第十二章 竜神様降臨
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とにかく耳をお貸し、とおばちゃんはちょいちょいと手招きをしてあたしたちは輪になるように寄った。
こそこそしているが、道のど真ん中で7人も人が集まっていたら逆に目立つと思うんだけど…
「ロミーとジュリアはね、毛刈りの頃には結婚する予定だったの。付き合ってたのさ、二人は」
「やっぱり…」
「ロミジュリだな、ロミジュリ」
「いい夫婦になるはずだったんだよ。それなのに、あんな儀式のせいでさ…この村はどうかしちまってるよ。みんな竜神におびえるばかりで生け贄にすがってるんだ…」
よかった、表面上この村の儀式を肯定しているだけで、本当は常識の通じる人みたいだ。
レミを花嫁にと誘ってきた人たちはどうかと思うが、少なくともこの人からは有力情報が聞けそうだな。
それにしても、結婚目前であの儀式か…
心に引っかかったのは祠に入る前のジュリアさんの悲しそうな笑顔だった。
「ロミーさんは、今どちらに?」
「あの子かい…今頃は風車小屋の方でベソベソ泣いてるんじゃないかね」
「ありがとう、マダム。ご協力感謝します」
「あたしはブリジットだよ。さぁ、急いでここを離れるんだ。村の人間が怪しむからね」
おばちゃん、ブリジットさんはそう忠告するとそそくさにその場を去っていった。
さっそくブリジットさんに言われた通り、道を進むと目的の風車小屋が見えてきた。
その小屋の前には肩をぶるぶると小刻みに揺らした男の人が犬と共にいた。
「失礼、ロミーさんでしょうか?」
「あんた達は、祠にいた…何の用だい?僕は今、忙しいんだ」
「忙しいって、何がですか?」
「落ち込むことに忙しいのさ!あぁ…ジュリア…」
目の周りを赤くしたロミーは人目も憚らず、地面に跪いて涙を流し始めた。
そんな様子も気にすることなく、レミは拳を握って渇を入れる。
「何を言ってるんですか!ジュリアさんが死ぬかもしれないのに恋人の貴方が落ち込んでるなんて!!」
「あんた達だって聞いただろ?彼女は竜神様と結婚できて幸せだって言ってたじゃないか!それはつまり、彼女が僕への愛を捨てたってことさ!必要ないんだ、僕は!!」
「変なところで自信満々になる人ね。それで貴方は納得できるの?」
「うううっ…い、いやだ…嫌だよおおおおおっ!!」
「レミ、あんな辛い別れの後ですぐに立ち直るというのは…」
難しい、と言葉を繋ごうとしたが、今まで静かにしていたレイカが跪き泣いているロミーに近付いたので、レイトンはそれを見守った。
慰めの言葉でもかけるのかと思いきや、何故かロミーを見下ろし腕を組んで仁王立ちしている。
「おい、若人」
「うぅ…若人って、僕のこと?」
「そうだ若人!貴様はあの天使ジュリアさんを愛していないのか!」
「あ、愛しているさ!「足りない!」…え」
「貴様はあの場で天使に言われた言葉のみを鵜呑みにし、破滅に向かっているということがわからんのか!本当に愛しているなら、何故今まで築き上げてきた愛を信じない!」
「!!」
雷に打たれたかのような驚愕の表情でロミーの涙は止まった。
レイカはロミーの目線に合わせてしゃがみ、ロミーの肩に手を置いた。
「大切な人なんだろ?」
「あぁ…!」
「誰よりも愛してるんだろ?」
「そう、僕は誰よりも、ジュリアを愛している!!」
「よし!その意気だ!」
最後にはロミーは高らかに片腕を掲げ、立ち上がった。
その光景にはレイトンたちも思わずおぉと感嘆の声を洩らした。
「す、すごい…」
「あんなに落ち込んでたロミーさんをここまで立ち直らせるなんて…」
「これは人心掌握術…?彼女はカウンセラーか何かなのかい?」
「あれも彼女の才能ですね」
「それは…ある意味恐ろしいな」
「じゃあ、一緒にジュリアさんを助けに行きましょう。今から祠に入ればきっと間に合うはずよ」
しかしレミがそう言うと、ロミーは自分の無念さを思い出してしまったかのように顔を歪ませた。
「そんな事できっこないよ。祠の前には司祭様がいるんだ。入れるわけないんだよ!!僕は君たちが期待しているような格好のいい男じゃ「バカちんがァァァ!!」…え」
「誰も貴様が格好のいい男だなんて期待しとらん!誰よりもジュリアさんを愛しているのは貴様じゃなかったのか!」
「で、でも…」
「でもじゃなーい!!やはり愛が足りない!その弱った性根をあたしが叩き直してやるからジュリアさんを助けに行くぞ!」
「はい!コーチ!」
「「「「(コーチ…?)」」」」
「おし!そうと決まったらコーチ料として何か美味しいものを所望する!腹が減っては戦はできん!」
「!それならうちに焼きたてのパンがあります!」
「ぜひお邪魔しよう!」
そしてジュリアについて語らいながらレイカとロミーは目の前の風車小屋へ入っていった。
ルークは一連の流れを見て、ミストハレリでガップルを説得した時と同じように、これは長くなるなと悟った。
「あぁやって増えるのかしら、支援者」
「絶対お腹が空いてただけですよ」
「ロミーさんの気持ちを立て直すのはレイカに任せようか」
「そうですね。私たちはどうにかして祠に入る方法がないか探してみましょう」
するとレイトンはルークの肩に手を置いた。
置かれた手に、次に何を言われるか薄々勘付いていたルークは顔をしかめた。
「ルーク、レイカを頼めるかい?」
「えぇー!先生!」
「私もレイカさんと一緒にいます」
「そのほうがいいかもしれないね」
「ア、アーリアが残るなら僕も残ります!」
「フフ、頼んだよ。ルーク」
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