第十三章 不死鳥不在の町
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ロクスに案内され、ご自宅へお邪魔している。
生活感のある石造りの部屋にどことなく東南アジアみを感じた。
決してカレーの匂いがしたからとかそういうことじゃないけど。
カレーの次に目に入ったのは壁際のベッドに横たわる女の人。
このカレー臭の中、すやすやと眠っている。
あれ、お母さんって言ってたけどお姉さんじゃない…?
「この女性はもしや…」
「あぁ、オレの母さんだよ」
「お母さん、若くない?」
「え、そうかな…こんな風に眠ったままずっと目を覚まさないんだ」
サーロインさんは失礼、とひと声かけてロクスのお母さんの首筋や額に手を当てて様子を見た。
見た目的には普通に眠ってるみたいだけどこれが1週間以上続いてるのは心配だな…
「脈や外見に異常はないようだが、原因はわからないのかい?」
「わかってたら、とっくに起こしてるよ。とにかく普通の眠りじゃないんだ。揺すっても名前を呼んでも起きないし、母さんだけじゃなくて、町の大人みんながこんな感じでさ」
「いったい何故こんなことに…」
「すぅ…お母「すみません、私たちは外に出てます」
「あ、あぁ」
先生に後ろから口を押さえられながら強制的に家の外に連れて行かれた。
何だよ、せっかくあたしの美声で起こしてあげようとしてたのに。
心外だと抗議しようと顔を上げたらニッコリ笑った先生がいらっしゃった。
話を終え、ロクスの自宅から外に出ると、レイトンとレイカが話し合っていた。
正しく状況説明するとすれば、腕を組んだレイトンと背筋を伸ばして敬礼しているレイカ、である。
「分かったね」
「イエッサー!」
「レイトン君、大丈夫かな…?」
「えぇ、こちらも終わりましたので。それでこのあとは?」
「(終わった…?)あぁ、ロクス君に町の案内を頼んだんだ」
「よーし、カレー…じゃないスリープルス探検隊出動!」
「…ねぇ、あの子さっきと様子が違うけど大丈夫?」
「あれは教授の『教育』という名の『愛の鞭』だから気にしなくていいのよ」
「そ、そうなんだ…」
この時ロクスは初めて町の外の人間に対していろいろな意味で恐怖を覚えた。
ロクスの話ではこの町には全ての病を治す不死鳥の伝説があるらしく、その不死鳥が蘇る時に流す涙はありとあらゆる病を治すと伝わっているようだ。
なのでその不死鳥を蘇らせて涙でこの現象を解決できないかとのことだが、聞ける相手は全員眠っているため、ひとまず町を案内してもらっている。
先ほど来た不死鳥の像の前まで来ると小さな男の子がトコトコと走ってきてこちらを楽しそうに指差した。
「ああっ、知らない大人だ!おらのとうちゃんなら眠ってるよ」
「お父さんは眠ってる、か。ロクスが言ってたことは本当みたいですね」
「私たちは大人を起こすため、不死鳥について調べているんだ。何か、心当たりはないかな?」
「不死鳥って鳥のこと?おら、知ってるかも。でも、おらのナゾ解いてくれなきゃなーんにも教えてやんないよ」
「君はお父さんを起こす気あるのかなぁ!」
「レイカ落ち着いて!相手はまだ子供だから!」
どうどうとレミに抑えられ、襲いかかるのを断念した。
そしてそのまま出されたナゾを解き始めたレミは、すっかり子供の扱いが上手くなっちゃって、なんだかあたしが退化した気分だ。
まぁ、レミにだったら子供扱いされても快く許すと思うが。
そんなふうに感慨深く感じている内に、レミはナゾを解いてみせた。
「おらのナゾを解くなんてまるでとうちゃんみたいだなあ。町の向こうに丘があるだろ。あそこは聖域だから入っちゃいけないんだ。でも、おらは見たんだよ。あの丘の上におっきな鳥が飛んでいくのを。きっとあれが伝説の不死鳥だと思うんだ」
「むむ、確かにそれは怪しいですね。丘の上に行ってみましょう」
「え、待って。丘ってあれ?」
「そうだよ」
「………」
それは町を囲う壁のはるか向こうにそびえ立つ丘だ。
ちょっとそこまでって距離ではない。
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