第十三章 不死鳥不在の町
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結局、大きな鳥は不死鳥ではなかった。
しかし町の方で全身が光る鳥というものを見たとのことで、あたしたちはまた町へ戻ってきた。
が、今までそんな目立つ鳥は見かけなかったし、探しても見当たらず、完全に詰み状態になってしまった。
「それにしても参ったな。これではエッグの調査もままならないぞ」
「今のところエッグのエの字も出てきてないしね」
「町の伝承に詳しそうな人物がいれば話を聞く事ができるのですが…」
「起きてるのが子供ばかりじゃ難しいかもしれませんね。ロクスより大きな子はいないみたいだし。それに、不死鳥の手がかりになる全身が光る鳥も見当たりませんでした」
不死鳥像の隣で足を止めて深く考え込んでいるサーハイマンに気付いたレイトンは彼に声をかけた。
「サーハイマン博士、どうなさったのですか?」
「ロクス君は、大人たちは皆眠ってしまったと言っていた。だが、こうして町を訪れた私やキミ、そしてレミ君が眠る気配はない」
「言われてみればそうですね」
「おっほん」
「?」
わざとらしく咳払いをして何かを主張してくるレイカにサーハイマンは?を浮かべた。
それを見たレミは「大人にカウントしてあげてください」とサーハイマンに耳打ちをして、なるほどと苦笑いを浮かべた。
「…あとレイカ君もね」
「つまり、原因は土地にある訳ではないと?」
「あぁ、恐らく。大人たちが眠りに就いたのは別の所に原因があるはずだ。その原因さえ突き止める事ができれば…」
「大人なあたしが思うに、『大人だけ』という条件が重要と見ましたね」
「というと?」
レイカの機嫌を損ねると面倒なことになると学んだサーハイマンは話を促した。
すると、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに気を良くしたレイカがなぜか自信満々に話し出した。
「例えば…日頃から大人に抑圧されていた子供が、ついに限界が来て大人たちを黙らせるために、祭りか何かの集まりに乗じて、町の酒に睡眠薬を盛り子供だけの町を作り出した。しかし思っていた以上の効果で手が付けられない状態になってしまった、とか」
「…ずいぶんと具体的だが、それも勘かい?」
「いや、これはどっちかって言うと想像力っすね」
「想像…」
「面白い線だが、必ずしも大人全員がお酒を飲む確率は低いんじゃないかな」
レイトンの指摘に、確かにと真剣に頷くレイカ。
「じゃあ無難に、大人だけで集まった食事会で出た料理にヤバいキノコでも混ざってたとかですかね」
「これは大人に相当な食の恨みを持ってるな、レイカ君が」
「大人ってやつぁ、人が寝静まった頃にこそこそと美味しいものを食べる卑怯な生き物なんですよ」
「レイカ、まだこの前の夜食のことを根に持っているのかい」
「あら、何のことかしら?でもレイトン先生は心当たりがおありなんですねぇ?」
いやに丁寧な口調になったレイカに、何事だとサーハイマンはひきつった笑みのまま小首を傾げた。
レイトンは知っている。
口調を変えたレイカは相当根に持っている時だということを。
「あの時は君にも声をかけたと言っただろう。それに結局同じものをその日の朝に食べたじゃないか」
「起きなきゃ意味ないんですよ!もっと本気で起こしてください!それに、
「…今日は本当に調子がいいみたいだね、想像力といい、この減らず口といい」
「君たちは仲がいいのか悪いのか…」
びろんと頬を引っ張るレイトンも気にせず未だに吠えるレイカ。
その様子に思わず呆れたように呟いたサーハイマンの言葉を聞き逃さなかったレイカがギンッとターゲットを変えた。
「ご自分は蚊帳の外と思ってるサーロインさんも人のこと言えないですよ。一昨日、レイモンドさんに夜食作ってもらってましたよねぇ」
「な、なぜそのことを…」
「フッ、簡単なことよ。あたしがボストニアス号の冷蔵庫内の在庫を把握していないとでも?」
「逆になぜ把握しているんだい…?」
「これだから汚い大人は自分たちのことしか考えてないんだから」
「君は自分を大人にカウントされたがっていたが、夜食一つで騒ぐ君は大人なのか?」
「おおん!?あたしは子供の心を持ったままの立派な大人ですが!?」
やるか?とサーハイマンに飛びかかろうとするレイカの首根っこを掴むレイトン。
勢いに押されたサーハイマンは少しズレ落ちたメガネのブリッジを上げた。
そこへ、いつの間にか聞き込みに行っていたレミが神妙な顔付きで戻ってきた。
「教授、博士…朗報です」
「なんだい、レミ」
「大人たちが起きなくなった日の前日はお祭りで、ごちそうもたくさんあったそうです。その後夜にお父さんがこっそり家を出ていったみたいで…」
「それ見たことか」
「「………」」
「あと、この先のまんまる塚にツクモちゃんって子がいるそうなので話を聞きに行きましょう!………あれ?」
レミが後ろを振り返ってみるとその場に三人はおらず、奥の方でまだ揉めていた。
しかもレイカだけ空堀に降ろしている。
「おい!あたしの100点な仮説に嫉妬して堀に落とすな!この似非英国紳士ども!」
「まだ君の仮説が合っているとは限らないよ」
「いいや、違うね!夜抜け出した時に大人だけの食事会でヤバいキノコが入ってたに決まってる!」
「今日はずいぶんと好戦的だな…もしかするとこれもアスラントの影響か?」
「何でもかんでもアスラントに絡めないと気がすまないのかコイツは!」
「おじさんたち、何やってるの…?」
「盛り上がってますね」
「大人として恥ずかしくないんですかね」
「さぁ?でも…」
楽しそうだからいいんじゃない?とレミも楽しそうにその光景を写真に収めた。
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