第十五章 フラグクラッシャーの憂鬱
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あたしは一人決心した。
そうだよ、あの幻覚が未来でも未来じゃなくても、それ通りに再現されないようにすればいいだけだ。
このままだと全滅しますよって言っても、どうせみんな流すだけということは目に見えているし、ここはあたしがしっかりせねば…!
警戒心マックスにして暇さえあれば操縦席から外を見張るようになったあたしのことを、不審なものを見るような目でルークが見てくるが気にしない!
ちなみにレイモンドさんは慣れてしまってか、いつも通りに操縦をしながらたまに地理のガイドをしてくれるさすがウルトラプロフェッショナル執事。
目的地であるゴッド街が見えてきたところで、あたしだけではなく先生やサーロインさんも操縦席から外の様子を伺いに来た。
そこは今まで巡ってきた場所とは違って高層ビルが立ち並び、工場の煙突からは健康に悪そうな黒い煙が昇っている。
まるで大気汚染の原因が全てそこに集まっているような街だ。
でもとりあえずこんなところにはあの神殿はなさそうと胸を下ろしかけたが、ビル群に紛れてアーリアを拐った時の巨大な戦艦や管制塔が見えて迎撃されるんじゃないかとヒヤヒヤした。
そんな心配を裏切るようにボストニアス号は少し拓けた広場へ何事もなく着陸することに成功した。
「妙だな…周りが静かすぎる」
「外を見る限り、人影はないようです。てっきり、待ち構えているかと思ったのに」
エンジンを切り、静かになったボストニアス号内にあたしのものとは違う緊張感が満ちている。
先生とレミが外を警戒して様子を窺っている中、サーロインさんは何か考え込んでいた。
あたしの視線に気付いたのか、サーロインさんはこっちを見て胡散臭い笑顔を向けてきた。やめろ。
「なぜ彼らはこんなにも易々とボストニアス号の着陸を許したのでしょう」
「なんなら撃ち落とされるんじゃないかと思ったわ」
「あのブロネフのことだ、私たちが来ることは想定しているはず」
「かと言って、街の中で待ち伏せされているとも考えづらいですね」
「そうだな。そんな回りくどい真似をするくらいならレイカ君の言う通り、ボストニアス号を撃ち落とした方が早い」
「…私たちを誘っているんでしょうか?」
「だとしたら、見くびられたものだな。ヤツらが油断しているのなら、それを利用させてもらうまでだ」
「望み通り、本拠地に乗り込んでやりましょう!」
おー!と意気込むレミとルークを横目に再びサーロインさんを盗み見る。
タージェントって単語だけであからさまに私怨がありますみたいな感じだったサーロインさんが、そのタージェントの本拠地だというのにやけに静かだ。
おまけにレイモンドさんまで「お覚悟召されましたな」とか不穏なこと言い出して、船から降りてないのにすでに穏やかではない。
降りる準備を終えて、いざボストニアス号を出るとまず異臭が襲いかかってきた。
着陸した広場の目の前にはゴミ処理場があり、何の臭いか分からないがとにかく臭い。
さらには路上にパンクしたタイヤや空きビンなどゴミが平然と散乱していて、用水路らしきところには茶色く濁った水がどろりと流れている。
「この街丸ごと消したら地球が喜びそう」
「過激な発言だがその意見には私も同意するよ」
「サーロインさんの財力でどうにかならないんですか?」
「それができれば苦労はしないんだがな」
サーロインさんの冗談なのか本気なのか分からない言葉に、やる気はあんのかいとあたしは鼻で笑った。
一通り周囲の探索を終え、再び集合すると先生が真剣な表情で口を開いた。
「私たちはこれから敵中に向かおうとしている。何が起こるかは分からない。覚悟はいいね?」
「分かっています。そのためにここまで来たのですから」
「例えタージェントがやって来たとしても私がみんなを守ります。任せてください!」
「ちょい待ち!レミと言えどこの先はそういう万が一が起こりそうな発言はフラグに繋がるからやめて!」
「フ、フラグ…?」
「これからの作戦は全員『いのちだいじに』だから!オッケー!?」
するとあたしの意に反して平和を切り裂くような発砲音が2発鳴り響いた。
その音はトンネルの向こう側から聞こえて、みんなの視線はそちらへ向いた。
「今のは…?」
「奥の方から聞こえましたね」
「きっと近くで運動会やってるんだよ!関係ない関係ない!」
「何か胸騒ぎがする。行ってみよう」
「いや、行ってみようはおかしくない…?」
ゴミ処理場の横のトンネルは、ほとんど切れかけている電灯がチカチカと点滅していて中はほぼ暗闇だった。
それを見たルークがうっ…と息を詰まらせた。
いつもだったらからかうところだけど、今のあたしの作戦は『いのちだいじに』だ…
調子に乗って余計なフラグを立てるわけにはいかない。
仕方ない、とあたしはこっそりアーリアにあることを耳打ちした。
「ルークくーん、あたし怖いから手繋いでほしいなー」
「え!?なんですかレイカさん!?」
「私も、繋ぎたい」
「しょ、しょうがないですね!暗くて危ないですからね!」
あたしとアーリアでルークを挟んで手を繋いだ。
ギリギリと骨が砕けるんじゃないかと思うくらいの握力で握られたけどあたしの寛大な心で許してあげた。
.
