
「建物の中の防音対策はどうなっているのか、気になるところだね」
「利便性だけで見るなら移動手段としては楽そうだよね、そこ以外の利点は分からないけど」
「それ以前に安全性も機能性も考えものだが」
「ではあの装甲車は?」
「社用車じゃない?」
「それはまた…ずいぶんと安全そうな職場だな」
異様な光景を3人で地味に皮肉っていると、奥の路地から赤いトレンチコートを着た丸メガネのおじさんが右腕を庇いながらトンネルへ走っていった。
それを追うように見慣れぬ黒服二人組(キノコの傘のような髪型の男とガタイのいいマ◯オのような男)が銃を片手に走ってきて、同じようにトンネルの奥へ消えていった。
おそらく先ほどの銃声は逃げていたあのおじさんに向けたものだったのだろう。
ある意味運動会してたけど物騒すぎる。
「もう何なんだよここ、ゴッ◯ム・シティだろ」
「先生!今のって、タッコウさんじゃないですか?」
「え、誰?」
「初めてコハンベールに行った時に声をかけてきた考古学者の人です」
「…そんな人いた?」
「レイカさんたちはその時漁師さんと話していたので気付かなかったんじゃないですか?」
うーんと首を傾げて思い出そうとしたが全く記憶にない人だった。
てかコハンベールで覚えてるの漁師さんと魚っぽい人しかいないわ。
「どうしてここにいるんでしょう?確か、アスラント文明について調べてるって言ってましたよね」
「もしかして、彼もタージェントに連れて来られたのだろうか」
「じゃあ、早く助けないと!」
「え゛」
「タッコウさんは街の入口の方へ走っていったようだ」
反論する間もなくみんなはトンネルへと踵を返した。
ルークはトンネルの手前であたしとアーリアに手を差し出し、早く繋げと急かしてきたので泣く泣く手を繋いで、再びトンネルへ入った。
駆け足でトンネルを抜けると先ほどおっさんを追いかけていたキノコとゴリマ◯オがうろついていた。
どうやらおっさんを見失っているようだが、地面に点々と落ちている血痕に気付いてしまうのも時間の問題だ。
そして何より、この場に長居したくない。
さっきGを見つけてしまった。
横はゴミ処理場だし道もゴミだらけだからいるのは当たり前なんだけど、レミがいるのが非常にまずい。
頭の中でレミとGの
君も来なさいと言うように先生がこちらを見た。
そこからはまさに一瞬の出来事。
レミの足元にGが走り、あたしは反射的に落ちていた穴の空いた缶を掴んでソイツを掬い、トンネルに向かって全力投球した。
「ほわああああ!」
「なんだ!!向こうで音がしたぞ!」
「黒い影が…!突然物陰から出てきてトンネルの方へ走っていって…」
「アイツめ、見つけたらただじゃおかねぇ!」
鬼気迫るあたしのセリフが後を押し、カランカランと響く音に吸い寄せられるようにキノコとゴリ◯リオはトンネルの奥へと走っていった。
「はぁ…見たか、この平和的回避策を…」
「見事なフォームだったな」
「黒い影って…タッコウさんがいたんですか!?」
「違う。でも嘘ではない」
「嘘ではない?」
「とにかくこれで時間は稼げそうだ。今のうちにタッコウさんを探そう」
「あれは…」
何かを見つけたアーリアの視線の先には金網の向こう側にあの逃げているおじさんがいた。
そこは発着場で空から見えた戦艦や飛行機が停められていて、おじさんは先ほどよりも覚束ない足取りで、あろうことか戦艦の中へ入っていった。
「アイツらの戦艦…先生、タッコウさんが中に!」
「苦しそう…」
「ケガをしているようだったね。タージェントに見つかる前に私たちが保護しよう」
「えぇ…」
ただでさえ身の危険を感じるこの街で、なんで知らないおっさんの安否まで気にしないといけないんだ…
確かにあんな状況を見てしまったら江戸っ子としても助けざるを得ないけどさぁ…!
あたしは心の中で滝のような涙を流しながら、みんなと一緒に戦艦へ向かった。
そしてあたしたちはびっくりするほど難なく、戦艦へ侵入することに成功した。
入り込んだのは以前アーリアを救出する時に入った場所と同じく貨物室で、薄暗いながらも大体の扉の配置などを思い出してきた。
「暗くてよく見えませんね…」
「この辺りに人はいないようです。誰の気配も感じられません」
「彼が街から逃げるつもりだったのなら、操縦室を目指しているのかもしれない。さすがにタージェントと言えど、離陸した戦艦を相手取るのは容易にはいかないだろうからな」
「でもこんなでかい戦艦、一人で動かせるものなの…?」
「それを考える余裕すらなかったということだろう」
サーロインさんの言葉に、確かに拳銃持って追いかけられたらそこまで考えは及ばないかと知らないおっさんの心中を察した。
中へと続く扉を開けようと、レミがハンドルを回そうとしたがガッと何かがつかえる音を立てるだけで開くことはなかった。
「カギがかかっています。こんなところで…」
「タージェントから逃げるためタッコウさんが内鍵をかけたのかもしれない」
「タージェントよりも先にタッコウさんを見つけないと!」
「あー、このダイヤルの鍵ね。これこの前ルークも苦戦し」ガキンッ
「教授、カギが開きました!」
「よくやったね、レミ。タッコウさんを追いかけよう」
「………」
レミに解けるかなと心配する間もなく扉は破壊された。
薄いアルミのようにグニャグニャに歪んでいる厚い金属の扉を見て、あたしは深く考えることをやめた。
隣で静かに引いているサーロインさんと同じように斜め下を見ながら貨物室を出た。
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