第十四章 ぶち当たる心の壁
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はぁあと心の汗(涙ではない)を拭って再び歩き出した。
チラチラとあたしの目を気にしているサーロインさんがウザくて、不本意ながら心のぐちゃぐちゃは少し軽くなった。
「それにしても、君が私のことでこんなに悩んでくれるとは意外だったな」
「…それは、あたしが人の傷口にガリガリと爪を立てるような空気の読めない冷酷な女だと思ってたってことですか?」
「いや、そこまでは言ってないが」
「そりゃあ、通りすがりの住人Aとかならまだしも、一応一緒に旅してる、仲間だし……一応」
「フッ…一応、か」
尻すぼみになっていくレイカの言葉に、今まで彼女を誤解していたかもしれないとサーハイマンは少し後悔をした。
「だから!あんまり抱え込まないで周りを頼ってくださいね!」
「そうさせてもらうよ」
「はい、絶対しないやつー。あたしにはもうサーロインさんの上辺の対応は通用しませんー」
「それは参ったな…」
「化けの皮って、被り続けてるとしんどいですから」
「え?」
突然呟くような小さな声になったレイカの言葉にサーハイマンは聞き返したが、聞こえなかったのかわざとなのかそのまま聞き流された。
「サーロインさんはあたしたちと一緒にいて楽しい?」
「あぁ、大いに楽しませてもらってるよ」
「…そういう一線引いてるところとか笑う気ない胡散臭い笑顔、やめてほしいんですけど」
「申し訳ないがこれは長年の癖のようなものだ。言われて直せるもの、じゃ…」
「そうですよねぇ…所詮アスラント研究のための同行者ですもんねぇ…赤の他人ですもんねぇ…」
「………善処するよ」
すぐ沈むレイカに手を焼きながらサーハイマンは笑顔を引きつらせた。
その笑顔を見て、うわぁ…と引いたレイカは少し思案すると何かを閃いた。
「よし、サーロインさんを笑顔にし隊、隊長として頑張ります!」
「どこから発足したんだその隊は…」
「サーロインさんが悲しくなったり寂しくなったら遠慮なく隊長のあたしに言ってください!笑顔にするお手伝いをします!」
「…それは、言うとどうなるのかな?」
「え…うーん、あたしがサーロインさんの代わりに感情を表に出します。自慢じゃないけどあたしめちゃくちゃ落ち込めますよ!」
「それは解決になっているのか…?」
「じゃあ…ハグ!ハグはすべてを解決する!」
「そんなことをしたら私が血祭りにあげられそうだが」
「確かに………」
沈黙の間、レミが嬉々としてサーロインさんを血祭りにしている様子を想像して思わず吹き出した。
するとサーロインさんが肩を震わせ、声を押し殺してクツクツと笑っていた。
「今!ちゃんと笑った!」
「君が笑わせたんだろ」
「そっか、あたしが笑えばサーロインさんもつられて笑うわけだ」
そっかそっかーと嬉しそうに笑うレイカにどこか心が軽くなった気がした。
が、その笑顔は次第に何かを企む笑みに変わっていき、サーハイマンは確かな身の危険を感じた。
一方レイトンたちは少しスピードを落としつつ大鳥の水飲み場へ向かっていた。
「教授、二人にしちゃってよかったんですか?」
「あぁ。きっとあれは博士とレイカでないとお互い解決できないと思う」
「お互いって…博士がレイカさんを慰めに行ってるだけじゃないってことですか?」
ルークの問いにレイトンは「どうだろうね」と優しく笑った。
そんなレイトンの様子に納得していないレミはレイカを案じてそわそわしていた。
「変なスイッチ踏まなきゃいいですけど…」
「それは博士次第さ」
「………あ、なんか走ってきますよ」
後ろを見ていたルークの言葉にみんなで振り返ると、レイカとサーハイマンがこちらに向かって走ってきていた。
サーハイマンがレイカを追い抜かすと、突然つむじ風がサーハイマンを襲い、ケラケラと笑うレイカがそれを横目に追い抜かして先にレイトンたちのもとにたどり着いた。
「よっし、あたしの勝ち!」
「元気になったみたいだね」
「博士と何を話してたんですか?」
「え?なんだっけ、大した話はしてないけど………あ、サーロインさんが寂しくなったらハグすることになった!」
「「 」」
「っレイカ君、余計なことは話さないように。それにしても妨害程度であの力を使うとは…」
つむじ風に襲われていたサーハイマンもたどり着き、スーツに付いた砂埃を払って顔を上げると、目の前にはレイトンとレミがニコリと笑って立っていた。
「サーハイマン博士、お話したいことが」
「レ、レイトン君、誤解だ…話せばわかる」
「向こう、行きましょうか」
「レミ君まで…」
そのままレイトンとレミに両腕をガッチリとホールドされてサーハイマンは連行されていった。
それを見てレイカは笑いすぎて呼吸困難になりながら指を指した。
「ふは!見て!サーロインさんの楽しそうな顔!」
「うん、おじさんが楽しそうでよかったよ」
「そうですね」
「ロクスさん、僕たちにだいぶ馴染んじゃいましたね…」
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