第十二章 竜神様降臨
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
やっとの思いで奥まで進むと遺跡のような空間にたどり着いた。
壁には、排水口の蓋のような円盤が回転している大きな装置がいくつも設置されていて、どれもバラバラに回っている。
あそこへ風が吸い込まれていて換気扇のように外に風を送っているのだろうか?
視線を戻して中央を見ると、祭壇のようなものが置かれていて、そこから少し離れた手前でみんなと天使ジュリアさんが対峙していた。
ロミ坊が一生懸命説得しているが、ジュリアさんはやはり晴れない表情を浮かべている。
「ジュリア…どうしてこんな風習のために命を捨てるなんて言うんだ…?これまでたくさんの花嫁が祠に入って、それでも竜神の怒りなんて納まらなかった。君だって分かってるんだろう?人間が祠に入ることなんかじゃ、竜巻は納まらないって!!」
「……。そうね…そうかもしれない。だけど、もしここで私が死んだらそのことに意味はあるはずよ」
ジュリアさんは眉をひそめて悲しそうに笑った。
その言葉と表情にロミ坊は理解ができず、もどかしそうにしている。
「ど、どういうことだい?」
「私は風にならないの。貴方と一緒に逃げ出したりもしない。…身体を残して、ここで死ぬのよ。竜神様の怒りはきっと、人の命では鎮まらないのよ。私たちは受け入れるしかないんだわ」
「ジュリアさん…」
「だったらせめて、私の命でこんな風習だけでも終わらせてみんなで平和に暮らしてほしい…ロミー、私ここで祈っているわ。貴方の風車が1番よく回るように」
「ジュリア…!ちがう、そんな…ジュリア…!!」
「ロミ坊、諦めるな!貴様の覚悟を伝えるんだ!」
「っ!コーチ…!」
頭を抱えだしたロミ坊は弾かれたようにこっちを見た。
安心させるように頷いてやると、ロミ坊も大きく頷き、深呼吸をしてからジュリアさんへ向き直った。
「ジュリア、僕は君を愛している。例え竜神様の花嫁になろうとこの気持ちは永遠に変わることはない!」
「ロミー…」
「君がここで死ぬというのなら、僕も一緒に死ぬ覚悟だ!誰が何と言おうと、君を一人にはさせないさ!」
「…!」
ロミ坊は片膝をついて、ジュリアさんへ片腕を掲げる得意のポーズをした。
練習の時とは比べられないほどスマートにキマり、指先も腕の角度も申し分がなかった。
その姿にジュリアさんも胸を打たれたのか、口に手を当てて涙目になっている。
「いいぞロミ坊!」
「何なのこの展開!カメラカメラ…!」
「ロミーさん、なんかかっこいいです!」
「こんな像があるから…!こんな像のためにジュリアが!!」
ロミ坊は祭壇へ向き直り、竜のような像に向かって勇ましくエクスカリバー(スコップ)を振りかざした。
ここまではよかった。
像を壊してなんやかんやで換気扇も直して、平和に戻った村でロミジュリは幸せに暮らしましたちゃんちゃん、で終わると思ったのに。
突然、像の台座の下が青く光り、エクスカリバー(スコップ)がロミ坊の手から離れ、ひとりでに天井に張り付いた。
「こ、これは…!?」
「…!」
「…アスラントに仇なすものを
「すごい…武器を取り上げちゃうんだ」
天井を見上げ、アーリアが紋章について説明をしてくれた。
神の、恵み…?
どれが?人を犠牲にしても構わないほどの恵みなんてあった?
ジュリアさんはこんなにも可憐で可愛くて、村のためを思ってるのに。
ロミ坊は元は弱々だけど、ジュリアさんのために勇気を出してここまできたのに…!
「よくもロミ坊の大見せ場を台無しに…」
「見せ場って…」
「二人の幸せを邪魔する無粋な輩は、風だろうが神だろうが…あたしが許さん!」
これはもう解決しないなら祠ごと破壊するしかない。
いや、むしろ解決しても破壊したい!
祭壇を調べに行ったレイトン・サーハイマン・アーリアを見守る中、騒ぐレイカにレミはふと振り返って仰天した。
「待って、レイカ…浮いてない?」
「ほ、ホントだ…!」
「え、は、え!?」
レミに言われて下を見ると、テニスボール1個分ぐらい地面から浮いていた。
怒り心頭すぎてふわふわしてるのかと思ったらマジで浮いてるって何!?
「レイカさんの存在がアスラントに仇なす者ってことなんじゃないですか」
「はぁ!?あたしどっちかって言うと被害者なんですけど!どっちが仇なしてんだよ!」
「でも、ほら…」
ルークの指摘の通り、レイカの怒りのボルテージが上がると浮かび上がる高度も高くなっていく。
ムキになって地面に降りようと手足を伸ばしても文字通り空を切るだけ。
もう我慢ならなくなったあたしは心頭滅却するため、大きく深呼吸をした。
「ロミー!あの子、浮いているわ!」
「も、もしかして、コーチの正体は竜神様…?」
「え!?あの子が竜神様…?」
「ロミ坊、貴様の熱い気持ち…確かに見届けたぞ」
「コ、コーチ…!」
「ジュリアさん、貴女の村を想う気持ちは素晴らしいと思います。でもね、そんな貴女のことを大切に思ってるやつの気持ちも見てやってください。貴女も分かっているはずですが、ロミ坊はきっと貴女を幸せにしてくれる男ですよ」
「竜神様…!」
「「(竜神様…?)」」
レイカは2人へグッと親指を立てると空中を歩くように祭壇の方向へ浮遊していった。
あの考古学大好き自称英国紳士コンビがすぐ帰ってこないということは、どうせ遺跡がどうだのナゾがどうだの盛り上がってるだけに違いない。
手が届くぐらいの距離まで近付けば案の定、目の前の祭壇ではなく壁の装置について話し合っていた。
「ちょっと!早くしてくださいよ!」
「待ってくれ、今レイトン君と…。君浮いているじゃないか!?」
「あ、そのくだりもうやったんで」
「おや、ついに浮くようになったのかい?」
「こっちは冷静すぎだわ。てか浮かされてるだけだから早くどうにかして!」
祭壇を見るとデジャヴを感じるような青い光とボタンを押すと飛び出る円柱。
なんでアスラントってこの手のナゾばっかなんだ。
「またこういう系?どうせこれでしょ」
「「「あ」」」
適当に押したボタンにより柱が順に出て、全ての柱が揃うと沈み、まばゆい光が視界を覆った。
光が収まると、壁の装置が正常に動き出し、先ほどまでの禍々しい風の音が止んでいた。
しかし、あたしは依然として浮いていた。
「ちょっとぉぉ!なんで浮いたままなの!?」
「レイカ、普段のナゾならまだしも、歴史的なナゾについてはもっと深く考察をしてから解きなさい」
「いや、柱押すだけで解けるアスラントのナゾが悪くない?ってナゾより居候が浮いてることを言及して!」
「レイカ君、その浮遊についてもう少し調べさせてくれないか」
「あんたは好奇な目であたしを見るな!寄るな!天井に張り付けんぞ!あとムカつくんでここ破壊していいですか!?」
揉めている三人をよそに、アーリアは竜神の像の口に現れたエッグを受け取り、取り残されていたルークたちへ歩み寄った。
「歪みは消え、調和が戻りました。全てはあるべき形に…正しき場所に…」
「貴女はまさか、竜神様の使者…」
「なんてことだ…マリードールは救われたのか」
「まだ調和が戻ってない人がいますけど…」
「こ、これで一件落着ね!」
.